- Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
- / ISBN・EAN: 9784251008251
感想・レビュー・書評
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芥川龍之介に『老いたる素戔嗚命』という短編がある。
八岐の大蛇を退治して櫛名田(クシナダ)姫と結婚した素戔嗚命は、心穏やかな日々を過ごす。やがて櫛名田姫が亡くなると、娘の須世理(スセリ)姫とともに根の国(黄泉の国?)に移り住む。須世理姫は、母の美しさ、父の勇猛さを備えた意志の強い女性に育っていた。
あるとき根の国に葦原醜男(アシハラシコヲ/後の大国主)という若者が訪れる。
さて、こちらの『日本の神話 すさのおとおおくにぬし』は、この短編と同じ場面が書かれている。
(『老いたる素戔嗚命』と『すさのおとおおくにぬし』で使っている神様の名前の漢字表記が違うので、以下『すさのおとおおくにぬし』の表記に合わせます)
大国主は、須佐之男(スサノオ)命と、その娘の須勢理(スセリ)姫の住む黄泉の国に辿り着く。
大国主と須勢理は一目で互いを気に入った。それを察した須佐之男命は大国主を殺してしまおうと無理難題を押し付ける。
だが須勢理姫が大国主を助けたため、大国主はその難題を成し遂げる。そして大国主と須勢理姫は、眠った須佐之男命を縛り付けて、宝の太刀弓矢琴を奪って、手に手を取り合って逃げ出すのだった。
『老いたる素戔嗚命』でも『すさのおとおおくにぬし』でも、須佐之男命は最初は大国主命を殺そうとするが、結局は自分を出し抜いて駆け落ちした二人を認める。
若いころは猛々しく暴れまわった須佐之男命だからこそ、大国主を婿と認め、そんな婿を自分で選んで親の自分から自力で旅立った娘を認めたのだ。
どちらもラストの須佐之男命がすがすがしいので以下引用。
『老いたる素戔嗚命』
<「おれはお前たちを祝ほぐぞ!」
素戔嗚は高い切り岸の上から、遙かに二人をさし招いた。
「おれよりももっと手力を養へ。おれよりももっと智慧を磨け。おれよりももっと、……」
素戔嗚はちょいとためらった後、底力のある声に祝ぎ続けた。
「おれよりももっと仕合せになれ!」
彼の言葉は風と共に、海原の上へ響き渡った。この時わが素戔嗚は、オオヒルメムチ(漢字が出ない…)と争った時より、高天原の国を逐われた時より、高志大蛇を斬った時より、ずっと天上の神々に近い、悠々たる威厳に充ち満ちていた。>
『すさのおとおおくにぬし』
<「おまえが奪った太刀と弓矢で、兄弟たちをせいぜい追い払うがよい。
そうして国の神となり、やしきを築き、
わしの…
わしの娘をしあわせにしてやってくれ!」>
そして大国主は、須佐之男命の祝福の通り、自分を殺そうとした兄たちを追い払い、芦原中原の国造りの神になったのだった。
(これはこれで良い駆け落ち話なのですが、地上に戻ったら大国主の妻の八上姫と揉めたり、この後も大国主がたくさん妻を娶って揉めたりしますね…(;^_^) -
娘をもつ親になってわかる、大国主の命(おとくにぬしのみこと)に娘・須勢理姫(すせりひめ)を託した須佐之男の命(すさのおのみこと)の気持ち。
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兄弟たちに命を狙われている大国主の命(おおくにぬしのみこと)は、舟で旅立ち、やがて祖先・須佐之男の命(すさのおのみこと)の住む黄泉の国へとたどり着いた。
そこで出会った須佐之男の娘・須勢理姫(すせりひめ)は、大国主の命に恋心を抱く。
しかし、それが気に入らない須佐之男は、大国主の命に次から次へと無理難題を言いつけるのだが…
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大国主の命や、須勢理姫からみると、恋の敵役である須佐之男の存在は疎ましいものです。
しかし親の目線で読むと、娘を連れていってしまうかもしれない大国主の命を、うとましく思う須佐之男の気持ちも、わからないではありません。
また、折込付録で舟崎克彦氏が書かれているように、若いころは荒ぶる力を持っていた須佐之男が老い、これから先の人生を娘とともに穏やかに過ごしていくはずが、大国主の命によってその道を乱されようとしているのですから、須佐之男の心中がおだやかではないことにも、大きく頷けます。
しかし同時に、結局のところ親と子は別の存在であり、親の思うように子を動かすことなどできないこともまた、このお話によって学ぶ点ではないでしょうか。
ラストで、須佐之男が若い2人にかけた言葉を読み、須佐之男もまた、娘のしあわせを願うひとりの神だったのだなと思いました。
第1~3巻では若かりし頃の須佐之男の姿が描かれていますので、そちらを先に読んでから5巻を読むと、より須佐之男の老いや心境の変化を追いやすいのでオススメです。 -
日本神話の絵本
子どもたちには少し退屈する作品かもしれないが、日本神話を学ぶにはもってこいの作品です! -
娘の父親は娘の相手には厳しい…
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すさのおは、黄泉の国にわたっても意地っ張りだな。でも最後は、ひめのことを心配したり、大国主に国を治めろって言ってくれたりした。すせりひめはやさしい。
はちとかむかでとかへびとの戦いが、おそろしい絵でかいてあった。(小4) -
娘が大国主の命にこんだけ味方してちゃあもう答えは出てるよね。娘を取られる須佐男の命の気持ちはわかるが。
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須佐男 神のやんちゃ末っ子
大国主 須佐男の末裔
兄弟(コレも須佐男の末裔)から命を狙われ 黄泉の国にいる ご先祖様(須佐男)頼ってきたのに 邪魔者扱いされ須佐男の娘の手助けでどうにか生き延びて、須佐男の武器と娘を掻っ攫って逃げる話
須佐男…死(?)んでもなお やんちゃ…
大国主 まだまだネタがありそう… -
息子と古典。
すごいお話しでした。 -
ムカデがかわいい。
コメントありがとうございます!
おそらく元々の『古事記』には、この二つのお話のようなスサノオの最後のエールは無かったよう...
コメントありがとうございます!
おそらく元々の『古事記』には、この二つのお話のようなスサノオの最後のエールは無かったような気がするので、芥川龍之介と 舟崎克彦がそれぞれ現代感覚に置き換えて書いたのだと思いました。
スサノオは、高天原で大暴れしたり、八岐の大蛇退治したりと乱暴者の印象ですが、年を取って乱暴者と安定との心のバランス、そして若い世代に受け継いでいく心情がとても良いです。
この日本の神話絵本シリーズは絵も文章も素晴らしいですよ!
大国主とスセリ姫の「その後」ですが、大国主は多くの奥さんがいるけれど、スセリ姫はさすがにスサノオの娘だけあって嫉妬したり他の奥さんと揉めたり、気性が激しい笑
昔は一夫多妻制が当たり前と言っても、やっぱり女性からしたら夫が来るのを待つしかない生活は複雑ですよねえ(-_-;)