『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫 お 34-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (629ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414478

感想・レビュー・書評

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  •  以前新潮文庫版を読んでいたのですが、河出文庫版が出たというので購入。
     さすがに全部再読するのは無理。全部読むと1カ月かかります。
     よって、飛ばし読み。
     色々と忘れていたこと、読み取れなかったことも多いと判明。
     これはやはり全部再読する必要があるかも。
         
    「犯人は、寒月と云う男だ」
    「越智東風です」
    「迷亭及び甘木医師である」
     かの作品の登場人物は容疑者だらけだった!?太平の逸民どころか、裏の顔は凄かった!
     迷亭のフルネームが判明したのがツボ。
          
     上海における最後の幕で、苦沙弥先生に殺意を持つ人物は判明します。
     しかし、彼が行おうとしていた目論見は色々な突発事件が発生したために失敗に終わった様子。
     とすれば、歴史が変わって苦沙弥先生殺害は未遂に終わったのか?
     主人公の名無し猫は再び苦沙弥先生宅に送り込まれます。
     そこに現れた来訪客。
    >>
    「先生、私です」と表から潜めた声が聞こえる。
    「何だ、君か」と主人は気安く云いながら鍵を抜いて戸を引き開ける。背後から覗いた吾輩はそこへ立った人物の顔を見る。
    <<
     これ、一体誰なんでしょうか。
     読解力のない私には見当もつきません。
     上海で苦沙弥先生殺害を企んでいた奴でしょうか。
     この時点で既に苦沙弥先生に殺意があったということ?
         
     色々検索しても、この来訪者について推測している記事を見つけることはできません。
     結局、苦沙弥先生は助かったのかやはり殺害されたのか、殺害されたのなら犯人は誰?
     他にも色々と解明されていない謎が沢山あると思いますが、皆さんどう解釈されたのでしょうか。
     書くとしたらネタバレになるから自粛しているのか、それとも私のように見当がつかないからあえて触れていないのか。
     リドル・ストーリー仕立てになっているので、人によって解釈が違い、従って犯人も違ってくるのかもしれません。
     真犯人探し検討会、やらないんですか?
          
     新潮文庫版と河出文庫版を比べると、表記が違います。
     河出文庫版の方がより現代表記に近く、新潮文庫版は、漱石時代の表記に近い。
     1ページ当たりの文字数は
     新潮文庫版 41字 × 17行
     河出文庫版 39字 × 18行
         
     どちらも、600ページとちょっとのページ数となります。
     活字の方は、河出文庫版は太く、新潮文庫版は繊細で、河出文庫版の方が黒っぽく見えます。
         
     解説は、新潮文庫版は文芸・ミステリ評論家の長谷部史親氏。
        
     河出文庫版の解説は
        
    対談『吾輩は猫である』殺人事件をめぐって 柄谷行人 × 奥泉光
    『『吾輩は猫である』殺人事件』文庫版自作解題
    新装版へのあとがき
    解説 円城塔
         
     円城塔さんはファンも多い大作家。
     私が感じた疑問を解決して下さるかと思ったのですが、そういった解説はなし。
     作品内容にも踏み込まず、言葉の解釈と言葉遊びに終始して軽く書きすぎでは?
     ネタバレを書くわけにはいかないというのは分かりますが、もう少し内容に踏み込んで頂きたかった。
     私は円城塔氏の作品を読んだことないのですが、ウィキペディアの記述を読むと、まさにこの作品の解説を書くにふさわしい・或いは最適の人選かと思われます。
     ところが期待外れに終わったように思えるのですが、どうでしょうか。
    (生意気書いて御本人及びファンの皆様、すみません。)
        
     一方、新潮文庫版の長谷部史親氏の解説は、古今東西の小説の続編についての蘊蓄から始まって面白く展開。
     やはり評論家の方が解説を書き慣れているようです。
        
     ところで、日本の推理小説で「三大奇書」という分類があります。
     ウィキペディアにはそれに続く四つ目や五つ目の作品が挙げられています。
    『吾輩は猫である』殺人事件 も、第五の奇書、或いは第八の奇書でもいいのですが、リストに加えられてしかるべき作品では?
     奥泉光ファンの皆様、ミステリファンの皆様、どうですか?
        
    OLDIES 三丁目のブログ
    ■[名作文学]『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫版)
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161113/p1
    ■[名作文学]灰猫ホームズの推理競争 「吾輩は猫である」殺人事件
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150617/p1
    少年少女・ネタバレ談話室(ネタばらし注意!)
    『「吾輩は猫である」殺人事件』(奥泉光)ネタバレ検討会
       http://sfclub.sblo.jp/article/142598831.html

著者プロフィール

作家、近畿大学教授

「2011年 『私と世界、世界の私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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