日輪の翼 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.80
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本棚登録 : 158
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411750

感想・レビュー・書評

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  • 路地から冷凍トラックの荷台という空飛ぶ乗り物で飛び立った7人の老婆(オバ)と、それを運転する4人の若衆による巡礼のロードムービー。
    自分からはかけ離れた異世界における倫理や死生観のように感じる一方で、おそらく同国人だからこそ僕の感情に直に触れてくるように共感が呼び覚まされざるをえない、という路地ものあの感覚は、路地と外界の境界が接触し続ける本作では、より一層色濃く感じられる気がする。
    馴染み深すぎてもはや嫌いなくらいな感覚だったはずなのに、その空気感に包まれたときに心の奥底ではいつのまにか安心を感じていることに気がついてハッとする。
    そして物語の時代がETが公開された頃であるという「近さ」になぜか衝撃を受けた。

    冷凍トラックの荷台から7人の老婆がわらわらと出てくるイメージは滑稽でグロテスク。

  • いやー、まず、読みにくかった(笑
    こんなこと書いちゃ推薦者に失礼かもしれないけど、まぁ、それも感想、ということでできるだけストレートに書きます。あしからず。

    概要は、盗んだ冷凍トラックとワゴン車で、路地裏で暮らすばーさん7人と若者4人くらい?(ここがよくわからんかったんだよな)が、日本中の霊場巡るお話。で、あってると思う(笑

    が、読みにくかった(二回目
    この本、基本会話が方言なんですよ。
    紀伊半島の方言から始まり、名古屋、長野、東北と回って東京にたどり着くんですが、その間の会話が、その地域ごとの方言で書かれるもんだから、何を言ってるんだか、たぶん3割くらいしか理解できなかった(笑
    なので、話の内容も、多分こうだろうな、と予想しながら読むしかなくて、小説読んでるのにひたすら読解力を試されてるような感じでした。まず、誰に話しかけてるのかわからない。そして、疑問文なのか言い投げてるのかがわからない。加えて登場人物のばーさんは、全員カタカナ五文字で○○ノオバ、若者も全員基本カタカナ(なぜか田中さんだけは田中さんだった)。しかも呼びかける時、「オバよ」「アニよ」と呼ぶもんだから、何をさしてるのか理解するのにまず時間がかかった。若者はちょいちょい入れ替わるし。気づいたら増えてるし。減ってるし。

    でもね、さすがに推薦図書なんですよ。
    最初読み始めた時は本当に読みにくくて泣きそうになりながら、それでも全部読もうとちょっとずつ(30分で20ページくらいしか進まなかった)読んでたんだけど。クセになる、ってこういうことなんだろうな、半分をすぎたあたりから読むのが止められなくなり、最後の方は歩きながら読んでました。あんなに読むの嫌だったのに。

    がしかしこれ感想難しいな。上でも書きましたが、多分僕、内容理解できてない(笑
    けど、とてもいい本だったことは間違いないです。最後東京で終わった時の清々しさと言い知れぬ寂しさは、読み終わって一日経ったけどまだなんか残ってますよね。万人受けする本ではないと思います。ぼくもたぶん、推薦図書じゃなかったら読まないです(笑

    なので、評価はあえてしません。出来ないですね。なんかこんな中途半端にしか理解してなくて星つけるのは、作品に対して失礼な気がする。そんな敬意を払いたくなる本でした。

    あと、そんなわけで心に残ったフレーズはちょっと読み出せないです。なので、この本を読む上でのキーワードを二つ、挙げておきます。
    「路地裏」「オカイサン」
    読まれる方は、この二つの単語の周りに何が書かれているか、感じながら読んで見てくださいな。

    最後に
    この本は、性描写がかなりのページを割いて書かれています。それも、甘ったるいベッドシーンではなく、基本買春関係で。暴力表現はありませんが、中学生には早いかな。高校生でも、ちゃんと読みきれるやつにしかオススメしたくないですね。

    がしかし、これ推薦した人、何でこの本を読もうと思ったのかを聞きたいですね。何度も言いますが、多分僕は、読まないです(笑
    そしてやっぱり僕のレビューは、長くなる(笑

    (おつ)

  • 神話みたいな話がロードムービーと絡みついて、なんとも言えない空気感だった。

  • これは危険。
    ぞっとするほど虚しく先が見えなくなったり、わけもわからず幸福な気持ちになったり。
    中上作品でこれが一番しんどかった。

  • 『千年の愉楽』に繋がる「路地もの」ですが、舞台は路地ではなく、主人公ツヨシが冷凍トレーラーに7人のオバを乗せて旅をするロードムービーな展開。憶測ですが、このへんは実際の歴史というか中上の背景にある被差別部落の歩み的なものを把握していないと、理解しづらい部分があるのかも。

    7人のオバは、路地が取り壊された後、おそらく与えられたはずの新しい住居・生活を拒否し、根無し草のように流転の旅に出ることを選んだのでしょう。ゆく先々で、乞食と間違えられたり子供に石を投げられたりしながらも、信心深い7人の老婆たちの、住む国を追われ各地に種のように散らばってゆく姿は、古い神々の貴種流離譚の趣もあり、中上の描く路地の「聖俗混淆」の世界観はここでも健在。『千年の愉楽』は、ひとつの神話の世界であったけれど、これもまた、路地を追われた神々の新しい神話なのかもしれません。

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著者プロフィール

(なかがみ・けんじ)1946~1992年。小説家。『岬』で芥川賞。『枯木灘』(毎日出版文化賞)、『鳳仙花』、『千年の愉楽』、『地の果て 至上の時』、『日輪の翼』、『奇蹟』、『讃歌』、『異族』など。全集十五巻、発言集成六巻、全発言二巻、エッセイ撰集二巻がある。

「2022年 『現代小説の方法 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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