ヒトミ先生の保健室 1 (リュウコミックス)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199503856

作品紹介・あらすじ

ヒトミ先生は、優しい瞳と巨乳が魅力のモノアイ養護教諭。性別不明の助手・樹くんとふたり、心と身体に悩みを抱えた生徒たちを、いつでも温かく迎えてくれます。そんなヒトミ先生の保健室にやってくるのは…長舌系女子にゾンビ系女子、巨躯系女子に透明系女子…といった生徒たち。ヒトミ先生の大きな瞳が、彼女たちの「人と違う」苦しみを救います! COMICリュウが禁断の扉を開いてお届けする新ジャンル、早くも話題沸騰中!!!

感想・レビュー・書評

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  • 目が引かれたでしょ、いろんなものが見えてきますよ。

    しょっぱなから、と言うよりドでかい「モノアイ」な巨乳の白衣女性が表紙を飾るところからはじまる、結構カテゴライズに悩む作品のひとつです。

    ちょっぴりへんてこでニッチなニーズに応える「コミックRYU」レーベルの中でも、『モンスター娘のいる日常』などと並んで、独自の立ち位置を確立した作品のひとつでもあるのでしょうか。

    悩める思春期の少年少女の心身をケアする「保健室の先生」単眼系女子「ヒトミ先生」を主人公に据えて、悩める中学生たちの相談に乗っていくという、一話完結型のストーリーでお送りする模様です。
    あとは思春期、第二次性徴期に伴う変化のバリエーションが我々の世界から「少しだけ」違うというのがポイントのようです。

    どこから読みはじめても問題はないと作者の鮭夫先生はおっしゃられているので、気になるテーマを見つけたらそこを取っ掛かりにチャレンジしてみるのがいいかもしれません。
    九巻までは裏表紙に生徒たちの特徴が載っているのでわかりやすくていいと思います。

    商業的な要請もあってスポットが当てられるのは女子が多めですが、男子だからこそのテーマも見つけられたりで、かなり奥行きのある漫画とお見受けします。
    2018年からは掲載雑誌のWEB移行に伴って、「ニコニコ静画」、「Pixiv」などのWEB漫画系サイトで結構な分量が読めるようにもなっているようです。作品の性質にも合っていて、時代の流れも感じられていい感じです。

    で、この漫画なんですが「人間」って括りに全員が収まっているとしてもひとりひとり取り上げていくとそうそう同じ性質を持った人が見つからない多種多様な世界観だったりします。
    この巻で裏表紙に挙げられてるだけでも「長舌系」、「不死身」、「巨躯系&短躯系」、「透明系」と様々。

    それなのに「フリークス」的な方向に話が飛ばないように言葉の選び方も相当気を遣っているのもわかります。
    「多様性の肯定」が作品を貫くテーマとして置かれていると思われますが、その点でも好感が持てます。

    あと、この辺は説明がないのが説明なのでしょうが、主人公のヒトミ先生へ向かう反応からわかるようにちょっと「目が大きいなあ(ついでに胸も)」くらいなので、この世界の歴史がなんとなくわかろうものです。
    一巻時点にして読者にああそうなんだって自然と悟らせるよう話を持っていく構成が実に上手いです。

    隣接ジャンルである「モンスター娘」の方はそれぞれ異なった文化圏を持つ巨大な集団「人種」として扱われることが多いのに比べ、こちらは「人間」という意味では区切りや垣根はなく、「○○系」って形で統一されているのも上手いですね。

    人間になにかひとつ「機能」が追加されているというプラスアルファの優しい観点から見ているのだと思います。
    一見デメリットに見える特性もないことはないのですが、その辺の「受容」のプロセスが作品の見どころだと思うので、その時々を見守っていきましょう。

    結構学術的・生物的な観点から作品を楽しむこともできたりもします。
    起こる現象自体はどう考えてもファンタジーなんですが、主人公が養護教諭であるためか、医学的なアドバイスも飛んできますし、なにより思春期の心理は現実と地続きのものですから。

    類似の事例を積み重ね、おおまかな指導要領は決まっているのでしょうが、それでも生徒各々抱えてる事情に従って先生は真摯に向き合うことが求められます。つまりは青春です。

    あと、長々と語った分、各話とキャラについては控えめに触れさせていただきます。

    第一話「長舌系女子:設楽伸子」
    名は体を表す系の作品でありますが、初っ端からして結構普通にネーミングに落とし込んでますね。
    最初だけあって前述した世界観の説明もされているお試し的な回だったと思います。

    ヒトミ先生は単眼に由来してかドジっ子ですが、それはある意味ハンデであると同時に生徒に愛される愛嬌でもある、と。
    商業ニーズに応えたサービスカットも結構ありましたが、舌が筋肉の塊で案外器用ってのは言われてみればその通り。

