- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270006771
作品紹介・あらすじ
宇宙船を降りてシリウスで休暇を過ごしていた"ケプティン"はある日、ペットのトリブルを連れた婦人に出会い、ゆきずりの恋がいつしか…。チェーホフの傑作短篇をスター・トレック風にアレンジした「トリブルを連れた奥さん」をはじめ、子供向けゲームブックの形式を使って、人間の最後の一日をたどる「"アドベンチャーゲームブック"ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」、宇宙から来た"実在"と島で暮らす孤独な女性の交流を綴る表題作「第七階層からの眺め」など、SF、ラブストーリー、コミック、ファンタジーの要素を駆使しながらジャンルの枠にとらわれることなく、多彩な手法で人間のいとなみを描ききった13の滋味あふれる物語。アメリカのイタロ・カルヴィーノと称され、『終わりの街の終わり』で絶賛を浴びた若手作家、待望の傑作短篇集。
感想・レビュー・書評
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SF的だったりファンタジー的だったり奇想的な彩りの13編を収めた作品集。
「ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」ゲームブックという形式を小説の企みとして用いたアイデアがなかなか。どのルートからも辿れない頁を置いてあるのは遊び心?
「空中は小さな穴がいっぱい」遠く忘れ去っていた過去の出来事が現在の平穏を脅かしかけながら、本作では平穏を保とうとする夫婦の選択が、大切なものは何かを示してくれている。
「アンドレアは名前を変える」ラストの語り手の呟きに、じんわりとした切なさと微笑ましさを覚えた。
「第七階層からの眺め」文章が好き。取り立てて何ということもないオリヴィアのこれ迄の日々。実は宇宙人だか異次元人だかと遭遇した驚愕の過去が語られていても、それが彼女の人生を揺るがす契機とはならず、代わり映えのしない自らの人生への幾ばくかの淋しさと諦念と、それでももしかしたら起こるかも知れない変化へのささやかな期待を抱いてもいるオリヴィアにしみじみと感じ入る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「第7階層からの眺め」(ケヴィン・ブロックマイヤー : 金子ゆき子 訳)を読んだ。ジャンルを超えた短編集。全体的なトーンは透明感だと思う。
いくつかの物語はカサカサの枯葉を巻き上げて吹き抜ける風のように心を震わせ、いくつかの物語は乾いた広野に静かに降り注ぐ慈雨のように心を潤す。 -
2015年10月17日読了。気鋭のSF作家による短編集。ハードSF的な描写もあるが、少年少女が将来を憂い揺れるさまや年月により失われてしまうものへの愛惜の念といった、感情に訴える繊細な描写をSF的世界の中で描いているのが「現代的」に感じる。「日本的」な感覚、と言ってもいいのかな?ゲームブックのスタイルをとった収録先『ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂』が私が読んだきっかけだったのだが、作者が予め書き起こした物語を、「選択肢から選び、該当ページをめくる」という行為で、その中の一部・限られた物語だけを読者が体験できる、というゲームブックの形式は物語の描き方として非常に可能性のあるものなのではないか、と改めて感じた。いちいち「子供向けゲームブックの形式を使って」と注を入れられるのが納得いかない・・・。ゲームブックは子供だけのものではないだろうに。
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「BOOK」データベースより:
宇宙船を降りてシリウスで休暇を過ごしていた“ケプティン”はある日、ペットのトリブルを連れた婦人に出会い、ゆきずりの恋がいつしか…。チェーホフの傑作短篇をスター・トレック風にアレンジした「トリブルを連れた奥さん」をはじめ、子供向けゲームブックの形式を使って、人間の最後の一日をたどる「“アドベンチャーゲームブック”ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」、宇宙から来た“実在”と島で暮らす孤独な女性の交流を綴る表題作「第七階層からの眺め」など・・・ -
色々な味わいの短編が詰まった作品。ジャンルを一応ファンタジーとしたけど、純粋なファンタジーというよりもすこしふしぎ系が多い。どれも風景描写がうつくしく、その場をありありと思い浮かべることができるよう。半ばに一編ゲームブック形式の作品があって驚いた。
個人的には「千羽のインコのざわめきで終わる物語」と「ジョン・メルビー神父とエイミー・エリザベスの幽霊」が好き。