デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309252506

感想・レビュー・書評

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  • 世の中に氾濫する“科学的におかしい”健康になる為の科学について。
    主にイギリスでの当時の現状だけど、日本でも問題になっていること。
    大半は実験してみればおかしいとわかるんだけど、その疑問を最初に持てないからこそ問題だと。
    問題なのは科学信仰で私達はデータが出てくるとそれを精査することをせずにちょっとしたデータやらなんやらを信じすぎてしまっている。
    あと、製薬会社とかがそのデータをミスリードさせる手口も横行している。
    公表してくれないデータとか、どこぞのマスコミと同じだってことだけは知れ渡ってきているみたいだけど。
    そういったことに警鐘を鳴らしてくれている本。

    まあ自分が踊らされてないかと言われたら踊らされまくってる自覚はある。

  • 再読してみました。
    ゴールドエイカー先生はぐちっぽいですねえ。

    読んでよかった点は
    ・肌の保湿はワセリンでじゅうぶん
    ・イギリスにもばかっぽい代替医療の流行がある
    ・研究が載っているからといって信用してはならない。
     データの積み重ね、相互批判、方法論などを精査する
    あたりでしょうか。

  •  健康にまつわるイギリスの擬似科学事情がわかる。どこの国もおんなじで,テレビや新聞等のメディアが,ねじ曲がった「科学」を広めて社会に悪影響を与え続けている。デトックス,脳エクササイズ,化粧品,ホメオパシー,栄養至上主義,サプリメント…。製薬企業のごまかし,不正にも触れる。かなり痛烈にこきおろすので,反感を持ってかたくなになってしまう人もいるかもしれない。だがまだ深入りしていないなら,一読の価値はある。
     脳エクササイズって,頸動脈のすぐ上にある「ブレインボタン」をマッサージすると脳が活性化されるとかいうインチキで,これがイギリスでは公立学校に広まっているのだからすごい。MMRワクチンが自閉症の原因と騒がれて,接種率が大きく低下したことにもびっくり。
     代替医療にはプラセボ効果しかないことが実証されているのに,関係者はそれを認めたがらない。プラセボ効果があるならいいではないか,という声もあるが,標準医療を受ける機会の損失は深刻。何より,代替医療は人体に関する誤った理解を植え付けてしまうのがまずい。誰もが真実を知るべきだ。はっきりと効果があることが分かっているプラセボを,医師が使いたがらないのは,患者に嘘をつかない医療倫理があるから。代替医療家がしているように,聞いて心地良いデタラメを提供してあげることはできない。
     南アフリカに広がるエイズ否定論や抗HIV薬批判には驚いた。エイズなどという病気はでっちあげだと大統領がいたり,エイズに抗HIV薬は効果がなくむしろ毒で,適切な栄養が有効な治療になると主張する保健大臣がいたり。それを吹聴する西洋人がいて,帝国主義以来搾取されてきたアフリカを西洋がさらに食い物にしていると入れ知恵している。当事者が,そういう陰謀論に傾いてしまうのは,無理もないところもあるのかもしれない。
     科学をきちんと伝えるべきメディアがその役割を果たしていない。「噛み砕かなくては」「興味をもってもらわないと」という態度によって,馬鹿げた話,大発見・大発明の話,隠れた脅威の話の三種類しか科学記事にならない。まっとうな科学では,このような種類の結果が出ることは稀で,結局ニュースソースは怪しい科学者か科学者もどきになってしまう。
     科学的・統計学的な手法は,錯覚,直感といった人間の思考の欠点を克服する為に生まれてきた。その人類の成果が多くの人々に届いていない。
     MRSA汚染でっちあげ事件では,警鐘を鳴らしたいメディアが,医療機関からMRSAを検出した博士を英雄に仕立て上げたが,結局その検査はデタラメだったことが発覚して幕を引いた。その「必ず陽性の結果をくれる研究所」の博士に学位を出したのは,ディプロマミルだった。その博士も,さんざんメディアに持ち上げられて使い捨てされたかわいそうな被害者だ。話がどんどん大きくなっていくのを,不器用な彼は止めることができなかった。発覚後,交通事故で死んだ博士が,借金まみれだったという記述は痛々しい。
     舌鋒鋭い著者だが,「最後に一言」で,擬似科学サイドに対して敗北宣言している。受け入れられやすさでは自分に勝ち目がないと。ただもっと多くの科学者がその良識を発信し,既存メディアのいい加減さを暴いていけば,よりよい社会になっていくに違いない。徐々にかもしれないが,期待したい。

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