梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション3 葉山宝石館の惨劇 (徳間文庫)
- 徳間書店 (2023年8月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198948818
作品紹介・あらすじ
少年だけが、全てを見ていた……帆村財閥の異端児・建夫が葉山に設立した私設宝石博物館――収蔵品の剣・銃・斧を使い、長女・光枝の三人の恋人候補が次々殺されていく。「なぜ三重密室を作らねばならなかったか?」Why(理由)を問うユニークな“密室動機講義”から導かれる、仰天の真相とは? 昭和が終わった年/新本格勃興期、新書ミステリの雄が放った、稚気と本格推理への愛全開の熱き挑戦状(ラブレター)。解説 今村昌弘イラスト やまがみ彩〈目次〉プロローグ 第一章 トプカプの短劔第二章 葉山で見た男第三章 コルト・バントライン・スペシャル第四章 ぼくは目撃者第五章 彼女をとりまく男たち第六章 ウルの黄金闘斧 第七章 名探偵二人 第八章 あらかじめの告白 エピローグ 後がき解説 今村昌弘
感想・レビュー・書評
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帆村財閥の異端児・建夫が葉山に設立した私設宝石博物館。収蔵された剣・銃・斧を使い、長女・光枝の三人の恋人候補たちが密室で次々と殺されていく。幾重にも立ち塞がる密室の奥に隠された真相とは?!
建夫は海外に行っており不在。そんな中で宝石が何者かに狙われているという情報が…。さらに光枝を巡る恋のさや当てと、それを引っかき回す妹の伊津子。そこに思いがけなく飛び込むことになった少年・芳樹と、彼の家庭教師・久美子。入り組んだ人間関係は宝石の中を跳ね返る光を思わせる。
物語の視点は、宝石館の隣にある祖母の家を訪れた芳樹の日記から始まり、宝石館に集う面々、事件発生後は刑事の黒川・草刈たちも加わる。事件自体も怪しげな見立てに密室などこってりしているので読み味は濃厚。序盤は情報量に圧倒されてゆっくり読み進めたものの、事件が核心に近づく中盤からはラストまで一気読みコースになる。ダイヤモンドの原石を一面ずつカットしていくような物語。進めば進むほど輝きが増して面白くなっていく。
刑事たちの地道な捜査の周りでは、芳樹たちの素人探偵が別の角度から事件を調査する!少年の瞳を通すことで、ジュブナイルとしての味わいも。惨劇だけではなく、伊津子たち大人との関わりを経て感じる心の動き。その本心を誰にも読ませない日記に綴るというのが憎い演出だなと思った。
「なぜ三重密室を作らねばならなかったか?」という理由を問う仕掛けも面白い。帯にある著者の言葉「密室それ自体で、読者に挑戦しようというものではない。その背後の或ることで、挑戦しようというのだ。もちろん、そのためには、やはり密室を解かなければならないという、逆説も成り立つのだが……。」と書かれた真意がわかった時のぼくの感情よ(笑) 宝石と同じく、真贋を見極める目が重要だと痛感した。これは現代の密室慣れしている読者の方が引っかかりそう。
伊津子のセリフに「賭って、馬鹿げてれば馬鹿げているほど、賭らしいじゃないの?」というものがあるけれど、これは賭を「謎」に変えても成立するような気がするね。まさにその馬鹿げた密室の謎の背後にあった真相こそ、切実で人間らしいドラマだったように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宝石館でおこる連続殺人。
芳樹くんという宝石館の近くに住むクリスチャンの頭の良い子の日記が挟まるのだがそのせいもあるのか何だか余計に混乱してくる。
頑張ってる刑事、素人名探偵、いかにも怪しい犯人など
読みやすくて面白い。シリーズものじゃないちょっとだけシリアスな2時間サスペンスをみてる気分になった。
驚愕ミステリシリーズのカジタツもので個人的には竜神池や清里高原より読みやすいし面白かった。。
今回もカバーイラストが素敵。 -
目玉のはずの殺人(しかも密室)がいつの間にか起こってしまっている、と言いたくなるような描写の仕方がユニーク。事後の伝聞みたいな形で処理されてしまうのだ。面食らったけれども、そこ(如何にして密室を造ったか?)はメインじゃないんだという作者さんの思い入れなんでしょう。後は惹句に「仰天の真相」とある大ネタで驚けるか。楽しいけれど、複数の視点が入れ替わる文章は少し読みにくいかな。