日本版スローシティ: 地域固有の文化・風土を活かすまちづくり

著者 :
  • 学陽書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784313814141

作品紹介・あらすじ

どこでもできる、地域資源と市民のアイデアによるまちづくり。市民ライフスタイルを尊重し、地域固有資源を市民自らが発見・活用する地域再生の事例と方策を詳解。

感想・レビュー・書評

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  • ・まちづくりは、地域市民のライフスタイルを尊重し実現する手段

    ・欧米では、余暇をカップル二人の時間を尊重しながら、家族揃って
     外出を楽しむ。

     日本のファミリーは、余暇のイニシアチブは子供(の年齢)にある

    ・西欧では、行政、民間事業者(カフェ)、利用者(市民)の三者が、
     その場を公共空間であることを強く意識した場の使い方をしている

    ・日本の都市景観が醜い本質も、「公共空間私物化」の精神が根底にある

    ・人は開放的な屋外での飲食を好む。

    ・スローシティは、地域固有の文化、風土を活かす都市を目指す

    ・スローシティ 5つの要件:
     1)ヒューマニズム:人間中心の公共空間をゆっくり歩ける
     2)スローフード:地域固有の食をゆっくり味わえる
     3)関与:地域固有の文化、物語に、市民が関与(参加)できる
     4)交流:ゆっくり話せる、観れる、癒される
     5)持続性:市民のライフスタイル、意向を把握する

    ・閉鎖型コミュニティーの町づくりは、中高年男性の論理と意見で
     ことが進みがち。

    ・目指すは、女性、若者が関与しやすい開放型コミュニティー

  • 結論が見えにくい。

  • この著者は、新しいものから遡って読んでいるため、若干内容に時代の違いを感じる面もあるが、著者の姿勢は一貫性がある。また、事例も多く、イメージしやすい。
    ヨーロッパ的なライフスタイルを理想としつつ、まちづくりは、その地域固有のものであるため、そのまちづくりをそのまま持ち込んでも成功するわけがない。
    とはいえ、長年染みついた生活パターンを一気に転換できるわけでもない。
    そのようなことは理解したうえで、現実的な方向性として、日本的なスローシティを目指していこうとするのは、決して夢物語ではない。
    実際、著者が評価するまちづくりの例も多く生まれており、それを紹介しつつ、特徴を整理してあるので、気になる成功事例を参考にしていくのはいいと思う。


    ▼スローシティ5つの要件
     欧米的ライフスタイルを目指すのは無理がある。スローシティ「地域固有の文化・風土を活かす都市」を目指す
    ①ヒューマニズム:人間中心の公共空間を、ゆっくり歩ける
    ②スローフード:地域固有の食を、ゆっくり味わえる
    ③関与:地域固有の文化・物語に、市民が関与(参加)できる
    ④交流:ゆっくり話せる・観れる・癒される
    ⑤持続性:市民のライフスタイル・意向を把握する

    ▼補助金を使って活性化に取り組んだ商店街がどこも同じような表情で画一化された外観になったのは、商店街活性化の補助金施策メニューが画一化されていたから。

    ▼スローシティ実践の取組みに共通する重要な特性
    ①専門家や自治体の言いなりでなく、市民が独自のまちづくりを進めている
    ②専門家や自治体は、コミュニティの自発的取組みを側面から支援している
    ③利益優先ではないまちを愛する精神が、まちを活性化に導く

    ▼「開放型コミュニティ」は、価値ある情報の交換・交流を生む→「人」の交流が開放的かつ多様であるほど、まちで生まれる「情報」の価値が上がり、「まち」の価値が上がる

    ▼地方都市のスローシティ実現への4つの指針
    ①まちづくりの主役は市民、開放型コミュニティを創ろう
    ②コミュニティが運営する西欧型地域スポーツクラブを創ろう
    ③地域固有の文化・物語を発掘・創出しよう
    ④公共空間を市民ライフスタイル実現の場にしよう

