黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309249797

感想・レビュー・書評

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  • ネピドー遷都にまつわる話を知った時、え?そんなことが現代でも起こっているの?と驚いた。ミャンマー、不思議の国。その国の動きに、占星術や数秘術、呪術が潜んでいることはニュースを読んでいるだけではわからない。裏側を知ることは、いつも面白い。

  • ふむ

  • なぜ、国家元首の誕生日は最高機密なのか――?日本では「敬虔な仏教国」として知られるミャンマーだが、その内実を読み解くには占星術や呪術、数秘術、手相術、ウェイザー(超能力者)信仰など、今も人々の暮らしに息づく「おまじない」の理解が必要不可欠だ。政治家の権謀術数に利用される黒魔術、予言通りに最高権力を得たアウンサンスーチーと国軍の水面下での攻防、謎のネピドー遷都の背後にあるもの、そしてクーデター計画で密かに作られた「呪いの人形」の存在・・・。大統領、国軍最高司令官から市井の人たちまでを幅広く取材し、文化人類学的手法を駆使した斬新な切り口でミャンマーの現代政治をスリリングに描いたノンフィクション。
    タイトルが面白いのと書評が良かったので読んでみた。正直ミャンマーに関しては元ビルマでスーチーの国というお粗末なイメージしかなかったのですが、分かりやすく歴史が書いてあり何となくは流れをつかむことができました。そしてミャンマーでここまで私たち近代日本人からしたらびっくりするレベルでの占星術や占いが大きく扱われているとは知らなかった。政治にも関連するってすごいな・・・こちらからしたら全く理解できない選択も、数字のせいとかになってしまうわけでしょう?恐ろしすぎる。外交官たちはこういうの知っているのかなと心配になった。鎖国時代の日本もこんなイメージで海外からは見られていたのかもしれない。著者はテーマを黒魔術に置きながらも基本は信じていない(笑)ので、冷静に物事を論じている姿勢に好感を持った。

  • 本の装丁やタイトルの字体は読者に若干いかがわしい印象を与えるが、占星術という言葉に対する私たちのイメージを上手く表している。しかし本書の中身は真っ当なミャンマー論である。占星術が伝統と文化の1つであり、政治上の決定が占星術の影響下にあると言われるミャンマーについて、新聞記者としてミャンマーに駐在していた著者は占星術をキーワードにミャンマー文化や政治を論じる。

    政治家の顧問を務めるという占星術師の発した「占星術は科学なので、予言は外れることもある」という言葉に著者は戸惑う。しかし同じ占星術師が「全てを知るのは仏陀だけ」と言うのを聞いて、はたと気付く。仏教徒である(多くの)ミャンマー人にとって宗教は絶対の真理である。一方、科学は完全無欠の真理ではないので間違いもある。科学である占星術には完璧な予言は無理なのだ。

    予言が外れても堂々としている占星術師に著者はエコノミストの姿を重ねる。

    「私はミャンマーの占星術師に日本のエコノミストを重ね合わせることがある。メディアの求めで「この1年」の株価や為替の年頭予測をするエコノミストだ。僭越ながら、当たるも八卦当たらぬも八卦。1年後には、大外れしても恥じらうこともなく再登場し、また「この1年」の予測を垂れる。メディアはエコノミストの「権威」を借りてニュースを紡ぐ。」(124ページ)

    エコノミストを評論家(や学者)に置き換えて読むこともできるだろう。にもかかわらずミャンマー人は、占星術師が出す山のような予言のうち1つでも2つでも当たれば凄いと感じるらしく、著者は彼らの態度を測りかねていた。

    ところが「自身が大病を患う年齢」を言い当てた予言に思い致り、こういうことだったのかと得心する。幼少の頃から占星術に馴染むミャンマー人が占星術を凄いと感じるのは自然なことなのだろう。

    占星術に必要な生年日時は黒魔術にも必須の情報で、それゆえ政治家は黒魔術の対象とされるのを避けるために正確な誕生日を公表しないのだという。占星術が生活の一部であるミャンマーでは、政治に占星術が入り込むのもむしろ当然である。だからこそ、「黒魔術を恐れて」という理由を政治家が否定するのが却って不思議なことに思える。

    取材が仕事である著者にとっては当然なのだろうが、本書は当の政治家やその家族、占星術師などへの丹念な取材に基づく。大真面目に占星術の正当性を述べ立てる占星術師の言葉に時々笑いそうになるが、大なり小なり似たようなことは日本にもあるのではないか。さすがに政治に占いが染み込んでいることはないと信じたいところだが。

  • 2021年 45冊目

    本も雑食です。
    図書館でふと気になり、「はじめに」を読んでみると大統領の誕生日がトップシークレットの国だそう。なんだそりゃ??と読んでみました。

    「ミャンマー」。
    行ったことは無いし、行く事もないかもしれません。そう言えば、昔「ビルマ」と言う国から「ミャンマー」に変わったと言う事を聞いたことがある。

    「ビルマ」と言えば「ビルマの竪琴」くらいしか知らないけど…。

    題名は黒魔術なんてキャチーだけど、そういう占星術や数秘術とミャンマー政治との繋がりをきっかけにミャンマーの政治をみていくという、いたって真面目な本でした。

    世の中知らないことだらけ。

    そして、私がこの本を読んで一番驚いた事には、ミャンマー人の名前には苗字がないそうです。

    「アウンサンスーチー」さんは「アウンサン・スーチー」でも、「ア・ウンサンスーチー」でもなく「アウンサンスーチー」さんなのです。

    英語でも中国語でも苗字は当たり前にあるので、外国人も苗字はあるものだと思ってました。

    はぁ~~。世界は広い。




  • ミャンマーの信仰常識がわかった

  • ネピドー遷都を占いで決めたっていうのは聞いてたけど、要人の誕生日が国家機密とか想像以上に政治と占いが密接に関わってる。

    傍から見ると笑ってしまうが当事者はいたって真剣だし、大昔はどの国もそれが普通だったよなと。アウン・サン・スー・チーみたいに信じない人もいるみたい。

    今クーデターで大変だろうけど、ミャンマー訪れたとき人懐っこくて優しい人しかいなかったから早く日常が戻ってほしい。

  • 自分がミャンマーで仕事をしていた2003年〜2004年頃、ネウィン、タンシュエ、キンニュン、スーチーらがこのような占星術に振り回されながら政策闘争やクーデターが起こっていたとは。あの頃のミャンマーに抱いたノスタルジーと相まって、読後に不思議な感覚がした。
    当時、ヤンゴン市内の湖の畔のホテルのアンティークショップでお土産に買った占い古書が手元にある。何が書かれているか、誰の手に渡ってきたものか不明だが、歴史を動かす一つのアイテムだったのかもしれない…
    今も期待されるような経済成長を遂げられていない最後のフロンティアは、このような裏側の文化が理由と考えるとメイクセンスである。

  • 【静大OPACへのリンクはこちら】
    https://opac.lib.shizuoka.ac.jp/opacid/BC03146816

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著者プロフィール

1961年生まれ。ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員。アフガン、イラン、ミャンマー報道でそれぞれボーン・上田記念国際記者賞候補。著書に『イランはこれからどうなるのか』、『未知なるミャンマー』ほか。

「2020年 『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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