ギケイキ:千年の流転

著者 :
  • 河出書房新社
3.60
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本棚登録 : 474
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024653

感想・レビュー・書評

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  • 源義経を題材に書かれた本書だが、町田康の文体で独特に描かれている。
    読みやすいと言えば読みやすいが、三文芝居がかったやりとりが続きすぎて腹を下しそうになってしまった。
    義経記には大変興味があったので、続きを読みたい気もあるが、別の作者を探したいと思います。

  • 千年の時を経て、源義経自身が己の人生を振り返って、とことんパンクかつエキセントリックに、そして、とことん下品かつエロ全開に語る…という、町田康色全開の古典娯楽大作の第一巻。
    (タイトル通り、源義経の人生を書いた軍記物語「義経記(ぎけいき)」がベース。)

    2015年刊の「宇治拾遺物語」(池澤夏樹個人編集日本文学全集)の、大胆かつ思い切ったパンクな訳で、お腹が痛くなるほどの笑いと下ネタで読者を楽しませてくれた町田さんですが、この仕事を通じて、古典をリライトするやりがいと面白さに目覚めたのかもしれません。

    ヤンキー調の若者ことばに、なんだかうさんくさいカタカナ英語やらなんやら混じえながら、ナルシストヤンキー義経は、自身や後の第一の家来であるメンヘラ弁慶の前半生などを語っていきます。
    …何度も繰り返しちゃうけど、エロと下ネタたっぷりに。

    でも、千年後になって31歳で幕を閉じた自分の人生を振り返る、という設定なので、人生を俯瞰した、なかなか乙な伏線要素というか、達観したような言葉もあり、独特のリズムと構成軸を持っている点が興味深いし面白い。

    2021年までに全四巻で完結予定ということで、源氏挙兵後とはいえ、頼朝に見える前まで、と、かなり中途半端なところで終わった第一巻。
    けれど、今で言うショートショートのようなものだった宇治拾遺物語と異なり、一人の人生を語るという点で、町田色の中で、どのような言葉に最後着地させるかという点でも、今後が楽しみな作品です。

  • 「それって武士?ああ、武士だ。戦いにおいて武士はいつだって現実主義だ。血が噴き出し、目玉が飛び出し、内蔵も噴出する。それがすべての前提だ。…(中略)…後の世の武士道などというものは私から言わせれば泰平の世のたわごとだ」
    源義経と言えば、気品あふれる悲劇のヒーローのイメージがあった。
    こんなファンキーな義経は見たことない。
    くほほほ、きゅははは、どひゃーん、ほえええ、ってそりゃなんやねん!
    ツッコミを入れながらの読書となった。
    私の中の義経像が見事に覆される。
    「これが私のやり方。オレ流の生き方だ」
    と、どこまでも強気な義経。
    忠実な僕・武蔵坊弁慶と共にいよいよ兄・頼朝の元へ。
    どうかこのまま最期までオレ流を貫いてほしい。

    ツッコミどころ満載のファンキーな町田流『義経記』。
    千年の時を越え、義経が今まで胸に秘めていた思いをどこまでもさらけ出せるのか…。
    この後4巻まで続くらしい。
    このエネルギッシュな筆力を保ち続ける町田康さんはすごい。

    この義経は俳優でいうと菅田将暉のイメージかな?
    菅田将暉主演の映画で観てみたい。

  • 随分前にインターネットだったかで、
    町田康が義経記を書くと知り、
    絶対読む!と心待ちにしていた。

    源義経を描いた義経記を現代風に描いている。
    かなり現代風に描いている。
    こうして読むと、義経も弁慶も無茶苦茶(笑)
    と爆笑したり呆れたり。
    続きもとても楽しみです。

  • 歴史小説とは思えない軽さで、コミカル。

  • ギケイキ「義経記」ですな 
    オリジナルの義経記は全くの未読。 はてさて大筋はなぞってるんでしょうね。 
    現代人に義経を「口寄せ」したような文体なので好き嫌いは分かれるかも 
    これが「町田康」流?なのでしょうか? 
    本巻は、義経誕生から頼朝との対面直前まで語られてます。 
    ギケイキ2もあるので読みます

  • 古典が現代語で書き直されることはよくありますが、町田さんの読み下しは、すごく愉快。イキイキとした主人公の内面が、面白おかしく、だからこそ切羽詰まって伝わってきます。笑ってるうちに「なんで生きてるんだろ?」という根源的な問が内側から湧いてくるから不思議です。(『宇治拾遺物語』の「奇怪な鬼に瘤を除去される」もオススメです。)

    金広(図書館スタッフ)

    https://bit.ly/3O5MJlL

  • NHKのカルチャーラジオで著者が語っているときき、やおら読みたくなる。

    https://www4.nhk.or.jp/P1929/

  • う〜ん、ちょっと無理かな〜。

  • 「ハードボイルド読書合戦」で取り上げられていて、これは読まねばと、初町田康長篇。町田康って面白そうだなあと思いつつ、なんというかちょっと危うい感じがして、敬して遠ざける的な気持ちでいた。
    (つくづく自分は、なんだかんだ言っても、根っこのところで秩序派なんだなあと思う。パンクをまあイヤだ!とは思わないけど、近づく気にはならない)

    なるほどこれは、高野・清水両氏がおっしゃるとおり、荒ぶる中世のイメージを感覚的に取り込んで書かれているところがすごい。義経って実際こうだったんじゃないかと思わせる。「読書合戦」で高野さんも言っていたが、近世以前を舞台にした小説やドラマなどには、無自覚にその後の時代(江戸中期以降とか、現代とか)と同じ価値観を前提にしたものがよくあって、それは本当にヘンだと思う。

    今とは異質なものの考え方をする登場人物たちが実にパンクで、そこに不思議な爽快感がある。続きが楽しみだ。

    • niwatokoさん
      たまもひさんも、高野さんからの初町田康でしたか! おなじです、わたしもなんとなく今までずっと敬遠してました。
      わかります、なんか爽快感があ...
      たまもひさんも、高野さんからの初町田康でしたか! おなじです、わたしもなんとなく今までずっと敬遠してました。
      わかります、なんか爽快感がありましたよね。今とは考え方とかまったく違っていたのもよくわかったし。
      今後、ほかの町田作品も読みそうですか? わたしはほかも読んでみたいと思いつつ、どれにしようかなーと迷ったままです。わたしも結局はパンクな人間ではないからなぁーとか。
      2018/05/31
    • たまもひさん
      そうそう、町田康ってなんだか読むのをためらうものがありますよねえ。激しいものが渦巻いてそうで、うかうか足を踏み入れたら強烈なパンチを食らうん...
      そうそう、町田康ってなんだか読むのをためらうものがありますよねえ。激しいものが渦巻いてそうで、うかうか足を踏み入れたら強烈なパンチを食らうんじゃないかと、小心者はびびってしまいます。
      他のはどうしようかなあ。とりあえず「ギケイキ」の続き待ち、ということになるかも。
      2018/05/31
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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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