すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309467733

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化!

    【最優秀賞】『すべての、白いものたちの』記憶に灯をともす/高野真理さん – K-BOOK振興会
    http://k-book.org/yomeru/kbl_grandprize/

    「すべての、白いものたちの」 死者につながるものを集めて|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12175719

    すべての、白いものたちの :ハン・ガン,斎藤 真理子|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309467733/

  • 韓国の作家、ハン・ガンの作品。
    白いものにまつわる65の詩のような、短編のような章で構成されている。だけど全体を通して大きなストーリーがある、そんな作品。

    この作品に出会えて、本当に良かった。
    一つ一つが綺麗で美しい文体で綴られ、なんてことのない風景の描写に、胸が締め付けられる。
    白いものについて語られているからこそ、その語りの中で示される色彩や、感情までもがより鮮やかに見える。
    非常に短い章もあるのだが、その余白すら、作品全体の雰囲気と相まって、一体どこまで計算されているのだろうと思う。

    もう何度も、繰り返し繰り返し読むだろうなぁと予感する作品。大ファンになりました。

  • 詩のような、小説のような独特の文体。
    余白が多いからこそ、言葉の一つ一つが際立ち、鮮烈なイメージを最後は読者に委ねるようだった。

    生まれてから2時間だけ生きた姉
    姉が息を引き取るまで、母がささやき続けた「しなないで、おねがい」
    もしも姉が死なずに生き続けたら、自分はこの世に生まれていたのか

    人ひとりの存在を、人生について思考する試みを文学を通して読む者に投げかけている。
    「白いものたち」について紡がれる65の物語は、存在し、生き続けたかもしれない命への祈りとなる。
    文学にしかできない表現を、その素晴らしさを体感させてくれた作品だった。

  • 産まれてわずか2時間で死んだ女の子。
    対峙するのすら辛く息苦しいほどの喪失感を”白いものたち”を通して恢復してゆく。
    なんとか救われてほしいと願いながら読んでいましたが、読後感はとても爽やかだったのでどうやら救われたようです。

    途中、「わたし」がいったい誰なのかふと分からなくなる。母親なのか亡くなった女の子の妹なのか?それとも・・・。
    平野啓一郎氏の解説を読んで、ぼんやりした輪郭がくっきり浮かび上がってきます。
    小説というか連作短編か散文に近い。今までにない読書体験でした。

  • すごすぎてなにを書けばいいのかわからない。読んでいるあいだ、薄暗い雪景色のような静謐さに絶えず体が満たされていた。それはひとえにあまりにも洗練された文章(訳文がすばらしいしきっと原文もすばらしいに相違ない)のなせるところだろうと思う。白いものには無数のイメージが重ねあわされて、厳粛さや脆さ、寂しさ、残虐さ、清廉さ、様ざまの印象が圧倒的な静けさに飲みこまれながらも同時にそれを形成してゆく。そういうなかに、生まれて二時間で亡くなった姉との(間接的な)交流が立ちあらわれる。白いものたちは、生と死をも包みこむ。それはあたりを覆う霧のように無限のひろがりをもつようでもあれば、蝶や、雪の一片一片のようにものすごく小さな世界の細部に宿るようでもある。そこにはあるものが生じて消滅してゆくことの厳然さがある。そうしてそのなかでひとはひとりの人間が生まれて死にゆくこの事実を、個々人の確たる実感として引きうけねばならないことを悟るのだ。それはこの世に生まれ(得)たすべてのものへの祈りとなる。

  • 詩的なモノクロ映画を見ているような雰囲気でした。
    著者の実体験が基になっていて、痛みを乗り越える方法を模索しているのかな、と読んでいました。

    ガーゼや雪など、この本に出てくる白いものたちは、背景が暗いほど際立ち、著者の抱える痛みが強いほど、背景と対象物のコントラストがはっきりと現れるように感じました。
    表現が魅力的で、どんな風に文章が誕生するのだろうと思います。

    誕生は白く、死は黒い、というイメージを、読みながら感じていました。
    戦争や災害などで一度破壊されてしまった場所が、建物など新たな体を得て生きていくことは、それまであった体の痕跡を抱きしめるように、また新しい服を着ていくことなのかな、と思いました。
    そのような街は、白さと黒さが入り交じったように感じるかもしれません。

    ろうそくが何本も燃えて風に揺れて、手向けた誰かの、手向けられた誰かの魂が浄化される時間が流れているような感覚です。

    最後の解説で、著者の意図していた事が分かり、また読めば違った気持ちで読めるだろうなと思いました。



  • とても美しい言葉で日本語訳してくださった斎藤真理子さんの「補足」が、理解を助けてくれる内容でとてもありがたい。
    読了直後ですが、いまから二回目読みます。

  • おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり、つき、こめ……。「白いもの」たちへ捧げる静謐な祈りの言葉。紡がれる美しい文章が織り成す物語は壮大なひとつの詩でもある。哀切で儚い65の物語。ゆっくりと静かな夜に読みたくなる。素晴らしい本でした。

  • 翻訳文学試食会 で『菜食主義者』が紹介されていたハン・ガン氏の本作が、妻の本棚にあったため拝借。

    私が幼少の頃、母が私の兄か姉を流産していたことを、聞かされていた。毎朝仏壇にお参りするとき、見たこともない兄か姉に話しかけていた。中学生時分に、ふとその位牌に書かれた命日を見たことがあった。なんとなく考えてみたら、兄か姉と私の存在は、両立しないことに気づいた。ここに今生きていることの、偶然の重なり合いに、背筋がもぞもぞした。

    この作品でも、ハン・ガン氏が、生まれて数時間で死んだ姉を自分に重ねて語ることがあり、そのもぞもぞを久しぶりに感じながら、読み進めた。

    #河出文庫 #ハン・ガン #翻訳文学試食会 #翻訳小説 #齋藤真理子

  • 余韻の残る美しい小説。
    詩集のようでいて、そこには恢復の物語がある。静寂がひろがり、言葉は少なだが余白や時折挟まれる写真、全てが訴えてくる。白は特別な色だなと思う。何ものも受け付けない強さと全て包み込む柔らかさがある。

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著者プロフィール

著者:ハン・ガン
1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科卒業。
1993年、季刊『文学と社会』に詩を発表し、翌年ソウル新聞の新春文芸に短編小説「赤い碇」が当選し作家としてデビューする。2005年、中編「蒙古斑」で韓国最高峰の文学賞である李箱文学賞を受賞、同作を含む3つの中編小説をまとめた『菜食主義者』で2016年にア
ジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞する。邦訳に『菜食主義者』(きむ ふな訳)、『少年が来る』(井手俊作訳)、『そっと 静かに』(古川綾子訳、以上クオン)、『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳、晶文社)、『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子訳、河出書房新社)、『回復する人間』(斎藤真理子訳、白水社)などがある。

「2022年 『引き出しに夕方をしまっておいた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハン・ガンの作品

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