ちんちん電車 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407890

感想・レビュー・書評

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  • 作者が亡くなる3年前に書かれた、東京の路面電車についての随筆。和歌山生まれ和歌山育ちの私が昭和40年代に、そのほとんどが廃止された「ちんちん電車」のことは何も知らないのであるが、和歌山を走っていた「ちんちん電車」(正式名称:南海和歌山軌道線)の微かな記憶と重ね合わせながら読み進めた。若いころから放蕩していた人だけあって、いろんな食事処の記述があり、どれも旨そうだ。最近の東京の店は、さして旨くもないのに行列づくりにだけ精を出すようなところが多く閉口するので、とても羨ましい。優しい語り口につられて品川から浅草までの道のりを、昭和の大人気作家と小旅行を楽しむことができた

  • 獅子文六さん(1893~1969)は、本名の岩田豊雄の名前で書かれた「海軍」(1942年)を随分前に読んだ記憶があります。この「ちんちん電車」(1966)は、都電が大好きだった著者が、1967年から廃止の方向になり、あらためて都電の名残を惜しみ都電の街を目に焼き付けた・・・、そんな作品だと思います。「動きまァす、チン、チン」、二つ鳴れば発車、一つだと停車。関東大震災、大空襲の二度の大災厄に耐え、しかし、東京オリンピックに向けての建設的破壊が「都電」に引導を渡したことになったのでしょうか。荒川線頑張れっ!w

  • 獅子文六が実際に都電(ちんちん電車)に乗り、品川から新橋を経由して銀座から京橋、日本橋、神田、黒門町、広小路、上野、ここから別の系統に乗り換えて浅草までを散歩する。車窓を流れる風景はそのまま戦前の獅子文六が経験した過去の風景に変わる。少年時の記憶や旨いものの店を思い出す。在りし日の東京の景色が甦る、ワタシも戦前のこんな時代の東京を散歩してみたかったなと思うエッセイ集。解説にあったが、今も残る都電荒川線は王子電車として出発したものだから生粋の「ちんちん電車」はもう東京にはないそう。昭和41年に書かれた本。

  • 獅子 文六先生、電車好きなグルメですね。楽しそうで微笑ましい。戦前ののどかな東京も垣間見えて心和むエッセイ集です。

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著者プロフィール

1893─1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。『コーヒーと恋愛』『てんやわんや』『娘と私』『七時間半』『悦ちゃん』『自由学校』(以上、ちくま文庫)。『娘と私』はNHK連続テレビ小説の1作目となった。『ちんちん電車』『食味歳時記』などエッセイも多く残した。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章。


「2017年 『バナナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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