タロット大全: 歴史から図像まで

著者 :
  • 紀伊國屋書店
3.56
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本棚登録 : 120
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314009645

感想・レビュー・書評

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  • 日本で『タロット』と聞くと、オカルトやスピリチュアル、未来予言の様な、興味の無い人から見たら近寄り難い物に思われるかもしれませんが、本来のタロットとは…!?というタロットカードの成り立ち、歴史、哲学、宗教、寓意、絵の芸術性など、そちらが重要視され、オカルト&スピリチュアルなどは殆どありません。日本人のタロットのイメージが変わる一冊です。

  • 時の流れとともに変わり続けてきたタロット。多種多様な絵柄の中には、その時代の空気や人々の世界観が封じ込められている。そのすべてを解き放つ、タロット研究書の決定版。 占い・オカルト的イメージ・図像解釈などから、歴史的、社会学的に読み解いていく。  資料的価値の高い本。情報量がすごい。

  • かなりのボリュームでしたっ。582ページ!!本の厚さ4cm、重さ990g、一般的な英和辞典なんかより大きいです。持つのが重いのが難点ですが・・・なんといっても「大全」。読みごたえのある本です!

    占い方のマニュアルではなくて、
    「タロットとは何なのか」
    「タロット占いの歴史」
    「タロット・カードの歴史」
    「図像の解釈」といったマニアックな内容になってます。

    帯にある「フリーメーソン、薔薇十字団、ニューエイジ、ユング心理学」こういうキーワードにぴくっと反応しちゃう人に向いた本ですね。

    オカルト~隠されたもの、秘密、秘法、明らかにされないことほど知りたくなるのは、私だけではないと思いますが、その辺の流れが分かりやすく、興味深く読めました。

    カラーセラピーで勉強する内容(メスメル、神智学などなど・・・)もあり、違う角度から書かれたものを読めたのも良かったです。

    何より、ニューエイジ・ムーブメントによって生まれたタロットの新たな使い方は、カラーセラピーと共通するところが大アリ!で、ほっほぅ~~と思いましたね。

    あと、カードの絵がいっぱい載ってるのがいいですね。特にカラーのものは、見るのが楽しい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「帯にある「フリーメーソン、薔薇十字団、ニューエイジ、ユング心理学」」
      反応しちゃいました。図書館でチェックします!
      「帯にある「フリーメーソン、薔薇十字団、ニューエイジ、ユング心理学」」
      反応しちゃいました。図書館でチェックします!
      2013/07/30
    • newrose33さん
      私にはおもしろかったですよ。好みに合えばいいですね。
      私にはおもしろかったですよ。好みに合えばいいですね。
      2013/07/31
  •  本書は神秘的で古代からの叡智の象徴であるタロットとその占術についての解説…などではない。オカルティックな要素をほぼ排除した「タロット」そのものについての歴史の解説書である。大著ではあるものの、決して難しい内容ではなく、タロットが占いの手段としてどのような歴史を歩んできたかを辿り、そして中世から近世ヨーロッパに於ける図象的解釈及び比較を行いながらタロットのデザインについてその起源を明かす。占いなどのオカルティックな要素が如何にして後世によって「創作」されていったのかを知る上で、等身大のタロットカードを知ることが出来る啓蒙の書と言って良い。
     「タロットについて学びたい」と相談したらこの書を薦めて下さったのが、実は半ばプロとしても活動されているタロット占者の方だった。曰く「とても客観的な考察がされているので、タロットに対する偏見や迷信から自由になれるのです」。

  • タロットの成立から現代までの歴史や図像学的な意味について、現実としてどうだったのかを書いた本。分厚いので読み始めるの躊躇してたけど文章も読みやすかったし、筆者の視点もオカルト的じゃないので馴染めました。占いの参考でなく、歴史を知るには良い本だと思います。

  • タロットやカバラ占術等の翻訳・監修本を多数出版され、また講師としても有名な伊泉龍一氏による初の書下ろし本。
    「はじめに」で著者いわく、もともと占いに興味はなかったが、SFの魅力にハマり、そこで展開されている「偶然には意味がある」との世界観に強い関心を引き付けられ、そこから占いやオカルトの世界への関心に向かったとのこと。
    本書は、占いの実践書ではなく、カルトの世界やマニアックな好事家向けの1冊といえる。

    まずは、タロット起源説の神話の暴露。スピ界隈では、以下のようなタロット・エジプト起源説が定石である。いわく、タロットの起源は古代エジプトのトート神であり、その叡智を記した幻のエメラルド・タブレットを22枚の絵に寓意化したもので、それがジプシーによりヨーロッパへ伝わり、中世から人々に広まっていったというもの。このエジプト起源説が、実は全くのはったりであり、タロットに神秘性を持たせ人々に信じさせるためのオカルティストたちによる戦略だったとか。かの有名なオカルティストの一人であるエテイヤも、本名アリエッテをひっくり返したペンネームに過ぎず、自分で起こした出版事業で当てたタロットデッキ販売にあたって、そうした神話をまことしやかに流布したとの逸話は、実に面白い。
    また、ルノルマン・カードで有名な占い女史ル・ノルマンは、現代風に言えば細木数子氏のような感じの存在だった。彼女は、ナポレオンの前妻ジョセフィーヌと懇意であり、その悲劇の運命を言い当てたとか、ナポレオンの運命を言い当てたとか、フランス革命の様々な事件を言い当てたなどのエピソードを数多くの自伝でつづっていることで有名である。自伝というからには、他者による検証もないわけで、要は、自己アピールに過ぎない。未婚の、立場の弱い中産階級の女性が身を立てるほとんど唯一の術がセックスワーカーでなければ占い師という近世ヨーロッパでのこと、仕方のないこととはいえ、自分を売り込むのになりふり構わずだったようだ。それが功を奏してか、人気を博し、当時でもかなりの上級階級相手に繁盛し、成功したようだ。彼女の自薦的自叙伝を本当だと思い込み、ルノルマン・カードを愛用する現代のカードリーディング占術師もかなりの数に上ることからすれば、現代へも及ぶ彼女の影響力は相当なものだといえよう。

