ふる (河出文庫 に 9-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.13
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本棚登録 : 2326
感想 : 212
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414126

感想・レビュー・書評

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  • 7年くらい前にこの作品は一度読んだことがあったけど、今回再読。
    他人を傷つけないように生きようと必死で、そのことに対して卑怯だという自意識がある主人公の人物像や、「今」という奇跡はもう次の瞬間には失われているというメッセージは、他の西作品にも通じるテーマだった。
    この作品は他の西作品に比べて掴みどころが分かりづらい?というか、ふわふわしている作品であることは否めない。実際西さんも、あとがきでこの作品は書き始めから他の作品と違ったと明かしているし、「書く、というより描くことに近かった」と表現している。
    他の方の感想で、新田人生とはこれまで自分の人生に関わりを持ちつつも強く記憶には残らない人々の総称のようなものではないか、という考察があって、自分が言語化できなかったものをズバリ言い当ててもらえた感覚だった。
    自分の生き方に疑問を抱いていた花しすだけど、クライマックスでの不思議な体験を通じてそれまで抱えていた悩みから開放されたようで良かった。

  • 新田人生とは私の人生に関わってくれた、今となっては顔も思い出せない人たちの総称なのかもしれない。
    時間軸が行き来する話は好きだし、日付が明確で親切設計だった。
    西加奈子の本は今まで数冊読んでいるが、不思議なことがチラチラ起こり、最後にどわーっと一気にわけわからん感じになるのが好きだ。

  • 絶対に忘れたくない、心に留めたい、脳裏に焼きつけておきたい瞬間が、今までたくさんあった。

    誰かを意図せず傷付けたこと、わかっていたけど頭で思い描いていたより相手に傷ついた顔をさせたこと、どん底にいるような気分の、どうしようもない私を誰かが救い出そうとしてくれたこと、寄り添ってくれたこと。
    絶対に忘れない、と思うのに、記憶はするすると抜けていく。薄情な自分。

    この本は難しくてわからなかったけど、上述した私の経験と少しだけ交わるところがあったような気がする。

    主人公の花しすにだけ見える、白くてふわふわで全員にくっついている丸っこいものは、ふわふわしたこの小説そのものだし、ふわふわしてガッと核心に迫れなかった、迫りたくなかった執筆当時の西さんの心情なのかな、とか思った。
    わからないけど。

    わからないけど、去年の5月くらいから私自身もずっとふわふわしていて、毎日ぼんやりと生きている。

    何もわからない、自分のこともわからない、この小説のこともわかるようで全然わからない。

    でもそれでいい気がしている。

    また来年本作を読んだら、また違う解釈をして、またわからなくなるんだと思う。

    それでいいと思った。

  • 読み終わった後も分からない、掴めない、ふわふわしている。
    人は忘れたり、ふと思い出したりして生きてる。花しすはこの物語の中で精一杯生きていたんだと思う、生きていくんだきっとこの先も。
    この瞬間を覚えておきたい、忘れたくない、いろんな記憶で上書き保存されて本当はなんだったのか、曖昧になってしまうことが寂しく感じることが最近増えたなぁと思ったりした。
    わたしにとってはなかなか難しかった、、

  • 西加奈子さんの描写が好きで、
    この作品も相変わらず、普段感じているのに言語化できないモノがたくさん描かれていた。
    「なんか、わかる」ような花しすの感情や思考が次々と登場するけど、でも、自分の中でうまく消化はしきれないという不思議な感覚が読んでも読んでも続いていくと言うか。
    ただ、この作品は私にとっては特に難解で、あとがきを読んでやっと少し飲み込めると言うか、そういう作品だった。
    あと何回か読めば少しずつ見えてくるかもしれないけど、回数だけでなくて経験も必要かもしれない。

  • 生きる、ということを身近かつ共感できる切り口から書いていておもしろかった。

  • ちょっと難しかったけど、漠然とある女性性に共感を覚えた。すこし違うライフステージに入ったときに読んでみると印象が変わるのかもしれない。

  • 難しいなあと思う、会話も面白くて設定もよいのだけれど、難しい、終着点が難しい小説になってしまっているような感じがする。

    女性に向けて、普段は直視しにくい女性器や命ということを見ようとした、というのはわかり、そしてふわふわしたい気分の時にはきっとぴったりであると思う。

    ただ扱うテーマがナイーブなせいか、人々の線がふわふわし過ぎていて、伝えたいメッセージ(イメージ)のわりに文字数を割きすぎではないのかな、と感じてしまった。

    この著者のファンなら好きだと思うが、ファン以外の人が読むと何だろうこれ、と思ってしまう可能性はある。

  • 西加奈子が好きなので、読んだ。
    相変わらず独特な世界観でした。

  • 若い頃も、今もなんだかんだで
    色々考えてしまう。
    優しいしてるつもりでも
    嫌がられる時もある
    難しいなぁ

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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