- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309400334
感想・レビュー・書評
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古今東西のうち今のない古の東西から集めたちょっと不思議な奇譚・異譚の伝聞集。著者の、日本、東洋、西洋の文献への博識にまず驚かされるのと、庶民の雑話がこうして記録として残っている、残そうとする文化がかなり古代からあったのだなぁと感心。こういった不思議話には英雄や為政者たちの語る政治史からは知ることができない、庶民たちの生き生きとした生活史がうかがえて楽しい。
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長年、読んでみたいなあ、と思っていた人の本を、初めて読むのは愉しいものです。
それで、期待に違わず楽しめると、なおのこと。
だんだん歳を取ってくると、「あんまり悠長に先送りにしていられないなあ」と、思うので。
恥ずかしながら読んだことありません、という系統の作家さん、読んでいきたいなあ、と。
どうやら、1976年に新聞に連載された文章のようです。
澁澤龍彦さん、当時48歳くらいのようですね。
それなりに裕福な家庭に生まれ、エリートで、兵隊に行く前に戦争が終わり、東大仏文を経て新聞などへの就職は失敗。
大学院に進んで肺病を病み。就職をあきらめて、翻訳・評論等の文筆業に。
サドの翻訳紹介、ダークサイドな人間性やらセックスの研究や紹介、かと思えば博覧強記な教養を素に、硬派な評論エッセイ、そして晩年は小説まで。
三島由紀夫さんとの交流や、サドやら悪徳の栄え裁判やらで、なんとなくドロドロした印象がありますが、チョット変態さんだったのかもですけど、すごいインテリにして文章家だった。。。
と、まあ。
昔から、本屋さんで、澁澤さんの本は、背表紙とか解説とか、いっぱい見ていたので。上記のようなことは知っていたんですが。
なかなか、なんとなく読む機会が無くて、実は今回が、初・澁澤龍彦さんでした。
もうとにかく、お化けやら妖怪やら超能力やら、そういうことを、楽しそうに紹介するエッセイです。
一つ一つ、そんなに執拗に書き込むわけじゃなくて。
「ポルターガイスト現象っていうと、西洋だとこういう例がありますね。ところで日本だと、こういう書物にこういう記述があって、同じような現象なんですね」
と、いうくらいの感じの短文。それが、49個並んでいる。
割と気軽にすらすらっと楽しめます。
●肉体から魂が出て、また戻る、みたいな現象
●頭が二つある蛇
●鏡の不思議な世界
●人形が人格を帯びるみたいなこと
●屁で音楽を奏でる芸人
●ウブメという妖怪?産む女なのか、鳥なのか
●戦国時代の幻術士・果心居士
●天狗の話
●人造人間の話
●不死の人
●黒ミサ
などなど、と言った物事を、単純に解説したり。
あと、「×世紀の×国ではね、こういう書物にこういうことが書いてあって」
と、いうような、「へ~」っと言うオモシロ話が満載。
それが、タイトル通り、古代から現代までの、日本、中国、朝鮮、欧州、アメリカ、などなどの事例が実に博覧強記。
一方で、「だからなんなのさ」というと、それ以上でも以下でもありません。
ある意味気楽な趣味の本です。
僕は、特段に不可思議現象のマニアではないんですが、最近、水木しげるさんを読んだりしていて、「そういうのも面白いよなあ」と、とっても浅いレベルでの好奇心がちょこっとあったので。
(割とこれまで、基本はリアリズムの理性主義な読書が多かったので。ちょっとこういうのも、面白いですね)
一方で、澁澤龍彦さんの文章っていうのは、なるほど、実にさりげなく上品にして簡潔。日本語使いとしての深い実力は、かいま見れた気がします。
なるほど、小説家っていう訳じゃない文章なんだなあ、と思いました。
何ていったらいいか、自己主張というか、目立とう精神という、書き手の自身のタレント意識性みたいなものが、薄いなあ、っていうか。
