買物難民: もうひとつの高齢者問題

著者 :
  • 大月書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272360628

作品紹介・あらすじ

商店街が急速に衰退し、たった1丁の豆腐を買うためにタクシーに乗らなければならないという事態さえ生じている。それは高齢者にとって死活問題である。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年刊、最近話題の買物弱者問題に『買物難民』というセンセーショナルなタイトルで切り込んだ本書の著者は、なんと哲学の教授。
    実母が買物難民となった体験から、社会調査の手法を学んで取り組んだ力作である。
    アンケート調査の生の声をふんだんに取り入れて、ひたすら高齢者、買物弱者目線での記述は、いっそすがすがしいものが有る。
    ただ、たった3年で新たな顧客層開拓のターゲットになっている感のある市場主義のダイナミズムの動向も、別途押さえておく必要はあろう。

  • スーパーや商店での日常の買物は必要不可欠の生活基盤だ。情報の取り入れ口でもある。身近にお店がないと毎日の生活が円滑に過ごせない。しかし田舎の商店街は瀕死の状況、郊外ロードに出来た大型スーパーにはクルマを動かせない高齢者には遠い。身近な店がなくなり、トラックでやってくる移動店舗も来なくなった場所では、高齢者はバスやタクシーを使って買い物に出る。
    リックに半分の白菜を入れたらそれでオシマイ。トイレットペーパー12個を買ったら手がふさがってあとは何も買えないよ。老人は人に頼ることを嫌う。「お礼しなくっちゃ」「そんなことは頼めない」・・。自分だけで頑張ってしまう老人たち。あるもので間に合わせていたら栄養失調になってしまった老夫婦がいたとか。独り暮らしじゃないんだよ。二人で暮らしていても尚のこと、買物は大きな課題だ。

    よたよた杖をついての買い物は、狭い道では危険この上ない。便利な手押しのシニアカーも坂道では凶器になりかねない。大型スーパーはどこに何があるのか分からない。買物が苦痛だなんて酷すぎるよ。バリアフリーだのユニバーサルデザインなどお題目は結構眼につくけれど、もっと身近な問題に対処してほしい。この本の結論は、善処する方法はいくらでもあるのに、まったく手つかずの状況と高齢者の「買物難民」はこれから増えるだろうという確実な予測です。

  • 分類=社会・社会福祉・高齢者。08年9月。

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著者プロフィール

1953年、埼玉県生まれ。帯広畜産大学教授(哲学・思想史)。
著書に『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集――「国権拡張」「脱亜」の果て』(明石書店)、『天は人の下に人を造る――「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『人にとってクルマとは何か』(大月書店)、『野蛮なクルマ社会』(北斗出版)、『クルマが優しくなるために』(ちくま新書)、『クルマ社会と子どもたち』(岩波ブックレット、共著)、『男権主義的セクシャリティ』(青木書店)、『クルマを捨てて歩く! 』(講談社プラスα新書)、『道路行政失敗の本質』(平凡社新書)、『レイプの政治学』(明石書店)、『「日本は先進国」のウソ』(平凡社新書)、『AV神話』、『買物難民』(大月書店)、『カント哲学と現在』(行路社)、『「買物難民」をなくせ! 』(中公新書ラクレ)、『逃げられない性犯罪被害者』(青弓社、編著)、『「3.11」後の技術と人間』(世界思想社)など。訳書にH・J・ペイトン『定言命法』(行路社)。

「2017年 『さようなら!福沢諭吉 Part2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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