- Amazon.co.jp ・本 (33ページ)
- / ISBN・EAN: 9784251099556
作品紹介・あらすじ
家を飛び出し、あわてて走る男の子。今日は絶対に学校に遅れちゃいけないのだ。でもゆくてには、水たまりじゃぶじゃぶ、歩道橋ぐねぐね、大きな犬たちがわんわん、踏み切りは閉まったまま。なんて、じゃまするものばっかり。さてこの男の子、学校に間に合うの? そして最後に待っているのは……。にぎやかハッピーな世界を突っ走るスピード感あふれる絵本。いつもの通学路が冒険の旅に変わるかもしれない!?
感想・レビュー・書評
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ザ・キャビンカンパニーは、阿部健太朗さんと吉岡紗希さんの夫婦による、絵本作家、美術家であり、その子どもが思いつくまま素直に描いたような絵柄と共に、どこか郷愁感漂わせる色の組み合わせとレトロチックなデザインとが合わさった、独特なアート性に惹かれるものがあった。
物語は、7:47~8:00まで1分刻みで進行していく中、そのタイトル通りのことが余程心配なのか、少年の尋常ではない必死な形相にも、それがよく表れているが、それに相反するかのように、周りの景色は普段と異なるそれであって、しかも道のりの長い感覚があるという、これまた尋常ではない雰囲気は、冒頭の、虹色に照らされた道路や草むらからも感じられて、どことなく、この世とは違う世界に迷い込んだような違和感を抱かせる。
そんな感覚は、その後の、大きな水たまりに何故かいるワニや、散歩している飼い主よりも巨大化した犬たちも同様で、その犬たちが天に向かって吠えている姿や、その後に登場する、とてつもなく長い列車で見られた幻想的光景に、伏線らしきものが見え隠れする中、少年の体も、まるでその影響を受けて、人智を超えた力が宿ったかのように、さらに、スピードを上げてゆく。
読み終えて、改めて感じたことは、書き方としておかしいのかもしれないが、私は、やはり宇宙の真っ只中にいるのだなということであり、そんな広い視点で目の当たりにした神秘を科学的に知ることによって、安心感と不安感、どちらが芽生えるかといえば、私は後者であり、そこには、普段、日常の目まぐるしい辛さに捕らわれるあまり、気付かなかったことを気付かせてくれた感があり、それは、ちっぽけなことを忘れさせてくれるというよりは、自然に似た畏怖を抱かせるような、それこそ尋常ならざる力の奇跡的結晶であり、だからこそ、科学的に解明されていない、徒ならぬことも起こるのではないかといった恐怖心が先に立ってしまう。
しかし、そんな私とは対照的に、それを素晴らしいものとして捉えられる人もいるのだろうと思い、特に子どもたちにとっては、それすら普段の想像力で賄えるくらいの逞しさなのかもしれず、それは、巨大化した犬の場面の塀に貼られていた、幼い頃、身体の弱かった彼がベッドで想像した世界の素晴らしさを著した、スティーヴンソンの詩集、『子供の詩の園』のポスターからも感じられた。
そして、そんな素晴らしき想像力が現実にも起こり得るかもしれない世界にいることを実感させられたことに加えて、印象深かったのが、冒頭の場面の家の壁に書かれた『The Three-Cornered World』で、これは翻訳者アラン・ターニーによる、夏目漱石の『草枕』のことであり、タイトルの由来は冒頭の有名な一節ではなく、『して見ると四角な世界から常識と名のつく、一角を磨滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう』であることから、『想像力の素晴らしさは常識とは無縁のところにある』とも解釈出来そうで、もしかしたら、それは、本書を描き上げた絵本作家の姿勢であるのかもしれないし、それは、そんなアーティスティックな事が起こり得るくらいの、凄まじいものでもあるのだということを訴えたかったのかもしれない、ある種の世紀末的様相を呈していた、最後の光景の、空恐ろしい程の尋常ではない美しさが、私の眼を焼き付けて離さない。 -
あなたは未だかつてこんなスリリングな13分を体験したことがあるか!
