掏摸(スリ) (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412108

作品紹介・あらすじ

東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎-かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 光が目に入って仕方ないなら、それとは反対へ降りていけばいい。
    眩しすぎるものに直面した時に思わず目を背けてしまう反射を意図的に行う強さを痛いほど感じた。

  • 一番、最初に思ったのは
    「なかなか木崎と再会しないなー」でした笑

    木崎は魅力的な悪のキャラクター性があって
    木崎との再会からは、のめり込んでました。

    まだ中村文則の作品は2作品しか読んでませんが、
    「銃」と同様の暗くどこか現状に
    自己陶酔してるような主人公が良き。

  • 主人公はスリ。描写の細かさが怖いくらいで、そうかこういうふうにやればいいのか(できないけど)と思わされるくらいの詳述っぷり。

    池袋、新宿東口あたりの景色が読んでて浮かび上がる。特に東口の丸ノ内線へ続く地下通路の階段あたりの描写など超細かい。
    あの辺たしかに居そうだよねー身なり良いのに職業不明な大人がうろうろしてる印象。

    終始描かれるのはドン底。ただ絶望は感じない。こうじゃない人生もあったかもしれないが、今をあるがままに受け入れ流されつつ過ごしていく主人公。ふっと現れる裏社会の怖い人や、儲け話に飛びつきややこしい仕事に巻き込んでくる同業者。
    子供に万引きさせるシンママ。DVのヒモ男。あたかも偶発的な事故のように消される政治家。

    伊坂作品の殺し屋小説を3段階くらい黒くして軽快さを排除した感じ。

  • 題名通り!読みながら掏摸体験できるほど描写がすごい!面白かったです

  • 自分が本当に強盗をしているかのような錯覚、緊張感を持ちながら読んだ。ちょっと心臓に悪い。

    何故か主人公に好感を持ってしまうけれど、きちんと子供の母親と関係を持ってしまうところが美化されてなくリアルな感じがしてまた良かった。

    お財布にはその人がどういう人間かよく表れるようだ。レシートはこまめに整理して余計なポイントカードは持たないようにしよう等とどうでもいいことを思った。

    主人公はアパレルや質屋で働けるくらいの目利きだ。作中に出てきたイタリアの服飾・生地メーカーロロ・ピアーナのコートは100-200万するようだ、見てみたい。

    久しぶりにもっとこの作者の他の作品も読んでみたいと思った。芥川賞作家。

    掏摸も王国も装画がのりたけという人のようだが、表紙の男女がそれぞれ主人公のようには見えない…。その幼少期という感じもしないし…誰なんだろう。

  • 「悪に染まりたいなら、善を絶対に忘れないこと」

    演技の世界では悪役を(いかにも悪いやつ)として演じることで、そいつの「悪さ」が矮小化されちゃうという現象がままあります。

    「俺は悪いんだぞ」と露骨に見せてくる人ほど「悪」としての深みはない。結果としての悪はあっても、「悪であろう」と演技すると、それは所詮「悪でありたい人」の演技であって、本当の「悪」ではないということ。

    本当の怖さ、恐ろしさは善悪や理解の彼岸にある。

    他者や世界は、二元論で簡単に片付かないはずなのに、人1人の理解や想像におさまらないからこそこの世は「戦う価値がある」はずなのに、ともすれば私たちは世界を、他者を「わかった」と思って生きることができてしまう。

    それは、世界に対して目を閉じている状態のように思う。

    目を開けば塔がある。

    もしもそこに塔が見えたなら。それは本当の意味で世界をあるがままにとらえている証左なんじゃないかと感じた。

    それは世界の与えるすべてを「刺激」として味わうことしかしない木崎には決して見えないものなのではないだろうか。

    だからあの500円は、その望み通りに誤差を生んだと信じます。

  • 運命に支配されている人生が怖いと感じた。この資本主義社会には圧倒的な強者と上下関係が存在し、庶民はある程度決まった道を歩んでいる。どれだけ自分のスキルを磨き、超人的な何かを手に入れたとしてもその道から抗うことは難しい。この小説から、そこに恐怖を感じた。
    今まで生きて来た中で考えたことのなかった部分に対して恐怖を抱いた。しかし、主人公は最後の最後まで自分のスキルを用いて抗った。美しさを感じるラストであった。

  • 「何もかも憂鬱な夜に」と書き方は似ているなと思った。
    佐江子の夢の件と、塔の件がこの小説の核にある。
    その上で、掏摸のかっこよさを描いている。最後なんかはあまりにもかっこいい。

  • 最初から最後まで面白かった
    最後はどんな着地するのか全く予想できなかった
    ちょっと最後だけ期待はずれだったけど姉妹作品で、その後のキャラクター達が描かれてるみたいなので納得
    台詞もオシャレでセンスがある。

  • 再読。やはり面白い!!!

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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