古代ローマ人の愛と性

  • 河出書房新社
3.70
  • (1)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 61
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226040

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ローマ帝国の華やかなる影に、命の価値が羽のように軽く、あっけなく死んでいく貧民たちの姿があった。シビアな当時の死生観が紙面を通じてビンビンに伝わってきた。
    古代ローマ人の性のやりとりが、コロシアムのエッチな出し物から路地裏の暗黒面まで生々しく描写されており、長年教育ドキュメンタリー番組を手掛けているという筆者の力量を感じた。

  • 「愛は十二世紀の発明」という言葉を聞き、それ以前の『愛』についてとても知りたくなりました。
    『古代ローマ人の愛と性』という本ですが、実は自分『現代日本人の愛と性』も未だよくわかっていません。
    友人と話していても「何か違う」と感じるし、愛と性がらみの訳わからない事件が日々TV新聞を賑わせている。
    昨日のニュースにあった「慶大院生ボクサーが妻の同僚42歳の局部を切り取って水に流した事件」は最たるものではないでしょうか。

    余談ですが、古代ローマの去勢者は、三つのカテゴリーに分けられていました。
    睾丸を切除された者たちは「スパドーネス」、睾丸を潰された者たちは「トラシアエ」、そして睾丸とペニスを切除された者たちは「カストラーティ」です。
    このニュースで想像すると、被害にあった弁護士さんはカストラーティではないか?
    これら「第三の性」は古代ローマで人気者だったそうです。

    話をもどして、「愛と性」とは、芸術同様、言葉を超えるもので、また一人一人ちがう、特に異性になると別物なのかもしれない。
    だから私には「わからない」のかなと思いました。
    でも、そんな私なりに古代ローマについて書いてみます。

    古代ローマで、結婚後に愛が芽生えるというケースもあったそうです。
    それは解放奴隷の夫婦に、より顕著で、これは私のイメージする理想とする愛に近い気がします。

    でも貴族の結婚となると、愛情に基礎を置かないことが婚姻関係の長期の継続を保証していました。
    結婚は単なる契約でした。
    愛情の欠如は、夫婦関係にかえって、波風を立ちにくくしたのです。
    だから現代の夫婦が直面する離婚や別居の諸要因とは無縁でいたのです。
    そうか、慶大院生ボクサーがもし奥さんを愛していなければ、あのような事件は起きなかったのかもしれませんね。

    12歳ぐらいで親の決めた40代男性と結婚、悲惨な初夜。
    女性の平均寿命である29歳を超えるころに、夫はすでに初老。
    そして彼女たちは舞台俳優、戦車競走の馭者、剣闘士らと浮気。
    夫も浮気しているし。

    ローマ人は現代人よりもはるかに「お盛ん」だったと結論づけるべきだろう、と著者。
    これには、当時の人々が性に対してきわめて開放的だったのと同時に、自由な精神の持主だったことが関係しているそうです。
    現代人のような倫理観から生じる性に対する罪悪感もなく、性感染症に対する恐怖心などもなかったそうです。
    そして寿命が短いから、今を楽しもうという気持ちが現代よりかなり大きいようです。

    あらためて、現代でよかった。

  • なかなか興味深く、単純に面白かった。もちろん社会的な違いはあるにせよ、根本的に人間って昔から変わらないんだなあ、と。今みたいにいろんな娯楽や情報がない分(そして寿命!)、性に素直なのかな。男性と女性、高位階級と下層階級の違いは酷いけど。

  • 古代ローマ人の生き生きとした描写を用いて描かれたシリーズの一冊。

    高く評価する点が3つ、一つだけ低く評価する点が1つあるため、星4つとした。

    高く評価するのは、次の点。
    1.オウィディウスの『恋愛指南』など、当時の道徳教訓詩をパロディ展開した作品からも史料を引いているが、全体としては信頼のおける史料だ、と思われる点。
    2.貴族や中流階級だけにとどまらず、貧困層の事なども調べて書いてある点。
    3.当時の社会、文化における価値観を紹介し、一方で『現代の道徳』による価値判断をさしはさまないよう気をつけて書いてある点。

    一つだけ低く評価する点については、紹介前に前提となる筆写の事情がある。
    まず、評者の性的な嗜好は二次元限定で、男性同士、女性同士を問わず、同性愛描写ばっちこーいであり、その内容が非現実的なもの(描写やシチュエーションなど)であっても楽しめる口である。性指向(現実の人間に対する行動)に至っては非性愛(恋愛感情はあれど、性的な欲求が無い)である。
    こうした前提があるため、
    「同性愛を扱った項目はどのような内容だろうか?」
    と、興味をもって本書を読み進めていた。
    ところが、他の恋愛や性愛についての章と異なり、この項目は文章量が少なく、概論、いわゆる「さわりだけ」紹介したに過ぎない、という印象を受けた。
    著者自身の性指向やホモフォビア(同性愛嫌悪)が影響したのだろうか?
    疑っても詮無いことではある。
    他の章での、『その場所で、生きているローマ人の背後からカメラで追っていく』ごとき生き生きとした描写が優れていただけに、この一点だけが画竜点睛を欠く、と言わざるを得ない。

    総括すると、エピクロス学派の『物の本質について』や、ストア主義哲学の『自省録』といったローマ時代の哲学書とは異なる側面から、ローマ帝国の世界を見せてくれる良書であった。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1962年、パリ生まれのイタリア人。自然科学が専門。テレビの人気サイエンス番組や教育番組の監修やキャスターを務める。科学ライターとしても活躍、前著『古代ローマ人の24時間』は大ベストセラーに。

「2014年 『古代ローマ人の愛と性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アルベルト・アンジェラの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×