- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207605
感想・レビュー・書評
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色々な しろ で綴じられていた。様々な手ざわりの頁を捲ると、たくさんの掌で撫でられ、まるで真っ白い包帯で傷口を包んでくれるような慰撫。書体のちがう声は、わたしにちょくせつ語りかけ、希う、祈りのよう。
美しくてさびしくて優しい情景がとおりすぎる(キアロスタミの24フレームみたい)。
なんだかずっと、泣きたいきもちだった。哀しいのか、嬉しいのかもわからない。この曖昧さに、しぶんなりの言葉をあたえるために、わたしは物語を巡遊するのかもしれない。そして雪の結晶をみつけたみたいに、ちょっとした発見をして、白く笑うんだ。
すべてが永遠でないことの、幸せと不幸せをにぎりしめて。
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白は聖なるもの。
高潔。けがれのない儀式めいた文章。
ろうそく、雪、雪片たち、みぞれ、霧で涙が出たり、共感または感動したり。
寒い冬に読んでよかった。 -
圧倒的に美しい雪のような
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ss集がと思いきや、ひとつひとつが少しずつ繋がっていて、全体像が次第に見えてくる。文章を繋ぐのは“白いものたち”であり、“わたし”と今ここにはいない“わたしの姉”の母によって語られた記憶の3つ。波が寄せては引いていき、少しずつ渇いた砂浜を濡らしていくような、穏やかだけど近付いてみると荒々しい文章だった。
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4.11/643
内容(「BOOK」データベースより)
『しなないで、しなないでおねがい―その言葉がお守りとなり、彼女の体に宿り、そのおかげで私ではなく彼女がここへやってくることを、考える。自分の生にも死にもよく似ているこの都市へ。うぶぎ、ゆき、つき、こめ、はくさい、ほね…白い光と体温のある方へ―ワルシャワと朝鮮半島をむすぶ、いのちの物語。アジア唯一の国際ブッカー賞作家、新たな代表作。最注目の作家が描く破壊の記憶と、再生への祈り。』
私
(冒頭)
『白いものについて書こうと決めた。春。そのとき私が最初にやったのは、目録を作ることだった。
おくるみ
うぶぎ
しお
ゆき
こおり
つき
こめ
なみ
はくもくれん
しろいとり
しろくわらう
はくし
しろいいぬ
はくはつ
壽衣
単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。これを書く時間の中で、何かを変えることができそうだと思った。傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと。』
著者:ハン・ガン
訳者:斎藤真理子
出版社 : 河出書房新社
単行本 : 192ページ -
失念してたけど、『ギリシャ語の時間』の人だったか
あれはあれで独特な雰囲気あったけど、これはそれが全開
またさらに独特…掌編みたいな…?? -
やわらかで淑やかな言葉の羅列に、生きることと死ぬことの両端が行き来している。波の文章がよかった。章ごとに紙の色が違うのも素敵
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注目している作家の一人。じっくり味わうように読みたい本。
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又吉のおすすめにあったから読んでみた
紙質が違うのがいいね -
白い言葉と物語。空気と空気の間、という印象が強い。そして何故かじわじわとわたしの生にも浸透してきて、おくるみに包まれた赤ん坊のようになる。哀しみと祈り。装丁や、紙質にもこだわっていて、「本」自体の表現も素敵。