シャルビューク夫人の肖像 (RHブックス・プラス)

  • 武田ランダムハウスジャパン
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270101667

作品紹介・あらすじ

「姿を見ずに、肖像画を描いてほしい」肖像画家のピアンボに突然声をかけてきたのは、両目が白濁した盲目の男。シャルビューク夫人の使いと称し、法外な報酬を口にして肖像画の製作を依頼してきた。屏風の向こうで夫人が語る、過去の話とその声だけで姿を推測するという、その奇妙な依頼に、やがて画家は虜となっていき…。謎の霊薬、奇病の流行-19世紀末のニューヨークを舞台に鬼才フォードが紡ぎ出す、奇怪な物語。

感想・レビュー・書評

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  • 画家に就いての作品は、矢張り美しいものだと熟々思う。画家特有の世界観其れ自体を、文章と云う空間を以て現わすのだから。

    此の噺はミステリー要素が深過ぎる為か幾分その世界観の重みに欠けるが、それでも矢張り心理描写や独特のにおいは充分に描き出されて居て、惹き込む力が有るには違いない。
    文章は比較的読み易く、比喩表現や情景描写も繊細で美しいものだった。
    併し肝心な処で描写を軽くしている処は海外文学の特徴でもあるのか、ジュースキントの"香水"と同様にも想われた。

    意図が掴み易く、併しそれ故に面白みが減退している部分が箇々に見られた。展開としては想定範囲内と云った処であったが、故に現実離れし過ぎていない…描写の突出等が目立たず、全体的に纏まった作品として完成されていた。
    人物の特徴が強く有る様でまるで無く、それよりも全体の情景を重視したものの様にも思われる。
    「肖像画とは自画像である」と云う言葉が印象的で共感したが、ワイルドの描く様な人物の迫力には程遠い為、説得性に欠けるものでもあった事は否めない。

    期待よりも少し劣っては居たものの、中々良い作品だと思う。

  • 2008-03-00

  • 書かれたのは2002年だが、物語の舞台となっているは19世紀末のニューヨーク。1883年に完成したブルックリン・ブリッジが登場する。まだ、現在ほどに夜も煌々と明るいニューヨークではない。むしろ、物語のムードはほの暗い街だ。しいて言えば、ネオ・ゴシックロマンだろうか。万事にミステリアスであるとは言えるが、外面的には幻想的な要素は必ずしも高くない。主人公のビアンボ、そしてシャルビューク夫人、それぞれの心に潜む内なる幻影を描いたとするべきか。全体としては、やや掴みどころのない作品だが、そこがこの小説の魅力か。

  • 画家の苦悩とか、肖像画で人を苦しめるとか、対象を見ずに絵を描くこととか、考えたことがないことだらけで面白かった。

    ピアンボが描く絵見たいなぁと思った。この時代のNYの風景やロングアイランドの景色や湿度や温度が伝わってくる感じ。

  • 「ガラスの中の少女」はあまりおもしろくなかったのですが、こちらはおもしろかったです。中盤から後半まで一気読みでした。やっぱりジェフリー・フォードって感じでした。

  • カナダのビクトリアにある、行きつけのカフェのスタッフの知り合いが書いた本。日本語版があるから是非読んでみてって言われて頂いた。ミステリーなのかな?自分では絶対に選らばへん本やけど、読んでみたら展開が面白かった。同じ著者のほかの本も読んでみたいと思った。

  •  19世紀末のニューヨーク。姿を見ないで肖像画を描いて欲しいと依頼を受けた画家は、屏風の向こうのシャルビューク夫人の語る不思議な世界に迷い込んでいく。
     
     導入のシーンがすごくいい。
     肖像画画家として成功している主人公の憂鬱と、モデルになったセレブ夫人のたった一言のやり取りがいい。本当にたった一言だけなのに、怖い。
     そして、この怖さが主人公を「運命の女」へ導いてしまう。
     シャルビューク夫人の依頼を受ける素地は多々あるのだけど、やはりあの一言が「必然」であったように感じる。と、相変わらず瞬間に世界を変えてしまう手法が上手いジェフリー・フォードなのだ。
     そう、ジェフリー・フォードの魅力は、何よりもこの変化とリアルである。
     どんな場面でも、そしてどんな人物でも、フォードの作品の中では匂いや温度を感じるリアルティがある。たとえ、それが滑稽なまでに抽象化されたような人物であったとしても、その人の息遣いがわかる。
     このリアルがあるからこそ、顔を見ないで描く肖像画、の摩訶不思議さが成功している。
     
     そして、最後に見出すのは「愛」なのである。
     「ガラスのなかの少女」もそうだったけれど、物語の根底には深い愛があり、結局はそれが物語を支え、動かしていく。
     
     ジェフリー・フォードって、なんだかとてもポジティブでいい人であるように思えてきたww

  • スパイシーなカレー。
    舞台は19世紀のニューヨーク。姿を見ずに声を聞くだけで夫人の肖像画を描くという奇妙な仕事。夫人の荒唐無稽な話。若い女性たちの謎の死。主人公に迫る危険。
    嘘と真実が交錯するオリエンタル趣味のサスペンス。
    神話や古典、聖書などを盛り込み、幻想的な雰囲気が漂う。
    読み返してみると巧妙に伏線が張られている。鍵になるのは…
    後半、気になって一気に読んでしまった。映画化しても面白いと思う。
    主人公が絵を描くシーンがリアルでよかった。

  •  「姿を見ずに、肖像画を描いてほしい」
     奇妙な申し出をしたシャルビューク夫人に対して、それを引き受けた画家が屏風越しに語られる夫人の話に徐々に引き込まれていく。。。

     19世紀末のニューヨークという舞台も魅力的だが、決して姿を見せないシャルビューク夫人や、目から血を流す奇病、死んだはずのシャルビューク氏からの脅迫など、最後まで先が読めない展開だった。

     ラストも秀逸だった。こういう不思議な味わいのミステリをもっと読みたい。

     もともと寡作らしいが、もっと翻訳してほしいと久しぶりに思った作家。

  • 姿を見ずに肖像画を描くことを依頼された画家、盲目の下僕、目から血を流す奇病で無残な死を遂げる若い娘たち、嘘とも真ともつかない奇妙な半生を語る貴婦人…なんとも絢爛で魅惑的な物語…だったのですが、最後は割とありがちなサイコ サスペンスのようでちょっと肩透かし。つまらないわけではないけど、最初の期待からすると、もっと上を行って欲しかったかも。

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