完本 酔郷譚 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
4.06
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411484

作品紹介・あらすじ

孤高の文学者・倉橋由美子が遺した最後の連作短編集『よもつひらさか往還』と『酔郷譚』が完本になって初登場。主人公の慧君があの世とこの世を往還し、夢幻の世界で歓を尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • 飄々としたテンポで進む怪奇譚。趣向も性交もすべてが飄々としているが、そこかしこに古の粋が隠されているのが興味深い。

  • 桂子さんシリーズ最終作品、読み終わってしまいました…面白かったし大好きなんだけれど、この物語が終わってしまって悲…この物語を読んでいると倉橋由美子はこの後も慧君の物語や、そのお父さん世代の俊さんや剛さんの物語、そしてもしかすると入江晃と桂子さんの物語を書く意欲はあったのではないかと感じてしまう。そう思ってしまうと倉橋由美子は早すぎる死…と残念でならないし、桂子さんよろしく夢の世界、ないしあの世で続きの作品を読ませてくださいよ!!という気持ちになる。

    特に好きだったのは、緑陰酔生夢。慧君は相変わらずいい男なのでモテまくりますし、『幻想絵画館』のクレーの「選ばれた場所」(確か)の王女様に求婚したように、今回もMAKIさんと結婚したいとか言っております。この軽薄な感じが晃さんとは違う…と思っておりますが、晃さんの若い頃も気になります…

    それから解説の松浦寿輝氏による「キメラ的怪物」がほんとそれな…??という感じで、改めて倉橋由美子の魅力を言語化したものとして受け取りました。
    …空想旅行を記述する倉橋の散文は「貴族的な優越」と「自然性の拒否」によって定義されるダンディズムの極致である。日本近代文学の作家で、倉橋ほどダンディな文章を書いた作家は、ここでもまた男女を問わずという註記を添えておくが、まず皆無というほかはない…
    …「女」でありかつ「ダンディ」でもあるような個体が存在しうるとすれば、「女」それ自体の定義が変わるほかない。ごく単純に、倉橋由美子は「女」の定義にラディカルな革新をもたらした作家なのかもしれない。そこには「自然的」であることに自足した旧態依然たる「女流文学」もなく、「貴族的な優越」とは無縁のフェミニストの肩肘張った自己主張もない。しかもなおかつ「女」であるところの何ものかがそこにいる…
    いやまさにこれなんです!女でありかつダンディである…かっこよすぎる…サウイフモノニワタシハナリタイ…倉橋由美子の他の作品、スミヤキストQやアマノン国、大人・老人のための残酷童話など借りてきて読もうと思います

  • ファンタジー…?いろんなカクテルといろんな女(またはそれに類するあやかし)が出てくる。和歌や漢詩もたくさん。教養が足りずよくわからないのだが、画を見ているような感じ。

  • 少しずつ読んだ。現実と幻想を行き来する感覚が心地よく、読み始めは慣れなかったものの、今は惜しい気持ちでいっぱいになっている。九鬼さん、真希さんが好き。話としては「植物的悪魔の季節」が、タイトルも最後の一文も含めて、一番好き。「髑髏小町」では怪奇と可憐が入り混じっていて、こちらもとても好き。

    相も変わらず描写が美しい。淡々としているようで、一切無駄がない。特に好きな箇所に、付箋をはりながら読めばよかったと後悔。大事に読み返したいと思う。

  • 特別な体験なんて何も無くて良いから、ただ愛する人と酔いしれながら歓を尽くしたいです。

  • 主人公は言ってしまえば欲だらけなんだけど穢れや厭らしさを感じない。
    有り余る教養を持つ人はこの世をこんな風に楽しんでんのかな。

  • 高知出身の作家さんを追う第二弾
    フィクションに浸りたくて。

    --

    途中まで臨み方が分からなくて、途中で止めようかと思ったけど冥界往還記辺りから素敵に楽しくなってきて。主人公をはじめ出てくる人物はみんな謎だけど、話が重なっていくうちに関係性がなんとなく出てくるのがいい。誰かがいないとちょっと寂しくなるくらいに。

    フィクションらしく不思議な世界観であるので、自分の中で「そんなことあるわけない」「そうあるべきでない」とストッパーがかかってしまうのが悔しく思われた。(描写は美しく、その様子をありありと想像するに十分なものだったけど。)人生経験の不足もあろうかと思いつつ、もっと自由にありたいなと思わされた。想像力というより謎を謎のままで許容する力があると、また別の楽しみ方ができるのかなと。

    裏表紙にある通り「官能的」。
    その官能的な描写から、一面的な意味しか受け取れなかった気がするのも悔しい。作者に見えているものはもっと別にあるように思われた。

    漢詩や和歌がふんだんに使われているのは(分からないものの方が多いけど)好みだった。
    能の卒塔婆小町が好きなので、コマチさんの話も好き。

    --

    バーに行きたくなる
    表紙がとても好き。持っていたい本。

  • 主人公の青年が、魔酒の威力で現実の世界から離れ、浮世めいた幻の欲望の世界に浸る。書き方によると卑猥な内容になってしまうのかもしれませんが、とにかく表現、日本語が美しく下品さを全く感じない。
    霞がかかったようなふわふわとした世界観で、私自身、どこか架空の世界にいるような気分になりました。短い短編集でその話ごとにお酒が出てきて、ほろ酔い気分な読後感。
    多分、このような小説は初めて読みましたが、こういう話も好きです。 

  • 描かれている妖しい世界と登場人物が魅力的。漢文や古文の素養があったらもっと楽しめたかも。

  • 倉橋由美子の多分最終作.
    初出はサントリークォータリー.
    桂子さんの孫の慧君が,謎のバーテンダー九鬼さんのつくる怪しいカクテルを飲んで,時空を超え,歓を尽くす,というお話たち.歓のつくし方がまた単純でなく凝っている.
    どれも味が濃くて,なかなか一気読みできない.一年弱かかって,長すぎるこの連休にようやく読了.

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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