サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかった〜〜!!激動の時代の中に生きる今、読めてよかった。宇宙の歴史や人類史全体から見ると激動なのかはわからないけれど。笑

  • 我々の生きる世界は集団妄想の中。認知革命により、組織や国家の力を活用する事になったサピエンスは、エネルギーを使いこなし、科学革命を起こす。成長を前提とした資本主義の後押しもあり、対立を乗り越えながらも経済合理的な判断により、次々とイノベーションは進む。下巻は、一気に近代の話に入り、科学と哲学の領域へ。

    永遠の命。不死ではなく、非死。これは物理的な事故のような死は避けられないが、老衰や病気に対しては臓器を入れ替える事で生きながらえる事を可能とするという意味。この研究プロジェクトは、不死を求めた古代シュメールの神話ギルガメッシュにちなんで、ギルガメッシュプロジェクトというらしい。もはや手が届かない話ではなくなってくる。

    仮に非死、アモータルが叶うとして。その恩恵を得られるのは、富裕層のみ。サピエンスは分断されるのではないか。幸福感は、経済の発展に比例せずある程度、衣食住が保障された所で頭打ちになるらしい。中世よりも、近代が幸福ということはない。寧ろ、外の世界が見え、その比較によって自らの不幸を嘆く機会は、現代の方が多い。サピエンスは共通主観によって纏まるが、経済格差によって分断する恐れがある。

    科学を制御するのも倫理やモラル、宗教観などの認知、共通主観。サピエンスは、神話のもとに地球上の覇者になり得たが、神話は認識によって多様性を生むために分断を促し、経済格差、科学や宗教、歴史認識など世界中でまだ折り合いのつかぬ問題を抱えている。さて、どう生きるべきか。

  • 「資本主義の地獄」
    農業革命後に起こった科学革命は帝国主義と切っても切れない関係にあった。即ち、ヨーロッパ人は探険して征服したいという野心を持ち、アメリカ大陸、南米大陸の原住民を奴隷とし、植民地化していった。
    これを正当化するため科学が用いられた。生物学者、人類学者らは「ヨーロッパ人は他のどの人種よりも優れているため彼らを支配する権利を持っている。」という科学的根拠を示した。更には、この帝国主義が自由市場資本主義のもとで奴隷貿易を生み出す。奴隷貿易企業は証券取引所に上場して資金を得て、船の購入、水夫の雇用、アフリカで奴隷を買うなどしてアメリカ大陸に行く、そこでプランテーション所有者に奴隷を売買、砂糖やコーヒー等を仕入れ、自国の市場で売るという構図だ。
    注目すべきは、このシステムは国家によって管理されたものではなく、自由市場が運営、出資していたもので、キリスト教同士による争いやナチズムのように恨みによるものでなく、奴隷をモノとして扱うという無関心が原動力となっていることである。
    現代においても、世界で様々な災害が起こっても資本家は自らの財産を増やすため、市場の推移を予測して株を売り抜けることや需要の高まりそうな分野への投機に余念がない。
    そこには人類を救おうという観点はなく、相変わらず他者への無関心が見受けられる。

  • ・歴史を研究するのは未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもない、そして、私たちの目の前には想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するため
    →本書最後の方に出てくる何になりたいのか、何を望むのかにつながる?
    ・「この者たちの言うことは一言も信じてはいけません。あなた方の土地を盗むためにやってきたのです。」
    →普通に面白かった。人間も害虫のように新しい土地に降り立ち食い荒らしていくみたい。
    ・「信用」によって将来のお金で現在を築くことができるようになった。→現在の経済の根幹をなすシステムだと思った。
    ・近代は殺戮、戦争の時代?平和の時代?その答えは答える時期によって異なる。→答えを求めがちだが答えは確かに捉え方によって変わる
    ・幸せを感じ方はその人本来の物事に対する感じ方で決まってる→確かに楽しそうな人は何をやってても楽しそうだし、例え楽しくないことがあったとしてもその下り幅はそこまで大きくない気がする
    ・歴史書は各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかについては何一つ言及していない。私たちはこの欠落を埋める努力を始めるべき→歴史は人の行いを淡々と述べる報告書であって日記ではない感じ?

    こういうタイプな本は得てして読みにくい(理解しにくい)ものが多いけどこれは上下ともに読みやすかった。

    私は何になりたいのだろうか、、、

  • やっと読みました。文庫になるまで待とうかとも思っていたけど著者の執筆スピードが速くて気になること多すぎて我慢しきれませんでした。

    タイトルの通り人類の歩んできた歴史全体を俯瞰してそこにはどんな大きな流れがあるのかを掴み、その流れから見たときに現在の私たちの状況はどう捉えられるのかを語る本。評判通りの面白さでした。

    これまでにも歴史の流れを概観することを試みる本やジャレド・ダイアモンドなど文化人類学の本も読んできましたが、この『サピエンス全史』が特に面白かった点をいくつか。

    ①「虚構こそ」という観点
    歴史で大きな役割を果たしてきた様々な概念や出来事の共通の背景として「虚構」という「存在しないものを共通で想像する力」として纏め上げた観点が素晴らしい。