あなたは驚愕の13分を目の当たりにする!
少年は8時までに学校へ行くというミッションをクリアできるのか!?
少年に残された時間はあと13分!
ミッションスタート!
7じ47ふん
少年は玄関を飛び出し走り出した!
7じ48ふん
今日は8じまでに絶対に学校へ行かなきゃいけない!
なんで寝坊したんだぁ〜(-_-)zzz
焦りからくる妄想か!?
いつもの通学路が大変なことに!?
7じ50ぷん
水たまりに人食いワニが!
どーする!どーする!
飛び越えるぞ!いくぞ!せーの!
7じ52ふん
角を曲がると…
ワオっ!(゚д゚)
苦手な犬が何匹もいる…
しかも、めちゃくちゃ巨大化している
7じ53ふん
いつもの歩道橋がダンジョン化している
階段を上ったり下りたり曲がったりまるで迷宮のようだ
7じ54ふん
目の前に踏切が!
なんて長い列車だぁーーーーーーー!
最後尾の車両が見えない…
7じ55ふん…
7じ56ぷん…
7じ57ふん…
踏切があかない…
もう、学校にまにあわない_| ̄|○ il||li
7じ58ふん
ついに踏切があいた!
必殺奥義、風車走りでラストスパートだ!
ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
7じ59ふん
学校が見えた!
みんなが一斉に○○を見ている
8じ
ミッションコンプリーーーーーーート!
無事到着ε-(´∀`*)ホッ
少年がここまで必死になって見たかった○○とは何だったのか( ̄ー ̄)ニヤリ
気になるでしょ〜w
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みんみんさん、よく分かります。慌てる夢、そして速く走れない。
トイレの夢も最悪です。長蛇の列で、やっと自分の番かと思ったら、すごく汚いの。
...みんみんさん、よく分かります。慌てる夢、そして速く走れない。
トイレの夢も最悪です。長蛇の列で、やっと自分の番かと思ったら、すごく汚いの。
そういう夢をよく見ます(T_T)2023/06/09 -
2023/06/09
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2023/06/09
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読み聞かせ 2年生 約5分
7じ47ふん ぼくは家をでるとゴウゴウ走りだした。
今日はぜったいに8じまで学校にいかなくちゃいけないのに、どうしてねぼうしちゃったんだろう
急いでいるのになんか変なんだ。走っても走っても学校につかない気がする。
大き水ずたまりには人食いワニがいそうだし、歩道橋はぐにゃぐにゃしているし、踏切はいつまでたってもあかないし。
やっと踏切があいて、ぼくは足を風車より早く回して走る、走る、走る。
7じ59ふん ぼくは校庭に走り込む。まにあった!
そして8じ ぼくたちはみんなで空を見上げたぼくたちから声がでるを。
「うわあ」
ぼくたちは金環日食を見たんだ。この場所で見られる数百年に一度の金環日食。友達と一緒にみた金環日食。
わっかになった太陽を見ていたら、ぼくのあせりもつかれも吹っ飛んでいったんだ。
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これは良い。ダイナミックな絵と楽しいお話、そして最後はとても爽やかです。
私は初めて読んだときは「遅刻しそうという夢をみた、という話かな」と思ったんですよ。夢で急ぐ時って道がぐちゃぐちゃしますよね。
それがラストで急いでいた理由が明かされて、「そっかー、このダイナミックな表現は、急ぐ時って『いつもより道が遠い!』という気持ちの現れだったのか!」と納得です。教室の児童たちは「金環日食により怪奇現象が起きた」と思った子も割りといたんですけどね。
絵本の仕組みも、ページをめくると1分経つんですよ。読者も男の子と一緒に「あと◯分!」と迫りくる緊張感を味わいます。
読者は最後まで読んで「金環日食を見るため」とわかるのですが、振り返って見ると、踏切を通過する電車に太陽と月モチーフが描かれているなどのヒントが出ています。
そして最後の金環日食を見上げるときには、疲れも緊張も吹き飛んで、急いだことが報われた爽やかさ。
いい絵本です。
しかし教室の子どもたちに「急いでいるときっていつもより遠く感じませんか?」と聞いてみても「そんなことなーい」「遅れたことなーい」という反応だったんですよ。どこかに遅れそうになったことないの?遅れそうでも急ぐほどじゃないってこと?
