天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション)

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  • 潮出版社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267905353

感想・レビュー・書評

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  • 久し振りに巨匠の作品を振り返りました。
    とある事件から『負の暗示』を思い出したので。
    津山30人殺しを題材に、その事件の凄惨さと共に何故犯人が陰惨極まる猟奇的殺人に走ったのか、何故負のサイクルに囚われたのか、という犯人の心理状態を克明に追った話です。
    些細な事が一大事件に変質していく危うさに震撼とさせられます…
    「はたしてそのサイクルに囚われるのは春雄だけだろうか」
    と言うものすごく恐怖を感じる言葉でしめくくられててインパクト大。

    「ぎえーっ」の『天人唐草』も傑作ですよね。
    親に抑圧され、自己否定ばかりして生きてきた女の魂が解放された姿…
    イヌノフグリにそんな意味があるなんて、誰かが教えないと子供は知らないです。罪の意識を感じさせるなんてそれこそ悪意を感じます。絶対教育方針間違ってると思うけど、似たような過ちを犯す毒親は後を絶ちません…
    描き方がすごいですよね。特に父親の愛人には衝撃大。
    価値観が崩壊するって、こういうことなのかも。

    『銀壺・金鎖』は東郷青児の女性関係をベースにした、その子供たちのとっても複雑な心理を描いたもの。
    『蜃気楼』も不倫を扱ってて、人の情の恐ろしさに震えます。
    『悪夢』も実在のサイコパス事件を扱った話です。どっちが現実でどっちが悪夢なのか、描き方がほんとにこわい。

    『シュリンクス・パーン』と『星の素白き花束の』は、ギリシア神話的な匂いのする話で、両方とも好きです。
    思ってた印象と違っていて、目が覚めるってやつ。
    パーンは甘くていいオチで、星の素白きは幻滅したのちのクールなオチでどちらもほっとしました。

    山岸作品は、どれも作画構成が迫力あって素晴らしいです。思わず話に引き込まれてしまいます。
    人間の心の闇を的確に突いてきますね。

  • この巻は傑作揃い。表題の『天人唐草』は今はもうこういう人はいないかもしれないけれど、両親(特に父)の歪んだ圧力によって正しい成長を逃した過程には説得力がある。圧巻は『負の暗示』昔実際あったとされる大量殺人事件を元にしたフィクション。その凶行に至るまでの過程を淡々と描いている。どちらも共通して思うのは「こんな些細なことで人は狂うのか?」ってことなんだけど、狂っちゃうんだよね。それだけ親の正しい愛情って人間が人として成長していくのに不可欠で、実際自分が本当に大丈夫だろうかと省みて生きてる人なんて少ないわけで、何かしらの狂気(存在的狂いを)を含んで生きてるなんてままあることなんだよな…と思う。実は自分のすぐそばにある一歩踏み外した先の風景を見せつけられるから山岸凉子の作品は怖くて怖くて面白い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「山岸凉子の作品は怖くて怖くて面白い。 」
      山岸凉子の描く狂気は、納得させられるから一層恐い。。。ホラーも描かせたら凄い(怪奇マンガは殆ど読...
      「山岸凉子の作品は怖くて怖くて面白い。 」
      山岸凉子の描く狂気は、納得させられるから一層恐い。。。ホラーも描かせたら凄い(怪奇マンガは殆ど読まないので比較出来ませんが)私は恐ろしくて夜一人で過ごせなくなります)。
      2013/06/19
  • ネモフィラ似た愛らしい花イヌノフグリを父に天人唐草だと一喝され怯えその後も保守的で厳格な父に反論も主張もできず失敗を過度に恐れる性格に成長。その父は奔放な性格の愛人宅で死去。夜道でレイプされわかってくれるはあの人はとひとりつぶやく。空港で金髪で少女趣味のファションで奇声をあげる響子がいた。イヌノフグリ(イヌの睾丸)花言葉は忠実。
    凄すぎ恐るべし山岸凉子ワールド

  • 1ページ毎に、鳥肌が立つくらい突き刺さる

  • むっちゃ怖いねんけど。

    わたしのなかでは、人間の狂気=山岸凉子です。

    神経質なかんじの細いタッチが、人間の狂気とあいまっていい感じな仕上がりに。

    いつ読んでも、こころに刺さる。

    わたしのこころの漫画家さんです。

  • タイトルと表紙で、神話的なお話が集められたのだと思いきやとんでもなかったですね。
    とんでもなかったですね、びっくりですよもう。

    人の負の部分を丁寧に描いていて、これを成し遂げる作家の精神の強さはいかばかりでしょう。

    まったくもう、作品ごとに心に重いものがのしかかってきてどうしてくれようと思いながら、最後まできっちり読ませていただきました。はい。

  • 怖いよ~
    ひたすら怖いよ~

  • 津山事件をモチーフにした「負の暗示」を読みたくなって再購入。15年前は文庫で持っていたと思うが、もうちょい俗っぽさを感じてた。このタイミングで読むのはハードだわ。。。

  • き え ー ー ー ー ー ー

  • ホラーサイトのサイコさんの話の中で、この作品に似ているという言及があったのと、最近「日出処の天子」を読んだばかりだったので。
    お父さんに古い価値観を押し付けられてたということに誰にも気付いてもらえず、単に見栄っ張りとか融通が利かないとか、本人の欠点としてしか周りに認識されなかったのがかわいそうかも。まあ気付かないのが当たり前なんだけど、そこまで踏み込んでくれる人がいれば・・・。
    「求められるまま優等生をやっていたら、周囲にもそれを求めた本人(親や先生)にもつまらないと思われていた」みたいなテーマに似ている。まあこういうのって、優等生という価値観を疑ったり反抗しようとしたりしなかった本人の怠慢と鈍感が原因のひとつなんだけれど。

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著者プロフィール

山岸凉子(やまぎし・りょうこ)
1947年北海道生まれ。69年デビュー後に上京。作品は、東西の神話、バレエ、ホラーなど幅広く、代表作に「アラベスク」「日出処の天子」「テレプシコーラ/舞姫」など。

「2021年 『楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山岸凉子の作品

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