    長すぎる舌って普通にコンプレックスになるってのは確かにそうですね。現実を生きる人としても共感はしやすいけど、活用もしやすいし中学二年生らしく「アピール」に昇華するって落としどころが見事でした。

    この時点で、比較的ありふれた悩みなんだと理解を示し、急ぐことはないと受け止めてくれるのがこの漫画なんだと少しわかった気がしました。

    第二話「不死身女子:富士見ヨミ」
    中学二年生ってのは小学生ほどではありませんが、まだまだ走り回る年頃なんです。
    そんな危なっかしすぎるけど、早々死なないって担保の下、首やら手やらがすっ飛んでもすぐくっつくからとあっけらかんとしている子の回です。

    現実でも「無痛覚」は存在し、その人は実感がないがゆえに危機感がなく周囲を心配させると聞きます。
    思春期特有の万能感に支配されてる子を正論で納得させるハードルは高かったと思いますが、この辺は流れにも助けられて飲み込まれました。

    そうそう死なないけど、「再生」はしない、あと他人目線に立つってのはいい感じでしたね。
    あと、アブノーマルな「性癖」についても一定の理解を示す、なかなか共感は出来なくても否定はしないってのもこの作品の良い特色のひとつだと思います。

    第三話「巨躯系女子:大木京子&短躯系女子:小山内千沙」
    これまた極端だけど、現実でもありそうな事例です。
    勝ち気な彼女が弱気な彼女を守っていたら、まさかの逆転現象です。
    一方的な関係と思いきや、お互い言いたいことはあるわけで雨降って地固まる。ここで言う雨は乙女の涙。

    縮尺を拡大/縮小して一緒に置いた絵面が、少し奇妙で正しく漫画的にトリッキー、この巻、ひょっとしたら全体を貫く「目線」の合わせ方というテーマにも沿ったいい話でした。

    第四話
    今までの振り返りも兼ねつつ、ヒトミ先生のプライベート回です。
    ショッピングモールを見渡しただけで、本当に多種多様な個性の持ち主が歩いてるんだなって意味でも結構大事な回だと思いました。

    メガネの種類然り、光学的なアレ然り、すごく身近な問題を取り扱って、世界観に説得力を持たせています。
    あと先生の連れの男性からわかりましたが、性質は遺伝しないというのは結構大事な設定ですね。
    ああいう性質だと年齢はわかりづらいとかで、ちょっとした引っ掛けにはちゃんとダマされてみた口です。

    第五話「透明系女子:留居静流」
    「透明人間」というのはそれこそSFのガジェットとしては非常にメジャーなもののひとつです。

    ひとつの作品を作り上げる題材として申し分ないものをポンポン出しつつ、使い捨てるわけでなく積み重ねていくところがこの作品の強さのひとつだと思ったりするわけですが、それはそうと。

    影が薄く、引っ込み思案で目立たない子の「見られたくない」→「見られたい」という、心理の動きが純文学的でした。彼女は見つけてほしいんじゃなくて。

    芋虫が蝶になってやがて羽ばたくという暗喩(いや、蛹を脱ぎ捨てるという意味では直喩か?)を通して、すごいところに着地しちゃったなーって印象です。
    透明人間って「エロ」や「犯罪」と結びつきやすいと思いきや、思春期女子だからか上手く折衷できたのでしょうか。

    「視線」というこの巻のテーマに見合ったか、流れとして見る分にもいい感じでした。

    六話
    ご近所模様から、ヒトミ先生の出勤風景をお送りします。
    それと、先生の同僚で幼なじみの理科教諭「多々良拳四郎」との関係について。
    生徒相手には弱みを見せられない先生同士の、実にわかりやすい関係が描かれます。

    ちょい悪なワイルド教師と、しっかりしてそうで結構抜けてる先生の、照れと慣れが混じった掛け合いは実に良いものです。
    教職に就く者同士の連携がしっかりしているのも、この漫画のよいところですね。かしこ。

    では、漫画の特徴について話を戻しつつ、〆へ向かいます。
    鮭夫先生はこの作品が連載デビューですが、それ以前にキャリアを積まれているだけあっていきなり画は完成されています。
    不安定な心理を描く分、そうでない輪郭の揺らぎは認められないというべきか、非常に線が安定しています。
    個人的に思うところといたしましては液体と流線と暗転に定評がありそうです。

    あと、もうひとつ挙げるならオノマトペがひたすらに自由です。
    単に擬音、擬態のみならず、心理描写や挨拶にも踏み込んでバラエティもオリジナリティも豊か、こればかりは字で説明するのがなかなか困難なのでどうか現物を見に行ってくださいませ。

    このおかげで元々デザインチックなコマの独立性が高く、勢いよく明るい日常を演出できているのでこの漫画を語る上で外せない要素のひとつかもしれません。

    総じて一巻時点にして、相当に構成とアイデアに優れた漫画と評します。もちろん準備期間もあったのでしょうが、驚くほどそつがありません。
    もちろん人によって色々読み方、楽しみ方はあるのでしょう。