    さて、タロットといえばご存じライダー版が最も有名だが、その制作秘話も本書には載せられている。
    黄金の夜明け団の元メンバーだったアーサー・E・ウエイト氏は、自身が知り得た教団内の秘儀を巧妙に隠したタロット作成を企図し、その絵柄を同じく団員だがまだ下っ端階級に過ぎなかったパメラ・スミス・コールマン女史に依頼。彼女は、5か月という短期間で、現代にも及ぶあの超有名なタロット78枚を書き上げたという。現代にまで至るタロット哲学の大本は、概ねこのパメラ女史の絵にさかのぼるとされているのだから、とんでもない影響力である。なのに、彼女は終生、借金まみれの挿絵画家として生涯を閉じたというのだから、皮肉なものである。このタロット制作の報酬も、かなり低かったそうだ。現代にまで至る著作権料や印税を考えれば、信じられないことだし、許しがたくも思う。が現実問題、生涯独身だった彼女は、本当に貧しい中で一人寂しく亡くなったわけだ。ウエイトもずいぶんケチだな、と当然批判されてしかるべきだろうが、当初、彼自身も自分が企画したタロットデッキが売れるかどうか、そもそも通用するかどうか相当危ぶんでいたそうで、そのため、初期投資としては低く抑えておきたい、という動機が働いていたのだそう。だとしても、ケチだろ、お前、とツッコミ入れたくなる。
    このウエイト版タロットが画期的だったのは、それまでトランプのエースから10までのように単なる幾何学的模様に過ぎなかった小アルカナのヌーメラス・カードの一枚一枚に物語性を彷彿とさせる絵を配したことだ。大アルカナのタロットも部分的に従来からの伝統を大胆に変えており、例えば従来は11番目に配置されていた「力」のカードを8番目に配置しなおし、代わりに「正義」のカードを11番目にあてがっている、など。ウエイトはこれらを「黄金の暁団」の思想であったカバラとタロットの融合から導き出しており、パメラにもそのように指示を出して絵を描かせていた。もっとも、小アルカナに至っては、ほんのキーワード的な指示しか与えず、具体的な絵柄はすべてパメラの好きなように描かせていた模様。ウエイト自身、小アルカナにほとんど関心を持っていなかったために、そうなったようだが、おかげで、小アルカナの一枚一枚が実に活き活きと物語性を帯びて描かれており、現代にまでその影響力を解き放っている。ウエイトの無関心さにも感謝すべきか。

    本書は他にも、20世紀最大のオカルティストであるアレイスター・クロウリーの逸話や、その他のオカルティストたちのエピソードにもこと欠かない。

    無論、タロットの背景やオカルティックな話ばかりではない。章を変えてその図像の意味を、当時のヨーロッパの図像の哲学的背景から解き明かしてくれている。
    占いに興味はないが、オカルトの背景やマニアックな知識には惹かれる御仁にとっては、垂涎の一冊といえよう。

  • 借りたもの。
    タロットを神秘的な魔術道具としてではなく、図像学の視点からひも解く専門的な本。
    絵札として興味深い、大アルカナ22枚を絵解きする、充実した内容。井上教子『タロットの歴史―西洋文化史から図像を読み解く』( http://booklog.jp/edit/1/4314009640 )よりも、文献の量、世界各国に普及したタロット(占い札)のルーツの検証の視点は奥深く、徹底している。
    中国からイスラームの占い札も検証対象とする幅広さ。そこから導き出される可能性は信ぴょう性が高く思える。
    著者自身も占い師であるため、占いを行う側、教える側として身近なエピソードを交えつつ、イマジネーションを刺激し、時代毎に様々な解釈が成され、変容するタロットの魅力をより強く感じる。

    タロットは“遊び”である。
    その遊びとは、ふざけた意味ではなく、あらゆる自由さ(占いの仕方、解釈、その時の気分)を表している。

  • タロットカードの歴史や図像学に的を絞った本。
    タロットのみならず、オカルトの全体史としても興味深い内容となっている。
    タロット占いの「やり方」を示した本ではなく、タロットカードの歴史、特に「誰がどのように広めていったのか」「そしてどのように移り変わっていったのか」といった経緯に的を絞っている。
    ボリュームもあるので気軽に読めるとは言い難いが、文章そのものは難解なものではない。

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著者プロフィール

[翻訳]伊泉 龍一(いずみ・りゅういち)翻訳家。翻訳・監修:ピーター・ビーバガル著『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか』、ジェイソン・ヘラー著『ストレンジ・スターズ デヴィッド・ボウイ、ポップ・ミュージック、そしてSFが激発した十年』(ともに駒草出版)、ジョン・マイケル・グリア著『生命の木 ゴールデン・ドーンの伝統のカバラ』(フォーテュナ)。アレハンドロ・ホドロフスキー、マリアンヌ・コスタ著『タロットの宇宙』(国書刊行会)他多数。著書:『タロット大全 歴史から図像まで』(紀伊國屋書店)など。

「2023年 『アンコモン・ピープル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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