    認知革命により文化が生まれ、文化により見知らぬ人とも協力できる大規模な社会が生まれ得た、と。

    そして数々の虚構の中でも「貨幣」「帝国」「宗教」の発明が大きかったというのも理解しやすい。

    特に科学至上主義や自由主義等の近現代のイデオロギーも一種の宗教である、という解釈はその通りだと思う。明確なものとしては存在しない共通の価値観で私たちは繋がろうとしているし、反目しあっている。


    ②分からないことはあるという潔さ
    また、歴史全体の流れを明快に解説しながらも現在の文化人類学ではまだ分からないこともある、と潔く宣言している点があるのも良い。

    たとえば本書の鍵となる虚構を成立させる背景となった「認知革命」がなぜ起こったのかについては遺伝子の突然変異である、と簡単に触れられるのみで、それ以上に説明しようがないとしているし、

    より面白かったのは、多くの社会で男性優位の社会構成や差別が行われてきたことに明確ないかなる理由も見つけられないし、主張されているいくつもの理由も不確かであると指摘している点。


    ③「幸福」に向き合う勇気
    下巻の一章を割いて「文明は人間を幸福にしたのか」という問いに向き合っている点も素晴らしい。著者本人も指摘しているけれど歴史それ自体は良し悪しのあるものではなくてだからこそこれまで歴史学はそこに触れてこなかったし、触れにくかったけど、それでも幸福という個々人の内面に向き合う努力を歴史的観点からもし直すべきではないか、という指摘は至言でしょう。



    逆にすっきりしなかった点もいくつか。

    ⑴農業革命はなぜ起こったのか

    「植物の実を探すのにうんざりして、カボチャを栽培することにした」

    などと簡単に触れられるのみなのですが、農業革命以降、それ以前よりも苦労して働いていたのに食べ物は少なかったことが指摘され、農業革命は必ずしも人類にとって嬉しくなかったとまで指摘しておいて、だとしたらなおさらそうせざるを得なかった理由が知りたい。人口爆発とエリート層の誕生により後戻りは不可能だったという指摘はその通りかと思うけど、スタート時点での必然性もあったのではないかと思う。氷河期が終わった環境の変化(植生や動物生の変化)、定住(がむしろ先?)、戦争(定住と人口増により領地拡大志向が生まれた?)などでしょうか。

    (2)貨幣の登場
    貨幣論においては一部で否定されていたように思う、物々交換の限界により貨幣が生まれた説で説明がなされています。この点、最新の学説はどうなっているのか別途知りたいところです。


    ということですっきりしない点もあるけれど、全体の流れは非常に明快で魅力的。最後の今後のサピエンスの変化の可能性など現在地点の捉え方もワクワクするところで、早く次の『ホモデウス』を読まねばと思います。

    以下は引用メモ。歴史を学ぶべき理由についての著者の考えに私も大賛成です。

    「たいていの社会政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物学的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものに他ならない。歴史を学ぶ重要な理由の一つもそこにある。(現代社会に残る差別的な)現象を理解するには、想像力が生み出した虚構を、残忍で非常に現実味のある社会構造に変換した出来事や事情、力関係を学ぶしかないのだ(上183)」

    「生物学的に決まっているものと、生物学的な神話を使って人々がたんに正当化しようとしているだけのものとを、私たちはどうすれば区別できるだろうか?「生物学的作用は可能にし、文化は禁じる」というのが、有用な経験則だ。生物学的作用は非常に広範な可能性のスペクトルを喜んで許容する。人々に一部の可能性を実現させることを強い、別の可能性を禁じるのは文化だ。生物学的作用は女性が子供を産むことを可能にする。一部の文化は女性がこの可能性を実現することを強いる。生物学的作用は男性どうしがセックスを楽しむことを可能にする。一部の文化は男性がこの可能性を実現することを禁じる(上186)」

    「それでは私たちはなぜ歴史を勉強するのか?物理学や経済学とは違い、歴史は正確な予想をするための手段ではない。歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ。たとえば、ヨーロッパ人がどのようにアフリカを支配するに至ったかを研究すれば、人種的なヒエラルキーは自然なものでも必然的なものでもなく、世の中は違う形で構成しうると、気づくことができる(下48)」

  • 複雑な難題を、分かりやすく、そして興味深く、説明してもらい、ありがたい。これまでの歴史や今の世界をこのように見ることができるのか、という視点以上の大きなものが伝わってきた。その一方で、もちろんこんな多様な学問的見地から1冊の本を通して理解しようとすると限界があるし、何か分かったつもりになっているのかもしれないけれど。世界、人類についての探求の入り口になる。

  • 7万年に渡るホモサピエンスの歴史を振り返り、これから起こる未来に向けて私たちがどのようなことを考えなければいけないか、という問題提起が非常に理解しやすく書かれている本。

    サピエンスは生物学的に定められた限界を突破しつつあり、今後シンギュラリティに至ると人間の意識とアイデンティティの根本的な変化が起こり、それ以前に起こったことは全て無意味となる。

