服従 (河出文庫 ウ 6-3)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464404

感想・レビュー・書評

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  • なんと文庫化していたので美容院の暇つぶしのために買って一気読み。フランスがイスラム政権の党に取られて徐々にイスラムに傾き、、、とのあらすじ、ふとした出来事をきっかけにじわじわと世界が変わっていく様、2021年に読むとなんとまぁ皮肉に思える。
    スジとは別に本の全体に流れる強烈な差別意識というか、まぁはっきり言って相当きついセクシズム描写はまさかウェルベック本人無意識に書いてるわけでなく、この本の筋を浮き立たせるために意識的に使っているのだろう。というかそう思いたい。
    それ以外にも、本から距離を取って読める人でないと危険な本になってしまう。それだけの求心力というかカリスマを発する本で、ウェルベックすげーなー

  • やや尻切れとんぼで終了する印象。

  • スシが届いてすごい量だったのところで爆笑したこと以外あまりおぼえていない。

  • ミシェルウェルベック 「服従」

    面白くはないが、考えさせる小説だった。服従により得られる幸福は是か否か という目線で読んだ


    主題は 主人公やフランスのイスラームへの改宗。イスラーム=人間が神へ服従することにより幸福が得られるという位置づけ。主人公は人間中心主義、自由主義、知的で フランスそのもの


    服従により得られる幸福を是とする立場で読むと、従前の人間中心主義下のフランスや主人公の弱化、孤立、格差を イスラームが救い、新しい道へ向かったとなり


    服従により得られる幸福を否とする立場で読むと、人間が神に服従することは、人間を否定し 人間を諦めることになり、自由主義に反することになる


    著者の判断は提示されていないと思うが「希望がなくなったとき、人々に残されているのは読書である」というメッセージは残している。


    重いテーマのわりに 性描写が多いが、これも服従による幸福の一つと捉えているのか?


  • おもしろいし興味深い設定なんだけど、一夫多妻制で釣ってるのか?おっさんの(ための)話か?ラストは、はあ?と思った。ずっとおもしろく読んでたのに。
    この設定で、他視点での話を読みたいなあ。
    と思ってたら「イスラーム・ジェンダー学」っていうのがあった。ネットでちょっと見てみたけど字がびっしりで読みにくい。段落分けするとかしてほしい。

  • タイトルから想像されるプロット(暴力的な場面も多いのでは?など)とはまったく違う、どちらかといえば知的な会話や主人公の内省によって展開に、やや意外な印象を受けた。読後、すべては「ぼくは何も後悔しないだろう」というラストに向かっての布石だったと知るのは、ある意味で衝撃的でさえある。
    主人公の知人の乗車がルノー・トゥインゴと記されていたが、そんな身近なもの(他には、料理、酒、スーパーマーケットなど)によって、一気にストーリーが現実味を帯びてくるということにも気付かされた。
    まるで村上春樹の小説を思わせるかのような訳文も秀逸。

  • ずっと前に書店で『素粒子』というタイトルの文庫本を見つけ、物理学系の読み物かと思ったら小説らしかった。変わった題のを書く作家だなと思い、その後もあちこちでウエルベックの名を見かけたが、ついぞ読まずに過ごしてきた。
    やっと初めて読んだのがこの本。
    現在のフランスの大統領選で、極右政党とイスラム教系の政党がぶつかることになり、フランス国民がイスラム教の方を選択することとなって、結果、女性のスカートがなくなったり、一夫多妻が一般的になったり、大学等の教員はイスラム教徒でなければならなくなる、という話。
    いま世界中で「あまり頭の良くない極右」が台頭しているので、それを受け入れない場合の選択肢は何が残るのか?という問題を提起している。
    実在の現役政治家等の名前が多数出てきており、これがベストセラーになったのだから、かなりリアルな小説なのではないか。
    イスラム教は、我々日本人にとってほぼ完全に未知の世界であるが、それよりは長い付き合いの筈の西欧人にとっても「異質な他者」であるようだ。
    イスラム教とは何か? ここではルディジェという登場人物が開陳する物語として示されているのみだ。素晴らしい文明ではあったが、結局は敗北した西欧というイメージ。
    とりあえず、小説として面白い作品だった。出てくるフランスの政治家の名前にまったく馴染みが無いとしても。
    ほかにはどんなものを書いているのか。ミシェル・ウエルベックの小説をまた読んでみたい。

  • 『セロトニン』からの『服従』。2019年の末から、パリにて先の見えない公共交通機関のストライキが続いている。偶然ながらそんな中でこれを読んだ。

    ファシズム政党を阻止するために、究極の選択として社会党はイスラム同胞等と連結しフランス初のイスラム政権が誕生する。
    じわじわと伝わってきたのはイスラムが政権を取ってからの大学の状況の変化。女性職員が解雇され、イスラム教徒ではない職員は出世やポストの維持の可能性が閉ざされ、義務教育期間が短縮化され、大学関連のパーティでは女性の姿が消える。一方、サウジアラビアからの巨額の金銭的支援を受け大学は潤い、これまで大学運営の採算を取るためにショーやイベントに高値でレンタルされていた大学の施設はその必要はなくなり(そして禁止され)アカデミックな尊厳を取り戻し、女性と縁のなかったような元同僚がいつの間にか(アレンジされて)結婚していたり。主人公の淡々とした語り口から、それが現実に起きることとをリアルに自然に想像できた。

    主人公のライフワークとする研究対象のユイスマンの人生、主人公の父の死後に知った主人公の知らない別の顔、それらが伏線となり主人公自身も淡々と改宗に向かっていく。

  • イスラム同胞党がフランスで勢力を伸ばすという架空近未来を背景に、文学者の訳のわからない生活を描く。自由な個人という概念は、中間的な社会構造を解体するには有効だが、家庭という基本的な社会構造を破壊するに至って、否定するべき概念であるという理論、自然淘汰圧によって一夫多妻とそれに伴う少数のエリート男性による女性の独占の肯定などが目新しい。

  • イスラム社会への逆説的な批判、または賞賛や支持として揶揄されるこの作品には、もっと別の大きな主題、時やイデオロギーを超えたところの「理解」というテーマがあるように思えた。ほぼ1世紀半の時を隔ててフランソワに研究されているユイスマンス。彼は作家の著作を援用し、日常的な現実を理解しようとする。しかし作家の信仰による隠遁生活には共感することができず、最終的にはイスラムへの改宗が語られる。プレイアード叢書序文の執筆によってユイスマンスとの関係を終えた主人公。また、確かに女性蔑視的表現は見られるものの、宗教という服従状態における幸福は一種のあり得る存在容態なのであり、この作品をそこに一元化して批評してしまうのはもったいない。フェミニズム的側面だけでなく、文学的普遍性を背景とした考察対象として了解したいと思う。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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