日々のきのこ

著者 :
  • 河出書房新社
4.02
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本棚登録 : 371
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030159

感想・レビュー・書評

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  • 人間の8割がきのこに取り憑かれている時代(ちなみにあとの2割は粘菌)。時間が経つにつれて、どんどん人間部分が薄くなり、最終的には完全にきのこになってしまうが、思考も「菌化」しているので、そこに恐れはない。

    コロナ禍に書かれた作品だと思うと興味深い。冬虫夏草と化した人間の生きる世界は、上下関係や私利私欲のない、ある意味で究極のユートピアなのかもしれない。

  • キノコが持つ退廃的な寂しさと幻想的な美しさ、不気味さを世界という広いスケールのものに上手く掛け合わさっていてまさになんたるきのこだった。
    物語全体から漂ってくる火が消えていくような寂しさや泥濘の中を彷徨うような気だるさが読んでいる人の体感速度をゆっくりにしてくれるのでのんびりと時間を喰むことが好きな耽美主義者の方々にオススメしたい。

  • こんな滅びが良い。

  • ヒグチユウコさん装画のきのこ達が可愛いが内容は菌類がジワリジワリと侵食して来る様で恐ろしい。生きながら身体からきのこが生えるってかなり、とんでもなく嫌だ!きのこの繁茂のために胞子を撒き散らす手伝いをする胞子活動、菌に取り憑かれ支配されやがて乗っ取られ朽ちて行く。恐ろしくも不思議で幻想的かつ難解。でも読む手は止められない 。

  • ・きのこに寄生される人間
    ・一人称が曖昧
    ・人間は不快感は感じていない
    ・どちらの視点なのか不明瞭
    ・きのこにとっては当たり前の日常

  • わかったような、わからない様な、きのこの幻影小説。
    言葉選びや、人間がキノコになり支配されていく表現が独特。
    決して入り込めないし、イメージもし難いのに、ページをめくる手が止まらない。
    私がキノコに支配されているのか?
    気持ち悪いような、不思議な感性の読み物。

  • ヒグチユウコの挿画はとてもよくて、何分でもじっと見てしまう。
    さらりとした描写は、やがてヌメヌメとした描写に変わってゆき、わたしの完全な菌化とともに空気は動きを止める。

    P8 ばふ屋と呼ばれているが、正しくは「地胞子拡散業」【中略】ノモホコリダケの胞子を吸い続けると、どこか体質が、というか、それだけでなく意思や思考も含めた感受性、意識の傾向のようなものが変化する、ように思う。だが、この、ばふんばふんと白い茶色い丸いものたちを踏み続けることのなにか脱力するような、いっとき人としての義務を免れるような、何の目的もない、何の達成もない、ただ永遠の今、永遠の過程だけでほこほこと喜んでいるようなこんな心持ち

    P11 きのこを踏むことがどうしてこんなに楽しいのだろう。なぜこんなに踏みたいのだろう。それはきのこたちが望んでいるからだ。人が、ではなく。

    P13 「やあ、かぜよくて幸い」【中略】日々胞子の飛ぶ、括山麓の土地では、風のよい日とか悪い日とか言い合うのがあいさつの代りである。

    P18 バスが扉を閉ざして行ってしまうと、しーむしーむと遥かな茸鳴きだけが耳にある。

    P94 既に相当の度合いで我々は菌と共生している。実は純水こそ現在の我々には猛毒だというではないか。嘘だろう。【中略】自分たちは外部に向けて常に有機的な関係を持つ。そこが閉ざされると死滅する。それも嘘だろう。

    P105 ・当人にとって望ましい踏み外しというのはないけれども、踏み外すことがなければ成立しない部分を常に持つこと、それは望とは別の必然性があって、それなしに意識は存在しないこと。例えば恋愛が究極的には好き嫌いで決まっていないというようなこと。事故ということ。
    ・統合失調症になりやすい人々は人類にとっての保険ではないかという説がある。彼らは極度に孤独に強いためである。

    P147 (きのこを食うのは)昆虫だけではない、ナメクジ、カタツムリ、ミミズも乗ってきてゆるゆると進みながらちょびちょびときのこの傘あたりを蚕食している。そしてそれらの特に小さいものたちをねらって、しばらくすると・・・蜘蛛たちが登場する。・・・・まれに鼠類も、それらを襲う蛇が上がってくることもある。豊穣だなと思う。こうして自分の身体が戦場になる様子を見ながら、うとうとしている。

  • 読んでいると、徐々にキノコの菌で脳が侵食されていく気がする。きっとそのうち、肩にベニテングタケとか生えてくれそうな気がする。
    穏やかに一人で終末に向いたい

  • ふむ

  • きのこ・・・・なにもかもきのこというか菌類が生活に入り込んでいる社会というか。幻想的であり、妄想的でもある。ある種ホラーでもあるのかもしれない。
    なんだろうな。もうよくわからない。ただただきのこ。現実側からするととんでもないことになってるんだけど、登場人物は皆幸せそうではある。きのこまみれだけど。もうそれでいいじゃないか。

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著者プロフィール

高原英理(たかはら・えいり):1959年生。小説家・文芸評論家。立教大学文学部卒業、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。85年、第1回幻想文学新人賞を受賞。96年、第39回群像新人文学賞評論部門優秀作を受賞。編纂書に『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』『ファイン/ キュート 素敵かわいい作品選』、著書に『 ゴシックスピリット』『少女領域』『高原英理恐怖譚集成』『エイリア綺譚集』『観念結晶大系』『日々のきのこ』ほか多数。

「2022年 『ゴシックハート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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