利己的な遺伝子: 増補改題『生物=生存機械論』 (科学選書 9)
- 紀伊國屋書店 (1991年2月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (548ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314005562
作品紹介・あらすじ
本書は、動物や人間社会でみられる親子の対立と保護、兄弟の闘い、雄と雌の闘い、攻撃やなわばり行動などの社会行動がなぜ進化したかを説き明かしたものである。著者は、この謎解きに当り、視点を個体から遺伝子に移し、自らのコピーを増やそうとする遺伝子の利己性から、説明を試みる。大胆かつ繊細な筆運びで、ここに利己的遺伝子の理論は完成した。
感想・レビュー・書評
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30年以上前の本だが新しい。
我々の人体は遺伝子にとってヴィークルなのだと。遺伝子は自らの複製を多く残すことを本能的に考えており、時に他の遺伝子と協力し対立し、生き残りを図る。新型コロナウイルスもそうだったのかと思うと色々複雑な気持ちにもなるが、こういうものの見方を理解しておくと世の中を複眼的にとらえられる。
福岡伸一さんの「生物と無生物の間」で、秋川雅史さんの「千の風に乗って」の歌詞が引用されていて、人間の細胞は常に入れ替わっており今日の細胞は明日にはないといった記述があった。この本で遺伝子は複製をつくり生き延びていく。強い存在なのだなあと感じたのだが、福岡さんの本の記憶が蘇った。
なんとかなく執着ばかりする生き方に疑問を持っているので、私を構成する遺伝子はそういうものだととらえると自らの人生をメタ化できる。そう考えるよいきっかけになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/472116 -
[第5刷]1991年10月5日
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【概要】
生物の個体は、時として、他の個体のために自己犠牲的に ― 本書のことばで言うと「利他的に」― 振る舞うように見られることがある。これはしばしば「群選択 (群淘汰)」の概念で説明されることがある。これは、生物が自分の所属する群・種をより存続しやすくするために利他的な行動を取る、というものである。
そうではなく、それらの振る舞いは (各個体ではなくて) 個体の中の各遺伝子が「利己的に」ふるまった結果として説明できる、というのが本書の論旨であり、タイトルの由来である。
この点に関しては同じく生物学者の S. J. グールドと激しい論争があったらしく、「ドーキンス vs. グールド」という本まで書かれている。
本書は平易な文章で書かれており読みやすい。また、内容は現在では学術的に通説として受け入れられている考え方らしい。ただし、洋書にありがちな回りくどい例えや、いろんな方面に少しずつ攻撃するような書きっぷりもあって、当時はいろいろな批判や論争を呼んだようでもある。
動物の行動を徹底的にダーウイン進化論の立場から解釈しようとする一冊。進化論に興味のある人はぜひ読んでみることを薦める。
【詳細】
今読んでる。後で書く。 -
個体から遺伝子への視点の転換。
個体は遺伝子の乗り物に過ぎない。
動物の利他的な行動は、遺伝子の利己性によるもの。利己性とは、自己複製を意味する。自己複製を行う実体の生存率の差に基づいて、進化する。
日常生活では個体を基準単位とすることに慣れ過ぎている。だから遺伝子が主人公として進行する理論は目から鱗。でもよく考えれば当然の事だ。両親から半分ずつ提供された遺伝子は、複製され、分裂し、2分の1のくじ引きで表現型が発現した結果、こんな見た目でこんな言葉を発して生きている。遺伝子単位で考えると結構シンプルで、良くも悪くも全部DNAのせいにしたくなる。
淡々と進んでいくように見えるが、(反復)ゲーム理論に基づくと寛容性のある者が生き残るということも示唆されており、人間味(?)も感じられる。
人間の脳が生み出す、新たな自己複製子もある。ミームは模倣から生まれ、人々の脳から脳へ広がっていく。考えを共有することは文化を生み出す。それが人間の団結力の元であり、対立の原因にもなり得る。
翻訳書特有の分かりづらい文章もありかなりのボリュームだが、この知識量を限られた人だけで独占するのは勿体無いので、色んな人に読んで欲しい。 -
難しい。
こちらの基礎知識がないから難しいのか、訳文がわかりにくいのか。 -
今となってはだが、それでも衝撃的な一冊だったんだろうな。訳者が日高敏隆先生。大著だが読みやすい。
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科学道100冊 2019
【所在】3F開架
【請求記号】467||DA
【OPACへのリンク】
https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/book/36413