- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784306073159
作品紹介・あらすじ
暮らしやすいまちの実現に貢献したいと考える交通関係の研究者たちが、地方都市の再生を目的に地方都市で積み重ねた経験・知見を基に、交通と一体的に進めるまちづくりの理論と9都市の交通まちづくりの実践例を紹介。
感想・レビュー・書評
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<シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190
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東京大学大学院工学系研究科の教員も含む、土木学会の成員を中心として執筆され、まちづくりに貢献する交通計画について、その理論と実践を紹介している。半分以上が実践例の紹介を占め、理論についても、難解な思想やモデルではなく、ビジョン構築や合意形成の手順といった実践に直結するものであり、ところどころ専門的な知識を前提とする箇所があるとはいえ、学部1年生でも充分に理解可能である。又、まちづくり関連の制度は頻繁に変更されるため、2015年に出版された比較的新しい書籍であるという点も長所として挙げられる。
都市によって求められるまちづくりの内容は当然ながら異なるという点を踏まえた上で種々の実践例が紹介されているため、何らかの形でまちづくりに関わりたいと考えている学生には非常に有意義な書籍である。
但し、基本的には都市的地域、或いは観光が大きく絡む自治体を事例として取り上げており(最小規模の自治体でも、世界遺産を有する平泉町)、中山間地域や「何も無い」ような自治体の交通まちづくりについては一切取り上げられていない。副題の通り、「地方都市」に主眼を置いていることに注意が必要である。
又、まちづくりに実際に関わっている者が各実践例を執筆しているせいか、或いは紙幅の都合か、「取り組みがいかに上手く行っているか」という方向での説明が多い。同様に、本書全体として「土地利用と交通の連携の弱さ」や「分散していく土地利用」に批判的な姿勢であるにも関わらず、施設の分散化を進めている自治体が同時期に行っている交通まちづくりを無批判に紹介している(例えば金沢市)、すなわち自治体のこれまでの政策についての批判的検討がほぼ皆無のまま、交通まちづくりだけに限定して論じている点には、物足りなさを感じる。
「まちづくりの連帯は尊い。」(176頁)という印象的な一文に、各執筆者の理念が集約されているかのようであり、またこの理念が先行し過ぎているようにも思えてしまう。
(教養学部学際科学科地理・空間コース 4年)
【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000023736
【学外からの利用方法】
http://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gacos/faq/gakugai.html -
518.84||Ha
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街づくりにおける公共交通の役割についての論考集。
本書では日本の九都市の実践を紹介する。
地方都市からの挑戦と言ってるけど、ほとんど地方の中核都市でホントに田舎なのは恵那市、由布市、平泉町の事例だろう。
本書で特に気になった部分は恵那市の「地方交流線」の提唱というところ。
地方交”通”線ではなく、地方交”流”線。
恵那市から明智町までを走るドローカル線、明智鉄道の存在定義を地域間の人の交流と定義づけている。
この視点は重要だと思った。
基本的に、地方交通線は赤字垂れ流しでお荷物でしかない。
公共交通の御題目で空気を運ぶ路線も少なくない。
そんなお荷物の地方交通線を、交流のための交通機関と定義づける意義は大きい。
そこに存在価値が生まれるからだ。
地方交流線、なかなかいい言葉だと思う。気に入りました。