「悪」と戦う (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.73
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本棚登録 : 204
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412245

作品紹介・あらすじ

少年は旅立った。サヨウナラ、「世界」-ある夜、突如ランちゃんの前に現れた謎の少女・マホさん。彼女はランちゃんにある指令を出した。「"世界を守る鍵"である、あなたの弟・キイちゃんが『悪』の手先・ミアちゃんに連れ去られたわ。『悪』からキイちゃんを救い出すのよ!」「悪」とは、「世界」とは何なのか?単行本未収録小説「魔法学園のリリコ」併録。著者最高の話題作が待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の小説としては珍しくグイグイと引き込まれることはなかった。

  • 2019-3-20 2度目の読了
    大学生の時に読み、久しぶりに読み返した。うっすら覚えていた場面もあるけど、ほぼ忘れていて新鮮な気持ちで読めた。

    ぽんぽん場面が切り替わってなんじゃこりゃってなるんだけど、最後のマホさんとの別れ?の場面辺りでは理由は明確に自分でも説明できないけど、ぼろ泣きしてしまった。
    言葉にしたいけど、よくわからない。

    そして、最後のボス?がぬいぐるみな所、いろんな「世界」があって繋がっていることは証明できないけどある、みないなのが、浦沢直樹の漫画(ぬいぐるみの敵「PLUTO」、パラレルワールド「ビリーバット」)を彷彿とさせた。たまたまかな。

  • 3.5ぐらい。高橋源一郎だから文学なのだろうと思って読むけれどもポップな童話のような前衛的な感じが、どうにも掴めない。さようならギャングたちよりも話に流れと着地点はあったと思うけど。「悪と戦う」すごく深いことを言っているようで、実は抽象的すぎて、抽象的なアクと概念的にタタカウので、くるくる変わる世界に翻弄された。
    姿を変えてやってくるミアちゃん、ランちゃんはガッコの教室で、天才殺し屋でも、ゴミ置場でも戦うのです。世界の隙間に落ちたキィちゃんを救うために、悪と戦う。悪ってなんだ。世界ってなんだ。結局愛は世界を救うのか。
    行間の☆☆☆や雪のような✳︎✳︎✳︎を、ごく自然に文章に織り交ぜてくるところってすごいなと思いました。1時間くらいでサクッと読めた。

  • 小説家の”わたし”には子供が二人いて、一人は言葉の発達が早く、一人は遅い、、、なんだか実体験を交えた話なのかなぁ、と思いつつ読み進めていくと、途中から急に精神世界というか、仮想現実的な話になり、、、これが所謂、”「悪」と戦う”ってことなのですかい? これが所謂、文学ってやつなのですかい?と度胆を抜かれました。

  •  単行本ですでに読んでいたのだが、文庫化された際に、単行本未収録の「魔法学園のリリコ」が収録されていたので、購入。
     まぁ、この「魔法学園のリリコ」ってのが、20数頁の短編で、書きかけの作品の冒頭部分だけ、というか、次回作の予告編というか、いずれにしても中途半端に終わってしまっている。
     正直、収録されていなくても良かったような……。
    「『悪』と戦う」のほうは、単行本で読んだ時とほぼ同じ感想を抱いた。
     解説の中森明夫氏によれば、この作品が高橋源一郎の最高傑作だそうだ。
     僕としては最高傑作と思えるものは別にあるのだけれど、それでも傑作のひとつには違いないと思っている。
     ただ、この人の作品らしく、つまらないと感じた人にとっては、とことん「つまらない作品」なのだと思うし、「つまらない作品」と感じた人に対して「わかってないなぁ」と批判することが出来ない、というのもこの人の作品らしいな、と思う。

  • ☆☆☆★

  • 初の高橋源一郎。
    もっと読みにくいかと思ったが、すごく読みやすく、面白かった。
    悪とは何か、というテーマを読みやすい文体で重苦しく感じさせずに提起していて、教科書などに取り入れても良いんじゃないかな、と思った。

  • 3歳の男の子、ランちゃんの目の前に、マホちゃんが現れた。「世界を『悪』から救えるのは、あなたしかいないの」。ランちゃんは弟のキイちゃんと、世界を救えるのか?「悪」とは何かを問う問題作。

    高橋源一郎、初めて読んだ。タイトルや前評判と、まったくちがう話でびっくり。こういう、SFっぽい話を書く人なんだろうか? もっとリアルな物語を書くのかと思っていた、勝手に。

    こういう抽象的な話は苦手だ。悪って、結局なんだったのか。ミアちゃんの正体は? ハッピーエンドなの?などなど。うーん、この人の違う本を読んでみたくなった。

  • めちゃくちゃ読みやすいけど、わからなかった。
    ただそれだけ。ただただ悔しかった。
    解説で絶賛されていることが、まったく理解に追いつかなかった。

  • 3歳児ランちゃんが「悪」と戦い「世界」を救う。
    童話めいた語り口で、結構深い作品。

    解説にあるように「悪」とは何か、最後まで明示されることはないが、作中で表現される「悪」は案外分かりやすい。

    「悪」に(仲間とみなされて)引き込まれるのは、パーツは完璧なのに畸形の顔立ちに生まれた「ミアちゃん」。言葉の発達が遅い「キイちゃん」。そして、生まれてこなかった子供「マホちゃん」。
    また、ランちゃんが見る「悪」のイメージは、極端ないじめられっ子であったり、性的虐待に遭い障害を持った子供であったり、完璧すぎる美人であるがゆえに自分の内面を誰にも見てもらえない(と思い込んでいる)少女であったりする。

    「悪」とは即ちマイノリティであり、「世界」とは彼らにとっては生きづらい、かつ五体満足のマジョリティの価値観に支配された「世界」である。
    「悪」は自分たちには決して果実を与えてくれなかった「世界」をは破壊しようとする。

    それを止めようとするランちゃんは、幼さゆえにまだ「世界」から果実をたくさん受け取っていないからだろうか、「悪」を本能的に理解し受け入れ愛することができる。

    「悪」を受け入れ「世界」へ連れ戻し一緒に暮らすことに成功したランちゃんは、「世界」を救ったことになるのだろう。

    でも、そもそも「悪」なんて、「世界」の側から見た一方的な言い方にすぎない。「世界」はマイノリティを「悪」と切り捨てず、世の中には多様な存在や価値観があることを認め、「ふつー」だと思ってる自分にもそれがあると認め、すべてまるっと包含していく懐の広さがなきゃあならない。

    まあ、素人の読みではこのへんが限界なわけだが、こういう子供の単純さは大人になるとあっさり失われるもので、子供の目線だからこそはっと気づかされる。

    面白いとかいうわけじゃあないんだが、何だか「すごい」と思わせる小説。


    ところで、何で登場人物の名前も「」で括られてるんでしょうね。

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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