- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299047007
作品紹介・あらすじ
醜く穢れた気持ち、これが恋なのだろうか――。大阪の中学に通う、安良。彼は同性である美形の同級生、渥美に想いを寄せている。一方で、安良はがたいが良い上級生の岡沢に迫られていた。強引な岡沢と清らかな渥美、二人の間で安良は揺れ動く――。著者の自伝的小説「口ぶえ」のほか、師匠まで惑わせる美少年を描いた「身毒丸」、著者の名作「死者の書」の原点である幻想小説「神の嫁」、さらには怪異小説「生き口を問う女」を収録。
感想・レビュー・書評
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1914年(大正3年)、不二新聞に25回に渡って連載されたBL小説が「口ぶえ」である。
‥‥一年生の頃から渥美の名を聞くと、軟らかな「けば」で撫でられた楽しい気もちになるのがくせだった。‥‥(84p)
折口信夫27歳、当時大阪府立今宮中学校嘱託教員を辞し、上京して教え子たち10人と本郷下宿屋に同宿し始めたばかりだった。つまり、折口信夫は有名になってからカミングアウトしたわけではなく、無名の時から隠さなかった。
直接表現こそないものの、知的エリート中学生たちの気持ちは純粋で赤裸々である。純粋な南大阪地方の言葉が、それを後押しする。
既に昔の大和言葉も、縦横に語れるバイリンガルでもある。他の短編に、中世河原者の生活を描く「身毒丸」、名著「死者の書」の前身「神の嫁」、などが載っている。決して読み易い小説ではないが、BL小説の自伝的部分にせよ、歴史的小説にせよ、何らかの「純粋性」を抽出しようとする、繊細な男の熱量が感じられた。
「身毒丸」の後に附言して彼は書く。
「わたくしどもには、歴史と伝説の間に、そう鮮やかなくぎりをつけて考えることは出来ません。殊に現今の史家の史論の可能性と表現法とを疑うて居ます。史論の効果は当然具体的に現れて来なければならぬもので、小説か或は更に進んで劇の形を採らねばならぬと考えます。わたしは、其(そん)で、伝説の研究の表現形式として、小説の形を使(つこ)うてみたのです。この話を読んで頂く方にお願いたいのは、わたしに、ある伝説の原始様式の語りてという立脚地を認めて頂くということです。」(126p)
正に、柳田国男の「遠野物語」もそうであった。折口信夫の豊かな教養は、遠く平安時代の生き霊渦まく伝説の世界までたどり着くだろう、という事だろう。
世間で「文学」としては敬遠されてきたこれらの短編が、気軽に手に取り、比較的捲りがいのある紙質を使った文庫本に蒐集されたのを喜びたい。
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昔の言葉遣いに慣れるまでちょっと苦戦しました。
読み進めると今で言う「ボーイズラブ」であることが分かり複雑な心持ちで読みました。
偏見はありませんが、心模様を文章にするとこの様な…と異国に飛んだかの様でした。
表装も確かに今風のボーイズラブであり、作者の言わんとするものを映しているよう。
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読みづれぇ
新字体に直したところで読みづらい
大坂の辺りが分からないのも又手が止まる要因となった
思春期特有の同性に対しての淡い想いなのかと思ったらしっかりと男色のそれだった