ランサローテ島

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 185
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (78ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206516

感想・レビュー・書評

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  • スペイン領ランサローテ島をウエルベックが旅行する。波に浸食された岩肌が名物のランサローテ島は、北大西洋上のアフリカ寄りに位置し(モロッコのすぐ西)、サボテンと石だらけで何もない火山島だ。

    「火山による創造と大洋による破壊」

    そんな島の旅行記なのだが、おそらくフィクションが入っているのだろう。まぁ色んなエロいことが起きる。ウエルベックをひとことで言うとゲスな哲学者がふさわしいが、そんなゲスな哲学者の目で見た世界は、読んでる方からしたら面白い。実在する新興宗教団体、ラエリアン・ムーヴメントも出てきて、話は短いが刺激的だ。

    だが本の半分が何の変哲もない島の写真。これで定価2400円なのだから高い。

  • 『素粒子』と『プラットフォーム』の間に書かれた中編ということで、『地図と領土』ですっかりおしゃれになったウエルベックにちょっとさみしさを感じていた自分は楽しく読んだ。島に行くまでの身も蓋もない流れとかオウムに対する物言いとか。語り手はいつもどおり人生にうんざりしている中年男だけれど、うんざりしていてもバカンスには行く。フランス。

    そして中編だったからかウエルベック的世界にお腹いっぱいにならず、わりと寄り添って読めた。慣用句的にではあるが「尼になりたい」はわりと普通に口にされる言葉であり、ときにそれを言ってしまいそうな自分とリュディはたぶん同じ道を歩いているのだ。だれだって人生にダメ出しされ続けるのは辛い。方向を変えるにはどうしたらいいんだろう? あまり深刻にならないこと? 目の前のささやかな楽しみにとりあえず手を伸ばすこと?

    パムとバルバラはかわいい。そんなに女の子をかわいいと思わないほうがあとで絶望しなくて済むんじゃないかと思うけれど、どうなんでしょうか。

    • gdgさん
      はじめまして。catwingです。
      読メでもお世話になっていますが、はじめてコメントすると思います。
      (Twitterもこっそりフォロー...
      はじめまして。catwingです。
      読メでもお世話になっていますが、はじめてコメントすると思います。
      (Twitterもこっそりフォローしています)
      なつめさんのレビューを読んで、ウエルベックに興味がわきました。
      ウエルベック初心者はどれから読み始めたら楽しめると思いますか?
      2015/10/20
    • なつめさん
      catwingさんこんにちは。そうですね、一番心を動かされたのは『プラットフォーム』なのですが、おすすめは『地図と領土』です。トーンが一番き...
      catwingさんこんにちは。そうですね、一番心を動かされたのは『プラットフォーム』なのですが、おすすめは『地図と領土』です。トーンが一番きれいな感じがするので。
      2015/10/20
    • gdgさん
      おすすめ、ありがとうございます!ではまずは『地図と領土』を読んでみます。
      おすすめ、ありがとうございます!ではまずは『地図と領土』を読んでみます。
      2015/10/21
  • 表紙、草間彌生⁉︎かと思ったら、ホンモノのサボテン。驚いた。
    ランサローテ「人類なき後の世界というヴィジョンを具体化している」島。その姿は作者自ら撮った写真で、たっぷり堪能できる。
    ラエリアンネタなど新興宗教と科学の結合の必然性とその命運についてなど、『ある島の可能性』のテーマはすでにここでも取り上げられていたのだな。『ある島の〜』を読んだ後では、短編ゆえ仕方ないが物足りなく感じた。

  • サボテンだしウェルベックさんだしと思って読んでみたらまんまとランサローテ島に行きたくなった。
    荒涼としたなかに浮かぶ蛍光色にも見えるサボテン。
    旅のふくらみは旅の終わりからという感じの小説。

  • 冒頭の写真集を無味乾燥な絵だなあとつまらなくめくり、続く物語で、その光景に意味があったことを感じ取り、末尾の訳者解説で、わたしの読みがいかに浅かったか思い知る。

    アンチモダンの系譜があったとは!そういえば、カルト宗教も3pも合点が行く。

  • ウォモシロかったでーす。とてもコンパクトによくまとまってました。
    短い文章で登場人物も少ない中、ツアー参加者の、冴えないベルギーの秘密警察に勤める鬱病のオッサンにとても愛着を持ちました。私も現実世界では、あんな雰囲気を人に与えてるとウォモいまーす。

  • 火山の島、ランサローテ島。
    本の半分が著者の撮影した写真。
    太古のような近未来のような殺伐とした光景だけど、奇妙に人工的でもある。
    破壊と再生という永遠の繰り返しを思う。

    辛辣な物言いとユーモアのバランスが絶妙。
    面白い話ではないのだけど、とても面白さを感じながら読んだ。

    自らの上位に立つ原理、それに支えられることで成り立つ共同体。
    脅威にも救いにもなるところが悲劇で、自分の人生のことを考えた。

  • 世をひねた語り手のあまりの一貫性が笑える。

  • 斜に構えたおっさんのいささか品のない旅行記…かと思っていたら、後半の普遍的な悲しみに驚いた。
    ちょっと苦役列車の作者を思わせるような露悪的な主人公だが、同じように孤独に耐えている男性は多そう。本の半分はランサローテ島の写真で、本の風景描写の一助になっている。

  • 写真、装幀、造本、文章、全部ひっくるめた佇まいがかっこいい。手元に置いておきたい。

    内容に関して、『素粒子』もそうだったけど、一度読んだだけではわからない。フランス文学も、ついでにフランス映画も難しい。
    さすがは子どもにボードレールを暗唱させて「残酷だと思うかい?でも人生は残酷なものだからね」の国だ(『地獄の黙示録』)。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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