- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309203478
感想・レビュー・書評
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害のない物静かな保安官助手という周囲の評価の裏側で、激しい暴力性を抱えて生きるルー・フォード。ささいなきっかけによってあらわになった彼の昏い衝動は次第にエスカレートし、やがて自分自身をも巻き込む奔流となって人びとを襲う。
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初期の殺人のころに持っていた「復讐」「隠蔽」といった理由付けすら放棄していく終盤のなげやりさ、終始一貫した自嘲的な態度と軽さがいい。ここから出ていきたいという願い、高い知性を持ちながら、自分を追い込む殺しを重ねる自己矛盾。その矛盾を自覚してなお止められないあたりがどうしようもない。しかしあの終わり方はかっこいいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内なる殺人者
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過小評価され過ぎていると思われるジム・トンプスン。
最近のスプラッター小説などに慣れている人からすると、味気なく感じるのかも知れないけれど、この小説が書かれたのが、1952年だということを考えると、その鬼才ぶりがわかると思う。
小説とは言え、現代の人間が抱えている闇を捉えていると思う。 -
いわゆる犯罪小説。作品自体は数十年前に書かれたものですが、筆致はまだまだ新鮮です。それについては、訳者の技量によるところも大きいとは思いますが。
小説の割に「架空の話」っぽく見えないのは、あとがきにもある通り、主人公であり「内なる殺人者」を抱えているルー・フォードが、現実味のある、突飛なことは何一つしない普通の人のように見える精神異常者であるからでしょう。
犯罪小説はその性質上、基本的に読者に感情移入をさせず、あくまで傍観者のような立場から物語にのめり込ませるものだと思います。その点でこの作品もその範疇を超えていないのですが(というか、その範疇を超えた時点で読者も犯罪者になってしまう訳ですが)、こういうキャラクターが周りにいないとも限らない、と思わせる部分も数多くあり、著者の素晴らしさを感じるとともに、怖い世の中を自分たちは生きているんだなぁという空恐ろしい気持にもさせられました。 -
コテコテのアメリカ産ハードボイルド。ありふれた人間の持つ狂気を描くルノワール小説の先駆け的存在。多種多様な暗黒小説が出回る今となってはシンプルすぎて味気なく感じる。
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ジム・トンプスンの代表作の1つ。
POP1280の主人公と違って、自分の中のあやうい部分を自分でも恐れつつ、制御できなくなっていく過程にもの凄い迫力がある。 -
映画を観て、気になって読んでみた。期待しすぎたのか、それほど重くも面白くもなかったかなぁ…。バラードを読んだ時の読後感と似ているかも。
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この前に読んだ赤い霧と同じような幼児体験で大量殺人者になってしまうんだ。私の認識が甘かったかもです。