一度きりの大泉の話

著者 :
  • 河出書房新社
4.06
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感想 : 131
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029627

感想・レビュー・書評

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  • 竹宮氏の自伝と併せて読みました。
    お別れした当時のことは、御本人方しかわからない部分があるでしょうから、それぞれそういう想いがあったんだ…と納得しながら読みました。

    しかし、竹宮氏がなぜこの時期自伝を出し、のみならず、それに付随する様々な事を起こそうとしたのかが疑問でした。
    竹宮氏御本人というよりはその周辺の方というべきでしょうか?非常にきな臭く感じました。
    「トキワ荘」に対抗し、「大泉サロン」という象徴を残そうとしてるのか…。

    また、最近有名漫画家さんがご自身の作品の扱いについて傷つき、生命を絶たれた事件とリンクするような作品を創り出すことへの苦しみを萩尾氏も述べられております。

  • 内容を知らず読み始めました
    姉の漫画本を読んでいたので同時代を体験していますが、結構崖っぷち漫画家だったというのは意外でした
    あの漫画家とも繋がっていたのかと驚きがありますが、つちだよしこが出てこないのはそりゃそうだというか残念

    竹宮惠子との成り行きを説明する事がこの本の主題でしたが、萩尾望都の態度は私は理解できる

  • 萩尾望都さんの文章、エピソードを聞くと現代で言うところのASDのグレーゾーン味を感じる。

    などと書いてしまうとあるいは「無礼な(それはそうです。不躾で申し訳ない)」「これこれこうは当てはまらないので違います」などと思われてしまうかもしれない。発達障害についてここで詳しく解説はしませんが、私は発達障害をマイナスなものとは捉えていないし、何かにカテゴライズしてジャッジしようという話ではないのです。

    ただ萩尾望都さんのお話する様子を動画などで拝見すると分かる異常な頭の回転の早さ、記憶力、「パッと見た物を記憶してすぐ描けてしまう」という才能。一方で、発言を額面通りに捉えてしまう(忘れてください、と言われたことを本当に忘れるべきだと思い込む)、逆に言語化されていない空気・感情・反応が読み取りづらい(一部自覚がある、各エピソードで物理的な事象意外の言及がない)、0か100かで判断してしまう極端な思考(一コマの批判を全てが否定されたと捉えてしまう)、など、「あ、この方はASD傾向の人だったのかしら?」と思ったら腑に落ちました。
    漫画家や芸術家のようにずば抜けた才能を求められる職業に、極めて高い才能を待つ発達障害の人が見出されるのは珍しいことではないと思います。最近は、発達障害は「ギフテッド」とも呼ばれますね。
    (萩尾さんの親の方がもっと強いASD傾向のようなので、後天的にそういう思考パターンになっている可能性もあるものの、やはりこれだけの才能。天才でしかありえないと思ってしまうのです)

    という視点でこの本を読むと、この情報の少ない時代に、萩尾望都という天才に、世の中には生物学的に天才としての素養を持って生まれる人間が事実いる、ということも知らず、真っ向から接して「嫉妬した」という竹宮さんと、人一倍人間の悪意に敏感で繊細な性質を持つのに、何らかの形で悪意に当てられて心身をひどく痛めてしまった萩尾望都さんのくだりは、たいへん心が痛みました。どちらも気の毒なことです。
    萩尾望都さんが、その後も、現在も、作家として素晴らしい作品を生み出し続けてくださっていること、あらためてありがたいことだと心に沁みました。

    答え合わせに、竹宮さんの方のエッセイも、そのうち読んでみようと思います。

  • いつも行く図書館がしばらく休館なので、普段行かない図書館に受け取りに行ったのですが、
    「すごくドキドキしました!」と司書さんに話しかけられました。
    「竹宮先生も萩尾先生もどちらも好きだから、読んでいて本当にドキドキしました」って。
    というわけで、読む前からドキドキものでした。

    萩尾望都と竹宮惠子のふたりが大泉で同居していたのはたった2年ほどのこと。
    それでも、今でも二人セットで語られることが多いくらい、それはそれは衝撃的なマンガを同時期に出していたということなのでしょう。

    だけどこの本を読むと、竹宮惠子は常に時代をけん引していたのに対して、萩尾望都は巻末にかろうじて作品が載るくらいで、アンケートでも評価は低かったらしい。
    当時をご存知の方、これ、本当なのでしょうか?
    私はリアルタイムで『トーマの心臓』も『風と木の歌』読んでいないので何とも言えませんが、萩尾望都作品の評価がそんなに低かったとは信じられません。

