貧民の帝都 (河出文庫)

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  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309418186

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新という響きからは清新なモノを感じるが現実の明治2年には困窮者多数且つ救済措置もおざなりな冷酷さが示されている。本書ではそれ以上の多数困窮者を出したのが第二次世界大戦敗戦後としている。要するに社会の大幅な変動の時には「負け組」(実に嫌な名称だけど)になると悲惨な事になるという事が分かる。
    渋沢栄一は財界の巨人というイメージがあるが仕事内容はともかく貧困や孤児に対し引退せずに対応していったのは偉いと思う。
    本編のテーマではないが一升瓶か何かで温罨法するアイデアを出した人は良い看護していると感じた。

  • 終戦直後の社会の混乱と、荒廃した人々の生活は、
    容易に想像できたし、授業でも習った覚えがある。

    が、明治維新の時も同様に
    社会が荒廃して、貧窮した人々が急増していたとは
    知らなかった。
    考えてみれば、そうだよね・・
    でも全く想像できず、
    西洋化、近代化を急速に進める時代は
    どこもかしこも、明るくて希望に溢れていると
    勝手に想像していた。

    福祉の歴史でも、あまり教わらなかった気がする

  • 明治の頃、東京にたくさんあったスラムと救民院の話。上野、日暮里、新宿とか東村山とか身近な町がたくさん出てくる。あくまで残されてる資料をもとにたんたんと書かれている。救民院の仕事に携わった人々が残した業務上の文書「下水さらいは辛い仕事だから風呂には毎日入れさせたい」その後の日本は自己責任論で救民院を廃止したが、大人や親子の入所が多く、肺炎患者を4分の1に減らしたというこの時代の役人や世話に当たった元非人の人たちから学ぶところがあると思う。松本清張の幕末の動乱は絶対読もうと思った。盲人の施設計画に携わった中村正直はスチュアートミル著書の翻訳者らしい。良い社会を作ろうと考えながら生きていたのが偲ばれる。宮本百合子の「人格のある、勤労を好む市民に養い育てるのが目的」という言葉もある。ちょっと脱線するが、ジョナサン バイトを考える自分も勤労を好む市民かな、それは良いことなんだなと思った。渋沢栄一は英雄的には書かれていないが、渋谷がいなかったら実現していなかったと書かれている。
    冒頭、著者は自身のホームレスへの執着にふれていたが、ところどころ「相手は人間であることをやめている」「くさい」と書いたり、自分以外の人も貧民を目の前にすると躊躇する様子を迷いながら観察している。後半、引用したゴーリキーの「人間は元来いたわるものではなく尊敬するものだ」という言葉に答えを見出しているのだと思う。

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著者プロフィール

1938年岡山県生。作家。河出書房新社編集部を経て著述業。主な著書に『浅草弾左衛門』『車善七』『江戸東京を歩く 宿場』『弾左衛門の謎』『異形にされた人たち』『乞胸 江戸の辻芸人』『吉原という異界』等。

「2020年 『差別の近現代史 人権を考えなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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