- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784255004853
作品紹介・あらすじ
普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?高校生に語る-日本近現代史の最前線。
感想・レビュー・書評
-
2021/09/22読了
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で借りた。
タイトルからは、「左か右か、なんかイデオロギー強めのお話かなぁ…」と訝しんだが、読んでみてびっくり。東大の先生による近現代史の深い授業だ。歴史の授業と言っても、ただ事実を並べている訳では無い。それがこの本の良さであり特徴だ。
中高生相手に授業をしている講義録の形式。ただ、受け答えのレベルが異常と言えるほど高い。「そんなの高校生知ってるのか!?」という流れが多かった印象。興味を持つ人が多いのは分かるが、授業という枠組みはかなり超えているかと感じた。
近現代史を深くしるには良本。ただ、ほぼゼロ知識で挑むには高い壁があるかな。この本を読むための教養・前提知識が求められている気もした。 -
当時の戦争に関することを様々な目線で見ることができた。一般市民の目線から考えると自分の事に忙しい日常の中で、あまり深く考えず世論や軍の表面的な言葉になんとなく流されてしまうのもわかる。なんなら「戦争すんのも仕方ない」とも思ってしまっていたかも。今の日本には「どんな状況になっても戦争だけは絶対に起こしてはならない」という価値観が広まっている気がする(そもそも戦争できない、というのもあるけど)。この価値観を守り伝え続けていくこととが大切だと思った。当時の日本が歩んでしまった過ちにも目を向けることで、よりそれが認識できた。
-
数年前から何度か読んでは途中で止まってしまい…今回初めて最後まで読み終えた。
この時代の歴史こそ、学ばなければと感じた。
日本が戦争をしない道を選ぶことができたのか、という問いの答えはハッキリと分からなかったが、色々な本を読んで探っていきたいと思った。
太平洋戦争は兵士にとっても、国民にとっても悲惨な戦争だったため、日本の場合、受け身「被害者」として語られることが多いが「加害者」の側面も忘れてはならないと感じた。 -
著者(教授)の授業形式で歴史(戦争)を学んでいく。
歴史を学びたくて読み始めたが、そもそもなんで歴史を学びたいのか。それは私たちがこれからどのように生きて、なにを選択してゆくのか、その大きな力になるのではないか。
戦争責任問題についても責任を問う側と問われる側、2つの姿勢を持ち続けることか大切。確かに問われる側のことはあまり考えていなかったなと。 -
満州事変前には東大学生でも満蒙を守るためには武力行使やむなしとのアンケート結果が9割。満州事変は陸軍の暴走というイメージだったが、すでに国民全体に戦争への空気が醸成されていたという事実は考えさせられる。自分がその時にその場にいたらどう判断したのか。
世論に流される無垢な国民の1人なのか、補助金目当てに満州に多くの農民を送り込んだ役人なのか、それとも反対した村長なのか。
また、当時の日本は日中戦争を戦争と思っておらず、討匪戦との位置付けだった事と、9.11の後のアメリカの対テロへの感覚が同じというのは面白い見方。
今の日本は国防への関心が高まっており、勇ましい意見が国民に醸成されつつある。
空気に左右されず、自分で情報を取捨選択し自分の頭で考える事を肝に銘じたい。 -
読んでいてめちゃくちゃ楽しかった本。
日本人なら人生で一回は読んでほしい!と思うくらい、いろんな人におすすめ。
小中学生の頃は学校の科目の中で歴史が一番好きだったけど、高校で進路の関係上理系を選択して以来歴史にはノータッチ。
でもやっぱり、私は歴史が好きなんだなあと思った。難しい言葉もちょくちょくあるけど、それでも全然楽しんで読めた。
めっちゃ栄養のある本。
何度でも読みたくなる本。 -
著者は日本学術会議の任命拒否で話題になった人物で発行が朝日出版社。想像に反してイデオロギーの偏りはない。
石原莞爾や松岡洋右には甘めの記述で「日本切腹、中国介錯論」など初めて知る内容が多く勉強になった。
-
日清、日露から第二次大戦終結まで。高校生への講義として平易な言葉で解説がなされてはいるが、”過去を振り返る”歴史ではなく、その時代、その状況だったらどう考えるだろうか、という歴史家の視点が明確で、読みごたえがある。19世紀末~20世紀の戦争と政治、経済を取り巻く世界の重層的な動きを捉える入門書として、高校生の副読本(教科書でも)にしてほしいくらい。
-
ずっと近代の戦争の総覧を読んでみたいと思っていたので、まずタイトルに惹かれました。本書は東大の先生が中高生を相手に講義をするという形をとっているので(といっても子供たちは歴研ですが)、とっつきやすくて読みやすいです。
そもそも当時の日本人は戦争=悪とは考えていません。「相手が悪いことをしたのだから武力行使をするのは当然」という感覚を、本書の序章で9.11後のアメリカとの比較で解説されています。戦争うんぬんは良いか悪いかではなく、”種類”で考えられた。
日清戦争や日露戦争は、外に目を向ければなんといっても不平等条約の改正が大きい。国内はもちろんいろいろな思想がありましたが、条約改正となると民より国益重視で意見が一致していたようです。日露戦争をはじめるのは元老(幕末維新の内乱を経験していた人たち)は反対してたのはちょっと意外でした。情勢を冷静に分析してたし「どれほど苦しくとも不正はするまい」の精神が、国を動かす日本人にまだあったんでしょう。
近代戦は植民地問題がありますが、日本のは「安全保障」の面が大きい。ヨーロッパは資源の面(好奇心も?)がそもそもなのでその辺が違うことがわかりました。この問題が第一次世界大戦でクローズアップされる。この大戦は日本は比較的大きく関わっていなかったので、いま一つ知らないことが多かったのですが、これがヴェルサイユ条約も含めて、その後の日本のあり方を決定づけたことも分かりました。特に戦争に参加するときも講和会議のときもアメリカとイギリスには”不信感”を抱かざるを得ない(お互いに)状況になった。
国際連盟からの脱退には、国連の規約を知らなかったのか読み違えたのか、自分は思わずあっ!と心のなかで叫んでしまいました。変な言い方ですがこのあたりはスリリングです。しかしこの規約第16条、これでは世界大戦が起きてしまします。
国民に目を向けてみると、やはり昭和4年の世界恐慌が大きい。大打撃を受けたのは、就業者の4割を超える農業従事者でした。ちなみに農業から重工業などへ産業構造が変化するのも、戦争(日清戦争)がきっかけでした。
それまでの戦争の大義名分の「ズレ」を一気になくしたのが軍部です。特に陸軍は普通に「政治勢力」として認められていたばかりか、実に国民に”おいしい”訴えを巧みに展開していました。特に農村部に積極的に働きかけていましたが、これは農民は兵士になるからです。
そして2.26事件や治安維持法などの暴力や圧力。政治家も(みんなではなかったですが)死ぬのはこわいですから(もう幕末の志士はいません)だまってしまう。
太平洋戦争ではアメリカとの力の差は感じていなかったのか、なぜ戦争を始めたのかの疑問はいつも出てきます。本書で精神論の怖さがよくわかります。日清戦争は相手が”弱くて気が進まない”戦争だったけど、アメリカは強いから”弱い者いじめではなく明るい戦争”なのだ、今までの戦争がこれで「完遂」できる、と。日本人はアメリカのほうが兵力や資源が勝っていると、多くの人は知っていたようです……。
軍人だったという水野廣徳(ひろのり)の「日本は戦争をする資格がない」という言葉を忘れないでいたいものです。