- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309015637
作品紹介・あらすじ
おんなのための6つの"読む媚薬"。
感想・レビュー・書評
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どの登場人物も、寂しい。その寂しさは誰にも埋められない、分かってもらいたいけど、伝えきれなくて、恐くて、抱えてしまう人たち。心細さが伝わってきて、ひりひりしました。
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主人公の心の寂しさが伝わって、生き方は全然違うかもしれないけど親近感がわく
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この方の著書で、一番普通かと思います。頭を巡らさなくても、作者と感覚を一致させなくても、普通に読めるというか。自分の感覚通りに読めるというか。
短編集です。私自身は、着物と恋人の話を感覚的に延々と綴っている「伽羅の香り」と、男性の中に母性を求める「乳と蜜の味」が好きです。
両者に共通するのは「官能」です。ここで言う「官能」とは、肉感的な感覚の意ではなく、感覚器官の働きです。
読んでいると、感覚的に理解できるのです。「伽羅の香り」では嗅覚と触覚、「乳と蜜の味」では嗅覚と味覚が重要ポイントです。 -
佐藤亜有子…
東大仏文科卒の、なかなか屈折した作品を書く人。
「ボディ・レンタル」が有名? うちはそれでハマった。
「媚薬」は短編集。
作者の作品の中では一番ライトな作風。甘めの話が多い。
(同時期に読んだ「アンジュ」「タブー 禁忌」がハードだったのもあるけど)
あと普通に理解できるレベルの救いが提示されている気がする。
「加羅の香り」
この本の中で一番好きな話。
彼と自分の楽しみのために着物を着ることに魅了された「わたし」。
官能的な陶酔感が文章から伝わってくる。
「乱すためだけに乱れがないように着る快感」っていうのがいい。
(似た表現が「恋愛小説3」の3話目にもあった気がする)
恋人とのひとときがこの上なく幸せって思える人にはぜひ読んでもらいたい。
「彼女のバラ色の爪」
ネイルサロンのスタッフ薫は、月に一度やってくる涼子先生に密かな好意を寄せている。
大学の先生をやっている涼子先生は、美人で優しい。大学からの付き合いの夫と、2人の子供がいるらしい。それは薫にとってまさにバラ色に見えた…
かなわぬ思いに苦しむ薫が健気で切ない。
ラストシーンは恋を失ったことがある人には心に響くと思う。
「三色スミレの淡い恋」
高校生の時子が、大学生で家庭教師の五十嵐君と父親に出て行かれた情けない母親をどうにかくっつけようと奮闘する話。
時子は高校生というより中学生みたいな感じで可愛い。
佐藤亜有子もこんなリアルに今どきの女の子の気持ちを書けるならもっと書けばいいのに、とか思った。
最後がうちの期待した感じじゃなかったのは読みが足りなかったせい?
「乳と蜜の味」
性的な快楽は好きだけど男自体には興味を抱けず一夜限りの関係を繰りかえしてしまう織枝。
彼女は、ある夜出会ったパティシエによって自分の本当の欲求に気付く。
この話も結構好き。
少し、共感できる。
「……入りたい。あなたの中に」
「無理だよ。方法がない」
「わかってる。でも入れて」
蜂蜜といえばシドニィ・シェルダン「女医」のハチミツプレイを思い出しますね。
昔、中谷美紀とかが主演でドラマになった。唯一見てて親に止められた番組(笑)
「凍えた手には杜松の実を」
初めてその男の部屋を訪れたときの、違和感。
それを強く感じ取ってしまう千晴の物語。
その部屋に自分の知らない、あるいは触れてはいけないものがある気がすると、なんだか気分が落ち着かなくなるよね。
例えば、昔の女の気配を感じちゃったときとか。
自分が相手の一人目の女でない限り、その前の関係が確かにあったのは当たり前。
でもその「昔の女」の中に、いつか自分が組み込まれてしまうんではないかという不安もあるよね。
ちなみに杜松。ネズって読むらしいよ。
「ミュルラの涙」
真紀は、パーティ会場で三年前に別れた男を見つける。
彼女にとって彼は父親のように安心できる人だった。
そして今は、ひどい別れ方をしてからずっと忘れられない人…
色男の彼が自分の知らない女に話しかけてるのを見て複雑な気持ちになったり、この会場内に彼と関係を持った女がどれだけいるんだろうと考えたり、ふっ切れたといいつつも落ち着かない様子が伝わってくる。
同席した現恋人が本気で心配するのも頷けるね。
ん〜「三色スミレ」同様、終わり方が期待と違った。
ハッピーエンドなんだけどね。
レビュー書くために読み返したら前より自分の中にすっと入ってくる感じがした。
いくらか私も成長したのかしら。 -
濃密な雰囲気の短編集。