篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)
- 河出書房新社 (2007年12月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309408804
作品紹介・あらすじ
戦後大衆文化に放たれた、激烈なるエネルギー-康芳夫(マルチプロデューサー、虚業家)、石原豪人(挿絵画家、画怪人)、川内康範(月光仮面原作者、生涯助ッ人)、糸井貫二(全裸の超・前衛芸術家)。彼らケタ外れの偉人たちを追う伝説のインタビュー集。裏の昭和が熱く妖しくよみがえる。
感想・レビュー・書評
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戦後の大衆文化に大きな足跡をのこした四人の人物をインタヴューしている本です。
本書でとりあげられているのは、マルチ・プロデューサーの康芳夫、挿絵画家の石原豪人、『月光仮面』の原作者である川内康範、そして前衛芸術家の「ダダカン」こと糸井貫二です。編集長の赤田祐一の尽力によって、雑誌『クイック・ジャパン』(太田出版)で連載されることになった記事をまとめたもので、戦後の文化史の興味深い一端が明らかにされています。
康芳夫は、沼昭三の『家畜人ヤプー』の出版を実現する一方、テレビの世界での仕掛け人として活動していました。川内康範も、テレビの世界で生きた文化人ですが、民族運動家としての顔をもつとともに、アナーキストの竹中労とも親しく交流した人物です。彼らの「鵺」的な人物像は、「思想」という観点から切り込むことはむずかしく、著者のようなサブカルチャーに造詣の深い著述家が正面からぶつかっていくことで、その人物像の一端が見えてくるのかもしれません。
「ダダカン」は、読売アンデパンダン展にも登場する前衛芸術家で、その活動内容は赤瀬川原平の著書でも紹介されていますが、あまりにも世間的な常識を超えた活動と、その頑なな取材拒否のスタンスのために、やはり「思想」や「美術批評」の対象になりがたい人物で、著者がインタヴューの実現にこぎつけるまでの経緯も紹介されて、読み物としておもしろい内容です。そしてその素顔は、やはりというべきか、シャイな人柄を感じさせるものでした。 -
偉人の枠を超えた4人の「怪人」たち――康芳夫(マルチプロデューサー、虚業家)、石原豪人(挿絵画家、画怪人)、川内康範(『月光仮面』原作者、生涯助ッ人)、「ダダカン」こと糸井貫二(全裸の超・前衛芸術家) ――へのロング・インタビュー集。
雑誌に載ったインタビューを集めた本というと、ふつうは10~20人分くらいで1冊になるものである。それが、この本ではたった4人だけ。つまり、一人ひとりへのインタビュー内容がそれだけ濃密なのだ。
掲載誌が赤田祐一時代の『クイック・ジャパン』で、一人につき50ページとかの破格の紙数だったからこそ可能となった濃密さである。
4人が4人とも、波瀾万丈というか破天荒な人生を歩んできた人たちであり、しかもキャラ的にすごく「濃ゆい」メンツなので、そのライフストーリーをたどるだけでも面白い。とくに、川内“耳毛”康範の語る生涯は強烈だ。
くわえて、竹熊氏のインタビューがじつにうまい。入念な準備をし、手際よく話を進め、相手に対する礼儀を失せず、それでいて突っ込むべきところは突っ込んでいる。
インタビュー内容がほぼそのまま活字になっている感じなので、インタビューの進め方のお手本としても読める。
竹熊氏には、またこういう読みごたえあるインタビュー集を出してほしいところ。
てゆーか、氏は最近インタビューの仕事ってやっていないのではないか。少し前に「たけくまメモ」で「(フィギュアスケートの)荒川静香をインタビューしたい」と書いていたが、あれはけっきょく実現しなかったのだろうか? -
インタビューによる評伝集
20世紀後半文化史の一面
サブカルチャーという言葉の定義はあいまいだが本作にはこの表現がふさわしい -
康芳夫〈こう・よしお〉、石原豪人〈いしはら・ごうじん〉、川内康範〈かわうち・こうはん〉、糸井貫二〈いとい・かんじ〉のインタビュー集である。竹熊の作戦勝ちともいうべき内容で、「謀(はかりごと)を帷幄(いあく)の中に運(めぐ)らし勝つことを千里の外(ほか)に決す」(漢書)意気込みすら窺える(笑)。
https://sessendo.blogspot.com/2018/08/blog-post_32.html -
新書文庫
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もう一度読みたいので、購入せねば。
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辞書の中の篦棒という言葉にはあんまりいい意味は無いけれど、でもあえて篦棒な人々としか言えなかった、というお詫びから始まる戦後カルチャラルスーパースター列伝です。都築響一「独居老人スタイル」からの遡り読書になります。とにかく強烈。この匂い立つようないかがわしさと神々しいばかりのポジティブさは、逆に現在の滅菌された(されすぎた?)空気を気にさせてしまいます。筆者とほぼ同世代の昭和の小学生にとっては、このキテレツヘンテコな感じはサブカルチャーというよりメインカルチャーだったかも…と当時を思い出しました。「俗の中の聖」「奇の中の貴」「虚の中の真」康芳夫、川内康範、石原豪人、糸井寛二、彼ら偉人達の放つ光はそれぞれがそれぞれの戦争体験でアナーキズム的意志を獲得したからではないか、と筆者は「あとがき」で指摘しています。たぶん、今の文化の胡散臭さゼロ時代はそんな戦争体験世代の高齢化とオウム事件に蓋したことによって生まれているのかも。「サブカルチャー昭和は遠くなりにけり」
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[ 内容 ]
戦後大衆文化に放たれた、激烈なるエネルギー―康芳夫(マルチプロデューサー、虚業家)、石原豪人(挿絵画家、画怪人)、川内康範(月光仮面原作者、生涯助ッ人)、糸井貫二(全裸の超・前衛芸術家)。
彼らケタ外れの偉人たちを追う伝説のインタビュー集。
裏の昭和が熱く妖しくよみがえる。
[ 目次 ]
康芳夫―現世はすべて神の遊戯
石原豪人―画怪人かく語りき
川内康範―憎むな!殺すな!赦しましょう!
糸井貫二―ダダの細道
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
文庫本として、再読。
一度目は、康芳夫さんのお話が大好きで、その印象が
残っていたのだが再読すると、その他の人、そして
当時35歳の竹熊さんの取材・文章力が素晴らしく感じます。
◆康芳夫
家畜人ヤプーを、東映の中島貞夫が映画化希望していたそうな。
残念な企画だ。今こそ、誰か名乗りを上げないものか。
◆川内康範
民族主義者、右翼のイメージがあるも、朝鮮人酷使虐待した日本の
実態、たとえ押し付けられた憲法だとしてもいいところは利用すべし、
とくに第一条と第九条は死守する、という考え。
こういう右の人って、最近いないなぁ。
また、アメリカのKKKのような連中はどうしようもない、と
言っているけど、今の日本の現状を見ると同じと考えられるのでは
ないでしょうか。
◆糸井貫二 ダダカン
ダダカン、かっこいい!毎月2万円で生活。
芸術展で今日、ダダカンが来るかもしれないと言われたら、みんな
帰らないで残っていた(気に入った作品があれば、敬意を表して
服脱いで卵のパフォーマンスをする)とか、見たかったなぁ。
取材を一切断っていたダダカンに、お手紙で交流する
竹熊さんが素敵でした。