    ▼本書で紹介された事例
    原宿、巣鴨、高知市の街路市、福岡市の裏通り、長野県小布施町、京都府美山町、旧居留地連絡協議会(神戸市)、名古屋織物共同組合・長者町街づくりカンパニー(名古屋市)、柏駅周辺イメージアップ推進協議会・ストリートブレイカーズ(柏市)、門司港レトロ倶楽部(北九州市)、新町川を守る会(徳島市)、明日の湯布院を考える会(旧湯布院町)、浅草おかみさん会(東京)

    <この本から得られた気づきとアクション>
    ・指摘されているようなスローシティとしての取組みは、今後のまちづくりの方向性としては必要だと思われる
    ・成功事例は多数紹介されているが、それを真似ることはできない。希少性のある地域固有の風土・文化は何か常に求め続ける姿勢が必要
    ・5つの社会変化に抵抗することはできない。いかに共存していくかが知恵の見せ所。

    <目次>
    序章 まちづくりは地域市民のライフスタイルを尊重し実現する手段
    第1章 西欧に根づく「スローシティの精神」
    第2章 市民ライフスタイルを知らない日本のまちづくり
    第3章 スローシティの取組みが必要な理由―ライフスタイルを変える5つの社会変化への対応
    第4章 地域固有の文化・風土を活かした「スローシティ」事例
    第5章 スローシティを実践する「コミュニティ」事例
    第6章 スローシティ実現に向けて

  • Thu, 07 May 2009

    まちづくりの主役は行政じゃなくて地域住民.
    なんと多くの行政主導のまちづくりが失敗し,第三セクターが破産してきたことか.


    また,なんと安易に成功事例(なかには実態を伴わないもの)を模倣し,失敗していく事例の多いことか.
    特に,日本の町が形だけ海外の事例をまねることには警鐘をならす.


    その上で,日本が居住地,勤務地の二点を過剰に重視している点を問題視し
    ヨーロッパではよくある,サードプレイスとよばれる第三の社交の場(スポーツクラブ,カフェなど)
    の重要性を指摘する.


    ファストシティへ走るのか,スローシティにするのか.
    ファストシティの概念は名前をよく似たファスト風土(三浦)とだいたい近い概念.


    後半は日本のまちづくり事例集になっているが,知らなかった事例も多く,楽しめた.


    学術的なまとまりとしては,荒い感じもあったが,大枠納得のいくないようだった.


    ファストシティで価値を生むのが近視眼的な開発の道.
    ベネチア,湯布院のようにスローシティで価値を生み出す方が長期的な戦略が必要に思う.


    京都のような都市は,伝統はあるが,大きすぎて,どっちにも転びきれない.
    モザイク状にスローとファストを切り分けるのが正解か?


    まちづくりの成功・失敗を読む度に,これほど「どこにでも使える法則」を構築しようとする安易な「工学・科学」
    と相容れない問題があるのか!?,と,チャレンジングな気持ちをくすぶられる.
    でも,たぶんそれが本質.

  • 読書会したい。

  • 著者の本は、地域再生の罠に続いて二冊目。わかりやすく、読みやすいが、結局著者のいうような開発は、市民と行政が協力しないと無理である。行政マン向けか、市民向けどちらかに絞って本を出して欲しい。

  • 「可視、論理、効率」を重視する日本の発想。これに対して欧米の文化・風土は日本のそれとは正反対。「感性、哲学、ゆとり」を重視する。そもそも根本的なライフスタイルの違いも考慮せず欧米のまちづくりをそっくり真似て上手くいくわけがない。本書では、日本固有の文化を踏まえた日本版スローシティを提唱している。全国のまちづくりを検証しながら考察を進める。富山の悲惨な事例がまたしても取り上げられていた。まちづくりの処方箋は自ら考えよと言う。示唆に富む至言が随所にちりばめられており自考の助けとなった。

  • ライフスタイルをキーワードとしたまちづくりの考察は、納得できるところが多く、よくある成功事例集よりも一歩進んだ示唆を与えているように思う。良書。

  • スタバ、ローラアシュレイ、タワーレコードがある場所は、その都市のライフスタイル消費地、つまり文化の中心地、という見方が面白い。

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