むしろ教室の先生方から「自分も駅から学校まで、足を風車のように回して急いできてます 笑」という共感を得ました 笑 -
絶対に遅れてはいけない日に限って、寝坊してしまった!という痛恨のオープニングから、1分刻みで、急ぐ「ぼく」に襲いかかる、魔界のような通学路のあれやこれや! たっぷり4分足止めを食らった踏み切りを通過する電車の車窓が「ぼく」をあざ笑うかのよう! ギリギリに走り込む校門に、児童たちが「おかしなメガネ」をかけて並ぶシーンは、シュールすぎ! でも、ラストに現れた天文ショーに納得です。確かに、遅刻して「ぼく」だけ見逃しちゃったら悲しすぎますよね。よかったよかった…。
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絵が強烈で、思わず手に取ってしまった(^^)
急いでいる時に限って!と思う気持ちが景色に現れて手に汗を握るが、ラストは、あー!そのために急いでいたのか、と納得。絶対、待ってくれないものね。
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絵が面白い。
どうしてこんなにも急ぐのか、だんだんこっちまでハラハラした。 -
学校に遅れそうな子がページごと分刻みで急いでいるのに、踏切やワニの水たまりや、歩道橋ダンジョンなどに阻まれて間に合わないーって焦ってる本。
焦ってる気持ちと絵がすごく合っていて、最後に急いでいた理由が秀逸でした。いや、それは、もっとお家を早く出なよ。
これは子どもに読み聞かせてあげるほうがウケるタイプの本かな。読んであげるともう一度読みたくて手に取りそう。 -
遅刻常習者だった私にはこの気持ちよくわかります。
あせってヘソのしたがキュウとなる感じ。
いつもと様子が違う感じ。
なかなか着かない!っていう感じ。
全然踏切が開かない!っていう感じ。
それを独特の世界観で表現されていますね。
いつものキャビンカンパニーの画風と違って、疾走感ある絵です。
なんで急いでいたかって、金環日食を学校でみんなで観察することになっていたんですね。
ネット調べでは前の金環日食は前回が2012年05月21日、次回は2030年06月01日。
2030年に大活躍する本なのですね。
みなさまお忘れなきよう!
>冒頭の場面の家の壁に書かれた『The Three-Cornered World』
ええ、これは気が付きませんで...
>冒頭の場面の家の壁に書かれた『The Three-Cornered World』
ええ、これは気が付きませんでした!
本当に細かいところまで行き届いた本ですね。
>それこそ尋常ならざる力の奇跡的結晶であり、だからこそ、科学的に解明されていない、徒ならぬことも起こるのではないか
私は読み聞かせで使ったのですが、教室の子どもたちもこの絵本で起きたことを「金環日食が起きるから、犬が大きくなったり、歩道橋がぐにゃぐにゃしたのかな」という反応がありました。
私は「子供の、急ぐけれどなかなか着かない道っていつもより遠いよね」という焦燥感を絵にしたのかと思ったんですが、子どもたちは「金環日食のときは不思議なことが起こる」と思ったようです。
コメントありがとうございます(^^)
本書は、図書館で借りたので、既に懐かしい感じがしますが、読み聞かせされた、...
コメントありがとうございます(^^)
本書は、図書館で借りたので、既に懐かしい感じがしますが、読み聞かせされた、子どもたちの反応がとても興味深くて、「やった! 私と同じようなこと考えてる」って、思わず嬉しくなりました(^o^)
まあ、私の場合は、宇宙の中の地球という星で生きていることを想像するのが、怖かったりするからなのかもしれませんがね(^_^;)
『The Three-Cornered World』は、つい絵本を読むときの習性で、細かいところまで見てしまうのが功を奏しまして、本書については、先に『子供の詩の園』のポスターを見つけたことから、シンプルな展開の中に、深いものも意味合いとして込めてるのかなと、気になったこともありましたね。