ババヤガの夜 (河出文庫 お 46-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 186
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419657

感想・レビュー・書評

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  • 王谷晶『ババヤガの夜』河出文庫。

    新道依子という美形ではないが、無骨で恐ろしく喧嘩が強い女性を主人公にしたバイオレンス・アクション小説。

    前半の面白さが全て吹っ飛んでしまう、まるで途中でストーリーを放棄したかのような端折り過ぎた急展開と呆気ない幕切れが、余りにも勿体無い。

    町でヤクザ相手に大喧嘩しているところを仲間のヤクザに拉致された新道依子。ヤクザの大邸宅に連れ込まれた新道はヤクザの親分の娘の尚子の護衛を命ぜられる。お嬢様育ちの尚子に対して、がさつな新道という水と油の二人は次第に距離を縮め、互いのことを話し合うようになる。

    ところが、尚子の婚約者で残忍な拷問が趣味の変態ヤクザを新道が暴漢と間違えて殴り倒したことから事態は急展開する。

    面白かったのはここまで。ここからは、まるで結末を焦ったかのように、話は一気に40年後に飛ぶ。

    定価748円
    ★★★

  • バイオレンスアクション小説と銘打たれているこの小説は、文芸路線の色が濃い河出文庫では、異色と言っていいか。
    しかも女性を主人公にしたミステリーなどのエンタメは、大概美人との設定だが、この小説の主人公は美人とはされてなく、そこでも異色な作品。
    この女性めっぽう強く、暴力団相手に互角以上の闘いを演じているアマゾネスのような。
    他のレビューでも指摘されているが、前半の胸のすくようなスピーディな展開が、後半ガラッと変わってしまうのがチト残念。
    数年後の二人が、あの二人とは、予想はされたが意外感も。

  • 不条理な暴力と不器用な暴力。
    様々な暴力のカタチが交錯する。

    人は何処に幸せを求める。

  • 文庫になったので再読。何回読んでも面白い!シッ!
    バイオレンス・アクションは好きだけど、よくある男中心のストーリーは何だかモヤモヤするという人には是非読んでほしい。

    新道とお嬢さんの関係性とその変化が本当にいい。ヤクザの柳も、出てくると新道の人と成りがはっきり見えるのでまた面白い。

    またこの小説のいいところは、新道依子が強烈に強いけど、美人とかじゃないところ。
    一般的に女性キャラだと、強いとかの能力が高いだけでは許されないで、美人・セクシーみたいな外見の付加要素がつけられがちだけど、新道は武骨でただただ強い!いいね!

    文庫は作者あとがきがついてて嬉しかった。
    あと英語版・韓国語版が出版予定だそう。海外で映画化でもしないかな。日本だとまだ内容的にもキャスト的にも無理そう。

  • ものすごく面白くてびっくりした。
    戦う女の人の話、というのはこれまで観たり読んだりした事があったけれど、ここまで血の匂いをさせながら(女性が)戦う描写が描かれている作品を読むのは初めてだった。
    映画『ハーレイ・クイーンの華麗なる逆襲』のような非現実的でポップで可愛い飛び道具や武器で戦う物語も楽しく観れるけれど、こういう、泥臭く純粋な暴力で戦っている作品をより私は求めていて(暴力を全肯定はしないが、そもそもとして暴力表現が男性のものとして占有されがちな状況のなか女性表象のキャラクターが暴力を振るう表現を増やしたいと思っている)、それが見れて嬉しかった。
    特に何の理由も意味付けもされずシンプルに暴力が好きな女性キャラ。

    二人の全然違う環境に置かれた女性表象の人間が出会った結果、こういう展開になっていうのがものすごく嬉しくて終始テンションが上がりまくりだった。最高だった。
    この人の他の作品も読みたい。

  • 女性が主人公のバイオレンスアクションは珍しく、そつない文章で最後まですーっと読み進められた。

    ただ、思ったほどのバイオレンスでもなく、主人公の色々な決断だったり、様々な場面や状況の理由が薄っぺらく、自分の中にすとんと収まることなく目で追った後に流れていった。

    ストーリーもある仕掛けの為に必要なものを揃えて組み立てました、というように感じられた。いつか再読すれば、また違った面がみえてくるのかが唯一あとに残った希望だろうか。

  • 暴力を生きる糧としてきた女と、家に縛られて生きてきたヤクザの娘。舞台も設定も非常にバイオレントで尋常じゃない雰囲気をまとっているが、常軌を逸した男たちに追い詰められた二人が逃げ出してからの、それぞれの思い込みや常識から解放されていく様に驚いた。疾走感にあふれ、読み手の予想を遥かに超える、というか安易にハッピーエンドに持ち込まずにいい方向に落とし込んだ腕力に感心した。男性作家にない視点のハードボイルドで面白かった。

  • この本を手に取るまで知らなかった作家さん。
    男性とも女性ともとれる名前で、読み初めは男性なのだろうなと思い、途中からはどちらでもよいというか作品に没頭してそんなことなど考えずに読み終え、解説でどうやら女性らしい、あとがきで女性なのだと分かった。
    本当は男性であろうと女性であろうと構わないのに、どうしてもどちらかと考えてしまう。
    男性だから男性なのに女性だから女性なのに。
    そういうことにうんざりすることもあるのに、抜け出せない。

    型に嵌めたくなってしまうのは、型に嵌めることで理解したと思い込めるからだろう。
    理解出来ないものは怖いから。

    私の持っている型には嵌らない作品だった。
    もっと他の作品も読んでみたい。



  • 通常は主人公が男の役どころのところを女性にした小説。
    新宿でヤクザと喧嘩をし、喧嘩がめっぽう強いことを見込まれ、ヤクザの親分の娘、内樹尚子の護衛として新道依子が雇われる。最初は、尚子と依子は反発しあっていたが、すこしずつわだかまりが解け、心を開きあう。ヤクザの親分とその兄弟分宇田川剛(尚子の婚約者)は、とんだ変態野郎で、二人から娘を守るために、依子は尚子を連れて逃亡する。隠れて暮らす二人とそれを追うヤクザの話。
    スピード感があり、読みやすい。あっという間に読み終えた。ヤクザの描写が、粗暴一辺倒で今時ではない気がするが、それは小説のお約束。異常に喧嘩が強い主人公がなぜか女性であるところに違和感を覚えたが、著者のTwitterにレズビアンでフェミニストと書いてあるので、なるほどと納得。
    『ババヤガの夜』というタイトルをみて、そういえば栗本薫の『グイン・サーガ』にもババヤガって出てきたと思い出した。ネットで調べると、スラブ民話に出てくる鬼婆のことらしい。作中で、祖母に育てられた主人公が、祖母から聞いた話の中に出てくる鬼婆になりたかったと語るが、おそらくそこからこのタイトルがつけられたようだ。

  • ア~~~時効警察で見たぞ、このオチ…なるほど…。
    しかし血生臭いやの付くお仕事の現場は怖いな…暴力もだけどなんてーか語彙が怖え…。

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著者プロフィール

著者:王谷晶(おうたに・あきら)
東京都生まれ。小説家。著書に『探偵小説(ミステリー)には向かない探偵』『あやかしリストランテ 奇妙な客人のためのアラカルト』『完璧じゃない、あたしたち』など。

「2019年 『BL古典セレクション③ 怪談 奇談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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