- Amazon.co.jp ・本 (118ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305709400
作品紹介・あらすじ
疱瘡やはしかなど、様々な感染症に見舞われてきた日本。
病原体の存在が知られていなかった時代には、感染症はもののけや怨霊、悪鬼など、目に見えない存在によってもたらされるもと信じられていた。
そんな中で人々は、神仏や有名な武将、予言獣などのイメージに病除けの願いを託し、上手な対処法を探ってきた。
社寺が授ける護符から「疱瘡絵」や「はしか絵」、郷土玩具など民間信仰による素朴なお守りなど……。
病と闘い、時に共存していくために生み出されたそうした表現を著者は“疫病芸術”と呼び、「私たちの生活をある側面では豊かにもしてきたのではなかったろうか」と語る。
そんな“疫病芸術”50点以上を、時代・テーマ別にカラー図版満載のビジュアルで
一挙に紹介。
日本人がこれまでどのように感染症を受けとめてきたかの軌跡を知ることで、新型コロナ禍の今を生きる参考にしてもらう。
【目 次】
はじめに
1章 疫神の誕生
コラム・祇園信仰と蘇民将来
2章 近世のまじない絵
コラム・疫病除けの郷土玩具
3章 予言する妖怪たち
コラム・疫病鎮めの祭と社
4章 明治の流行病
参考文献
感想・レビュー・書評
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2020年には「アマビエ」が流行しましたが、日本では昔から様々な感染症に見舞われてきた歴史があり、医療が未発達の時代には、その対策として病魔退散の祈りを図絵に込めてきました。
本書でいう「疫病芸術」は、有名な絵師や芸術家によって作られたものではなく、市井の人たちの祈りが込められたものであり、民俗文化のひとつです。
有名なものとしては、上記の「アマビエ」や、その元となったと見られる「アマ彦」などがありますが、信仰の対象としても有名な「牛頭天王」や、「赤もの」の一種である「赤べこ」など、様々なものが本書では体系立てて取り上げられています。
本書はそのほとんどがカラーで載っているので(一部、元が白黒と思われるものなどは白黒になっていますが)、色鮮やかで、当時の人たちが色に込めた思いにも想像が広がります。
2021年現在、まだコロナ禍が収まらない中で、古の日本人たちが絵に込めた病魔退散の祈りを知ることは、意味のある行為だと思います。
そして、その「疫病芸術」をまとめた稀有な本である本書は、今の時代にこそ重要な本だと思います。 -
遥か昔から、人々が畏れた感染症の数々。それら疫病を避ける
願いが込められた、護符や郷土玩具等の疫病芸術や慣習を紹介。
一章 疫神の誕生 二章 近世のまじない絵
三章 予言する妖怪たち 四章 明治の流行病
コラム、参考文献一覧、掲載元一覧有り。
古代から重篤な感染症が身近であった時代の日本において、
様々な疫病は、目に見えぬ物の怪や疫神などがもたらすものだと
考えられていました。特に、死を齎す疱瘡、麻疹、コレラ。
疫病退散を願って、人々は祈り、託し、避ける。
或いは疫神を祀って歓待し、満足して去ってもらう風習も。
平癒を、無事を、生を祈る対象として、描かれ、作成された
護符や郷土玩具、赤色の信心、疱瘡絵やはしか絵。
郷土玩具は、守る対象の子どもが手に取る可愛らしい造形。
売る目的はあれど親切丁寧に、心得や禁忌、守りの品を教える
数々のまじない絵。災疫を免れる手段を教える予言獣の絵。
もちろんアマビエも。コロナ禍の現在に注目されるのも分かる。
また、当時の疫病流行等の状況が分かる絵も紹介されています。
古から人々が原因不明の恐ろしい疫病について、どう考え、
対処していったのかを、少ないページ数の中に分かり易く、
かつ丁寧に疫病芸術を紹介しているところが、良かったです。 -
日本の疫病に関する絵や玩具を集めて紹介した本。疫神の像やまじない絵、かわら版的なお知らせの絵や疫病の流行を予言する妖怪の絵までたくさん掲載されていて見ごたえがあります。コロナで有名になったアマビエももちろん載ってます。こうして見ると、大昔から人間は疫病に悩まされてきて、それを避けるために知恵を絞ってきたんだな…。
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日本では古来、疫病が流行ると神仏や伝説上の武将、幻獣などのイメージを借り図像化され病除けや啓蒙の用途に利用されてきた。それらの図版を集め解説したもので、ボリュームは少ないが中身はしっかりしている。図版も豊富で見ているだけでも楽しい。
著者の畑中章宏という人、民俗学者とのことだが「災害と妖怪」とか「津波と観音」とか面白そうな本を書いてる。要チェック。 -
ざっと見だからあんまり内容理解はしてないけど、興味深い内容だった。
疾病のことももちろんそうだが、中山道についての歴史的背景を調べるきっかけとなってとても面白かった! -
日本における疫病とそれに対するまじないや啓蒙のための絵図を集めた本。たくさんの図版がカラーで載っているので見ていてとても面白い。まさに芸術と呼ぶに相応しいものも多く、祈祷やまじないに頼るしかなかった時代ならではとも言えるのかも。赤べこや鯛車は知っていたけど、それが疫病除けの玩具だったとは知らなかった。赤みみずくもかわいいが、私は黃鮒の方が好きかも(^^)
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はしか絵、疱瘡絵を読み解く興味深さ。当時のソーシャルメディアは参考になる。
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日本人の疫病とのかかわりを、当時描かれた絵や習俗から追っていく。
図版中心なので初心者にもわかりやすく、さらりと読めた。
深刻な状況のなかでも、ユーモアあふれる表現がおもしろい。
日本人は昔から擬人化が好きなんだなぁ。
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