    だけども私の場合は人とは「生きもの」なのだと思い出し、「悩むもの」にはびっくりし共感もし、結局は「楽しむもの」って結論に落ち着いたりそうでなかったり、つまりは目が離せない。
    そんなところでいかがでしょうか、どっとはらい。

  • 単眼なんて絶対無理!妖怪とかそういうのは気持ち悪い!!
    っていう人でも安心して読めるよ、何故ならヒトミ先生は人間だから。
    でもそもそも単眼が気持ち悪かったらそりゃあもう諦めるしかないな。

    中学?高校?よくわからないけど、学校の保険の先生であるヒトミ先生の元には
    不死身の子、透明人間、巨躯、短躯等々様々な身体的特徴を持つ生徒が
    お悩み相談にやってくるけれども、妖怪などのたぐいではなく全員人間。
    1巻の時点では明確な説明がなされていないけれども
    どうやらこの世界の人間は、思春期を迎えると
    第二次性徴とかそういう一般的な体の変化の他に
    単眼になったり、足が4本になったり、トカゲの尻尾が生えてきたり
    そういう妖怪じみた変化が現れるようだ。それが当たり前の世界のお話。
    そう、ただの個人差。

    それでも、単眼用メガネの種類が少ない事に嘆いたり
    2種類ある単眼用メガネを数十分かけて選んだり
    3D映画は単眼じゃ楽しめない!という悲しい主張をするヒトミ先生が可愛い。

    トーンを使わずに描き上げた白黒の世界はセンスを感じるし
    何よりもこの少し不思議な世界観と非常によくマッチしていて、眼福。

  • フェティストの祭

  • 目ん玉が飛び出るほどに面白い
    隻眼ヒロインは今までいたが、単眼ヒロインは初じゃなかろうか?
    面白可笑しさと真面目さ、そして、エロさのバランスが絶妙
    また、ネーミングセンスや、『言葉戯び』にも高いセンスを感じられた
    みんな違って、みんな良い、そんなごく当たり前の事に納得できる
    私と同じで、『セントールの悩み』、『モンスター娘のいる日常』、または『足洗邸の住人たち。』のごった煮感のある、独創的な雰囲気が嫌いじゃない読み手には、どストライクになる事は間違いない
    どの娘も可愛いのはもちろんなのだが、その可愛さは、ヒトミ先生の真摯なアドバイスを素直に受け止めて、自分だけの悩みと向き合う心の強さが外見に影響しているのだ、と私は考える
    個人的に一推すのは、富士見さん
    でも、この作品内で最も好きなのは、親身さと自分の性癖がどっちもブレずに両立している多々良先生
    タバコがよく似合う、大人の男ですw
    奇形(と言うと語弊があるかも知れないけど)なのは女子だけなのかな? 多々良先生みたいに、私たちとは違う身体構造の男子がいるのなら、ヒトミ先生の所に相談に来て欲しいな。恋愛感情が高まると髪の毛が炎になっちゃう、石化の能力を持つ目をコントロールできない、異性が近くにいると空間まで切っちゃうほど鋭いドラゴン型の翼が勝手に広がってしまう、みたいな悩みを抱えている青少年を希望
    しっかし、ここまで書いて、しみじみと思ったけど、ホントに徳間書店から出る漫画は、私的に当たりが多いなぁ。目が利いてて、舌が肥えている編集さんが多いのかな?

  • 最初の3話くらい雑誌で読みましたが、そのあと読み損ねて自動的にコミックス派になりましたということで。
    ヒトミ先生も生徒たちも個性的だけど、他にもいろいろいるんですね。そういうファンタジーな学園ものってことで、了解です。1巻には先生のお父さんが出たけど、お母さんや他のご兄弟もどんな人たちなのか知りたいです。

    で、樹くんはコスプレ趣味の男だよね?

  • こいつぁスゲェ漫画だ!!!!!

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著者プロフィール

富山県出身。好きな魚は捻りもなく鮭。脱サラ後に横浜に移住し、2008年よりイラストレーターとして活動。ファミリー・児童向けほのぼのイラストの他、WEB・携帯配信漫画などを手掛けている。第12回龍神賞【銅龍賞】をゾンビ漫画『ジェネレーション・オブ・ザ・(リビング)デッド』で受賞。同作品が「COMICリュウ」2013年2月号に掲載されて本格的デビューを飾る。同誌2013年11月号より『ヒトミ先生の保健室』連載開始。現在は【COMICリュウWEB】にて大人気連載中。他のコミックスに『ゆうきゆうのマンガ恋愛心理術』(監修:ゆうきゆう 少年画報社)がある。Twitterアカウント:@shakekoujou

「2023年 『ヒトミ先生の保健室(17)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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