- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309418735
感想・レビュー・書評
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書評で気になって。著者岩城宏之氏はお顔のみ、盟友山本直純氏は指揮する姿少し見たことある程度の音楽に疎い私。今の時代からすると眉をひそめる表現も多々あったが、大戦直後の若者達の青春記として藝大の熱気ある独特の雰囲気に引き込まれた。
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恥ずかしながら、音楽に疎く、また世代の違いもあって、岩城宏之さんも山本直純さんもよく知らなかった。お二人ともすでに亡くなられている。お顔をネットでみて、ああこの方か、とうっすら思い出した。岩城さんはクシャッとした笑顔が印象的だった。山本さんに至っては、その名は知らなくても、彼の作った「8時だヨ!全員集合」のテーマ、寅さんの「男はつらいよ」、一年生になったら、などなどの名曲を知らない者はいない。
これは、後に日本を代表する指揮者となる著者の岩城さんと、ナオズミこと山本直純さんの青春記である。ハチャメチャ、ドタバタと表現していいだろう。昭和20年代の東京藝大に、こんな愉快な(迷惑な)学生が二人いたのだ。単行本として刊行された後、版元を変えてなんと3度目の文庫化である。いかに本書が愛されているかがわかる。もちろん、とてもおもしろい。
初対面で「イヨーッ」と挨拶することナオズミ、彼女にふられた岩城さんを必死に慰めるナオズミ。N響のコンサートにあの手この手で潜り込む二人。
岩城さんは思ったことをそのまま口にするタイプだったのだろう。時に過激な表現に走り、「これホントにあったことなの?」と疑いたくなるエピソードの連続だが、本書に友人の一人として登場する林光さんが巻末の解説で、基本的には真実だと保証する。この林さんの友情に満ちた解説も秀逸である。
岩城さんは晩年は病に苦しんだ。岩城さんが「もう意識しないでできることは指揮だけ」と語るインタビュー映像がある。本書も入院中に編集者が口述筆記したものだという。タクトだけでなく、文章でも岩城さんはすぐれた指揮者として音楽を奏でたのだと思う。 -
■ Before(本の選定理由)
タイトルから、どうも音校(藝大の音楽側)の話のようだ。変人が多かった、みたいなエッセイだろうか。
■ 気づき
なんと著者は著名な指揮者で、舞台は昭和27年!
ドタバタ学生記だが、音楽への熱意・ゆうじんへの愛情(貶しあい)が溢れていて、読み物として面白い。音楽家の著者なのに、キャラクター描写が夏目漱石みたいに上手い。
■ Todo
存じ上げなかったが、こんなに素直で真っ直ぐな方が全てを捧げた音楽ならば、きっと心に響く指揮のオーケストラだったに違いない。いつか触れてみたい。 -
オーケストラを指揮したい、その思いで一杯の著者、岩城宏之と、藝大同窓の山本直純との、ハチャメチャな、でも音楽には真摯な大学時代を描いた青春記。
高度成長前のまだ混沌としていた時期とは言え、著者たちのぶっ飛んだ言動には驚いてしまう。藝大には天才と奇人、変人が棲息していると現代でも言われているくらいだから、この時代であれば尚更だったのだろう。
音楽の素養がないので、本編で触れられている指揮法やその凄さについては良く分からなかったが、著者たちの熱い想いは良く伝わった。
タイトルでもある、本編ラストを飾るショスタコーヴィッチの『森の歌』の上演場面、作品の的確な解説とともに、指揮をするナオズミと打楽器席からそれを見守る著者の熱い友情。心打たれるものがある。
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本屋に行ったら今年の河出文庫グランドフェアが始まっていて、とりあえず2冊買ったうちの一冊。2003年講談社文庫版を(絶版になっていたのを苦労して)手に入れ持っているが、池辺晋一郎によるあらたな解説もついたということでまた買った♪
岩城宏之が無二の悪友山本直純とともに指揮者になりたくて奮闘する芸大時代をえがいた自伝的エッセイ。今だったらありえないor大きい声ではぜったいいえないエピソードも多い(解説を読むと話半分で聞いたほうがいい部分もあるらしいけど)が、名調子でおもしろく読ませる(音楽家の自伝的エッセイにはほぼハズレがない)。
ちなみにタイトルは、ショスタコーヴィチのオラトリオ「森の歌」から。
破天荒な青春時代の様子もさることながら、山本直純の音楽家としての本質、熱意をよく伝えるエピソードが多く、そこに感銘を受ける。
山本直純の親友として同志として、真の姿をよく知るものとして、生前から岩城宏之はずいぶん歯痒い思いをしていたのだろうなぁ・・・メディアの力はどうにもならないから「わかる奴にわかればいい」と思うほかないけれど、わかってる人間が記録に残さないと永遠に誤解されたままになりかねないから。 -
指揮者の人の本だったのか。やけに音楽に関するディテールにこだわってて、早口再生だとききとれなくて速度を落として聞いた(笑)
音楽大学の雰囲気ってどんな感じなのかわからないけど、やっぱりみんな裕福な家の人が多いんだろうな。 -
下野竜也氏企画構成「オーケストラがやっと来た」という、しょーもないダジャレタイトルの演奏会(褒め言葉です、為念)を偶然聴くことができたのだが、その余韻というか流れで購入。旧制専門学校から新制芸大に変わった直後、学生視点からの、まさに「青春記」。むろん、敗戦から占領下、東西対立があらわになった時期という時代背景のもとでの「青春」であったことが、記述のあちこちから読み取れる。そして、ひねくれたヤブニラミ者からすれば「バンカラで独特なエリート文化の自慢話」という嫌味な言い方もできるか、とも思った。
あらためて気づかされたが、旧制度下では女性が高等教育段階に進学すること自体が例外的事態だったわけで、その制度下での東京音楽学校は、内実はともあれ「男女共学」の官立専門学校だったのだなぁと。芸大成立直後のこの「青春記」にも、その独自なところが滲み出てるような感じをもった。
岩城氏の愛情ある辛辣な観察眼により、山本直純氏はオランウータンに例えられており、なんとなく納得と苦笑。本名は明かされていないが、「森の歌」演奏に必須な大規模合唱団の頭数をそろえるために、岩城氏がうまいことまるめこむ(交渉するともいう…)「カエルみたいな顔をしたウタウタイのボス」というのはおそらく、文化功労者で「合唱界の人間国宝」(指揮者・山田和樹氏の言葉)である「あの方」なのだろうなぁ、と思ったり。読むひとが読めば、ほかの匿名登場者も誰かわかったりするのだろう。少しの自虐を込めて「独特なエリート文化の自慢話」と記したくなったゆえんである。 -
古き良き時代の楽しい学生生活。
誇張かな?と思う部分もあるが、そういう時代だったんだろうな。
岩城さんのエピソードは聞くこともあるが、そういう人がどうやって出来たのか、また昔のガクタイ事情も知れて楽しかった。 -
戦争という影はありつつも、いろいろな面で自由だった青春時代を著者は懐かしく振り返る。残念だけど、共感よりも時代の差を感じるところが多かったかな。
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素直