    サピエンスは何でも作り出せるという点である意味で神となりあがるが、進歩は我々の意図した方向に進むものではない。
    認知革命、農業革命、科学革命を経て進歩をしてきているが、過去の革命が必ずしも素晴らしい結果ばかりを産み出していないということからも、私たちは各人の幸せや苦しみとその影響について問い続け、自らが何を望んでいるのかを深く考えることで、科学の進む方向に影響を与える必要がある。

  • 【一回では覚えきれないほどのものすごい情報量です】

    上下巻ともに読みました。

    ・おすすめの読み方
    付箋やメモをしながら読む

    すでに実践されている方が読んだら当たり前の読書法かもしれませんが、
    この本は他の方のレビューにもありますが情報量が多く、
    読んだ時は「そうなんだ!」と気づきがあっても、
    その気づきの場所が多すぎて
    付箋なしには読み返しが難しいです。

    ・心に残ったこと
    1.エネルギー枯渇問題は私たちの無知に起因する
    産業革命はエネルギー変換における革命だった。(p169)
    「あと○年で石油がなくなる」とは昭和の時代からよく聞かれてきたフレーズと思います。
    しかし、実際のところ私たちは数十年ごとに新しいエネルギー源を発見しているという事実はあまり認識されていないのでしょうか。
    本書によると、人間の活動と産業をあわせて1年間消費するエネルギーは地球が太陽エネルギーとして90分で受け取る量に過ぎないとのこと。
    それに加え、重力エネルギーなど巨大なエネルギー源に囲まれて生きており、それらのエネルギーを十分に利用できない現状を「エネルギー枯渇」と言い換えているだけということに気が付きました。
    また、ドイツにおけるハーバーのアンモニア製造方法の発見で硝石なしに爆薬を作った歴史から、エネルギーの利用と変換の方法の発見は、原材料不足を実質的に解消してきたという注目の事実も紹介されています。


    2.涅槃の意味は「消火」ですが・・
    涅槃(仏教における究極の状態)の境地に達するとあらゆる苦しみから完全に解放されるそうです。
    それは渇愛(欲望)の火を完全に消すからだと言われています。
    涅槃に達するためには心を鍛えて現実をあるがままに経験することをブッダは説いたそうです。
    しかし、ほとんどの人がその境地に達するのは難しく、時がたつにつれてさまざまな仏を生み出してしまったのが現実のようです。
    これは人間の欲望が生んだ仏だなと私は感じました。
    仏教は神々の存在を否定しません。
    しかし、苦悩がない人には神は必要ないのです。
    (宗教家のようなことを言っていますが、関係者ではまったくありません)
    宗教について日本では本当に繊細な取り扱いが必要ゆえに宗教について少し書くと自分でも違和感を感じます。
    しかし、人類史を学ぶ上で宗教について考えることは避けては通れないのではないのでしょうか。
    そんな気付きがありました。

    3.科学研究は宗教やイデオロギーと提携した場合のみ栄える
    近年、日本の科学界は「基礎科学」の重要性を訴えています。
    それは、基礎科学からノーベル賞級の発見につながると多くのノーベル賞受賞者が主張しているからです。
    確かにわからないことがわかるようになることは素晴らしいことです。
    しかし、基礎科学の大切さだけ訴えて研究費がもらえるのか内心疑問に思っていました。
    本書によると科学の発展は、それが何らかの政治的等の目標を達成するのに役立つと考えられたため資金を提供してもらえてきたという歴史がありました。
    資金が限られているがゆえに「どちらの研究が優れているか」よりも「どちらの研究が利益をもたらすか」
    で判断されるのです。
    本書ででてきた牛の例はとても納得できました。

    おそらく基礎科学を主張している研究者も研究資金を獲る際には研究による利益を主張しており、
    その研究成果が幸運にも産業の発展に大いに寄与したものがノーベル賞受賞につながるのではないかと思いました。
    (例えば、単純に鳥の羽根に興味があるというよりも、研究費を獲る時は鳥の羽根を調べてより効率の良い飛行機の羽の形を探るといっている)

    まとめ
    サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福は、
    世界の歴史から時代の流れを知りたいと思ったときに、とても役に立つ本です。
    歴史に興味がない人こそ新しい視点が見えてくると思うのでぜひ読んでもらいたい、おすすめの1冊です。

  • ◯科学革命の発端は、人類は自らにとって最も重要な疑問の数々の答えを知らないという重大な発見だった。(59p)

    ◯もし脳が集合的なメモリーバンクに直接アクセスできたら、人間の記憶や意識やアイデンティティに何が起こるのだろう?(254p)

    ◯その時点では、私、あなた、男性、女性、愛、憎しみといった、私たちの世界に意義を与えているもののいっさいが、意味を持たなくなる。(259p)

    ★幸福についての考察にたっぷり1章を割いている。人類のこれまでの歴史の意義を考えるためには、幸福の解釈が必要になるわけだ。

    ★私たちが獲得した物質的豊かさは、他の動物たちの犠牲の上に成り立っている。

  • やっと現代寄りの話に。資本経済や大量生産、効率化について書かれている。本著で長ったるく解説しているが言いたいのは豊かになったけど幸せか?と話し。今一度幸せとは何かについて考えていく時代なのだと感じた、

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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