    高校生の時、私にSFを教えてくれた友だちが萩尾望都も教えてくれたので、私にとって萩尾望都は、まずSFなのです。
    『11人いる!』『ウは宇宙船のウ』『スターレッド』『百億の昼と千億の夜』などなど。
    どれも面白かったなあ。

    厳しい両親に育てられて、萩尾望都は自己評価が低い。
    くどいほどに「多分私がダメだったのでしょう」と書かれているのが、若干うざい。
    天才のくせに。
    …と、竹宮惠子が思ったかどうかはわからない。
    こういう話は双方から聞かないとわからないことが多いから。

    でも、竹宮惠子の方はもういいかな。
    二人の仲のわだかまりはまだ残されているのかもしれないけれど、読者としては、作品を愉しむしかないのだから。

    竹宮惠子作品をあまり読んでこなかった私だけれど、『地球(てら)へ…』は本当に面白かったし好きだった。
    3人仲良しっていうのがバランス悪かったのか、クリエイター同士の同居というのが良くなかったのかはわからない。
    「もう、仲直りしたら?」というのは簡単だけど、多分今でも傷ついた心は癒えてないのだろう。

    ファンはただ、少しでも彼女たちの心が平らかであることを祈るのみだ。

  • 第77回アワヒニビブリオバトル「ラッキー」で紹介された本です。オンライン開催。チャンプ本。
    2021.07.17

  • 天才ゆえのナイーブな葛藤。

    が、存分にわかる自伝。

    信じていた相手によってもたらされた傷は、
    何年経っても幾つになっても、
    古痕となり消える事はない。

    例え、相手が嫉妬ゆえの行為だとしても。
    傷つけた相手の葛藤も苦しみもわかるけどね。

    やっぱり、人間関係って難しい。
    それが天才同士だとなおさらに。

    『少年の名はジルベール』
    併せて読まれる事をオススメします。

  • もっとノスタルジックな内容かと思ったら、全然違った・・・
    なんかもう、いろいろビックリだし悲しい。萩尾望都がこんなに自身を卑下してるのかとか(巻末作家!? 私、多分、生まれて初めて読んだ少女漫画は萩尾望都の作品だと思う。だからこんな風に自分を評しているのはとても悲しい)、少女漫画界二大巨頭といっても差し支えないと思う二人の間にこんなことがあったのかとか。『小鳥の巣』は確かポーの一族の中で最初に読んだお話しで、一連の中では一番好きなんだけど、その裏にこんなエピソードがあったとは・・・!
    間に入って取り持ってくれるような人がいないのも悲しい。
    これってどちらの作家のファンかで受け取り方分かるんだろうなあ。

  • 萩尾望都・竹宮惠子双方のファンにとってはなかなか衝撃的な内容だったのでは。
    いわゆる「大泉サロン」の成り立ちと、解散を萩尾目線で語ったもの。

    今と違い、漫画の地位は低く、同好の士と出会うのも容易ではなかった。
    ようやく出会った同志、それも、類まれな才能を持った人々と出会ったのだから、喜びも一入だったのだろう。


    あまりにも近くにいすぎたのが仇になったのか、共同生活の終わり(物理的な意味ではなく、精神的な意外で)が萩尾に与えた傷は深かった。

    竹宮たちとの「別れ」以降、それまでのことは一切封印してきたというのを、今になって表に表したのはよくよくのことだろう。
    「今更そんなこと言わないで欲しい」と思ったファンも多いかもしれないが、もう本当に竹宮と自分の関係をほじくり返してほしくない、という一心だったのだろうね。

  • 出てくる少女漫画家たちの名前や作品は知っているけど、そんなに思い入れはない。
    なので、へえーそうだったのか…としか言いようがないのだけれど、でも女同士の確執は怖かった。はっきり口に出さないでニコニコ付き合っているから仲良いのかと周りには思われていて、それでいて本当は互いを死ぬほど嫌っている…あるある。あるあるだよね。真相は藪の中ではあるけれど、怖いのは間違いないねえ。本人同士もアレだけど、マネージャーやら親友やら、取り巻きたちの言動はホラー級。男同士の嫉妬も怖いというけれど、こういう独占欲は女性の独壇場なのではないかしら。

  • わかりました。
    後書きを読んで、文章が、書いた物じゃないんだと分かりました。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩尾望都の作品

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