小説家さんの小説じゃない文章って、やっぱりそういうものが感じると思うんですけど。
と言って、新聞ジャーナリズム的な文章とも違うんですけど。
やっぱり、平易透明な評論的な文章っていいいますか。
そういう、文章レベルでは奇をてらわない上に、とにかく別段、衒学的じゃなくて、楽しそうに淡々と、アヤシイ雑学を棚から出して、見せてくれます。
そういった、肩の力の抜け具合。これはなかなか、大人の芸ですね。
なんというか。大正昭和モダン建築な喫茶店で、実に美味しいコーヒーをブラックでいただいて。添えてある小さなビスケットも、何だか上質でした、みたいな。
それで、主食になる訳でもないんですけどね。
気負わぬ軽さが漂う、そんなホッとする感じ。
これはこれで読書の快楽、澁澤龍彦さん、今後も楽しめそうです。 -
「澁澤龍彦好みの」不思議なお話が49あります。時折思い出したようにチラチラと読み進めるのが至福なのです。他の著作で聞いたことがあるエピソードもないとは言えませんが、やはり不思議は魅力を孕むものです。何度読んでも「面白いなぁ」となってしまいます(笑)。今の時代でも、そっと目をつぶって夢想に耽けること、想像力逞しく不思議を享受することって、大切です。
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短編を想像したら肩透かしくらった。事実をたんたんと述べてる感じ。
文章の書き方は好きだった。 -
新聞に連載していた古今東西の不思議なエピソードを五十篇収録。
本人が解説で言っている通り書き流した感はあるが、二人同夢やうつろ舟、飛鉢や人造人間など、その後創作のモチーフになるものがたくさん紹介されている。藤本蒼猪の挿画が良い。 -
世界の不思議な話をまとめた本。著者が渋沢栄一の親戚で、SMの概念を日本に持ち込んだとかいう人らしく読んでみる。
著者の膨大な知識が窺い知れた。
北アルプスの双六谷は四五六谷として、顔がぐにゃりと曲がる不思議現象として登場する。 -
タイトルにある通り古今東西の怪奇な話を集めた本。
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古今東に数多ある不思議の物語を紹介する本。元々新聞に連載されていたものなので、軽い読み物として書かれていますが、背後に膨大な知識が広がっていることをうかがわせます。また、出展となる書物も紹介されているので、ただ単なる雑学書と違う趣きがあります。そして読んでみたい本が連綿と広がり増えていくのです。
ここで紹介されている事項は、ポルターガイストや幻術、栄光の手や天狗、百鬼夜行などなどお馴染みのものも多く、ひとつの種から様々な花が咲くものだと思い知らされます。
澁澤龍彦の本は興味もちつつ余り手を出していませんでしたが、これを機にどんどん読んでいきましょうかね。 -
鬼神を使う魔法博士のこと/肉体から抜け出る魂のこと/ポルターガイストのこと/頭の二つある蛇のこと/銅版画を彫らせた霊のこと/光の加減で見える異様な顔のこと/未来を占う鏡のこと/石の上に現れた顔のこと/自己像幻視のこと/口をきく人形のこと/二人同夢のこと/天から降るゴッサマーのこと/屁っぴり男のこと/ウツボ舟の女のこと/天女の接吻のこと/幽霊好きのイギリス人のこと/古道具のお化けのこと/鳥にも化すウブメノこと/リモコンの鉢のこと/キツネを使う妖術のこと/空中浮揚のこと/トラツグミ別名ヌエのこと/幻術師果心居士のこと/天狗と妖霊星のこと/悪魔と修道士のこと/二度のショックのこと/迷信家と邪視のこと/女神のいる仙境のこと/神話とSF的イメージのこと「栄光の手」のこと/骸骨の踊りのこと/天狗にさらわれた少年のこと/石の中の生きもののこと/海の怪のこと/隠れ蓑願望のこと/破壊された人造人間のこと/腹のなかの応声虫のこと/百鬼夜行のこと/アレクサンドロス大王、海底探検のこと/無気味な童謡のこと/大が小を兼ねる芸のこと/もう一人の自分のこと/ガマが変じて大将となること/女護の島のこと/不死の人のこと/遠方透視のこと/黒ミサに必要なパンのこと/さまざまな占いのこと/百物語ならびに結びのこと