チェリーシュリンプ わたしは、わたし

  • 金の星社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784323074665

感想・レビュー・書評

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  • 父をなくしてから母と二人で暮らすキム・ダヒョンは、アラム、ビョンヒ、ミソ、ソラと仲良し5人組だったが、中学2年になったクラス替え後の最初の席が、みんなの嫌っているノ・ウンユの隣だったことに落胆していた。ノ・ウンユは、5人組の嫌われ者だったのだ。5年生のときにいじめと仲間はずれに遭って友人が居なかった彼女は、誘ってもらって加わったこの5人組をとても大事にしていた。使い走りにされたり、自分の意見には耳を傾けてもらえなかたり、報われないことも多かったが、そのことは気にしないようにしていた。ダヒョンには、自分の内心を綴ったブログ「チェリーシュリンプ」は非公開で、自分だけの秘密だった。
    学校の課題でグループでコミュニティ新聞を作ることになったが、そのメンバーにはウンユがいた。ウンユの家で課題の相談をすることになってしまったが、ウンユと親しくすることは、5人組の暗黙のルールに反する。5人組に相談してサボることにしたダヒョンだが、結局メンバーたちと会ってしまいウンユの家に行くことになってしまう。彼女に嫌われる要素を見つけられないダヒョンは、最初にウンユを嫌い始めたアラムとの過去が気になったが、ウンユを知るに伴って、5人組での自分の立場が危うくなっていく。

    友人関係に翻弄される少女が、他人との関係における自分ではなく、自分との関係における自分に気づき、真の友情を得ていく物語。







    ******* ここからはネタバレ

    タイトルの「チェリーシュリンプ」と表紙に書かれているハングル文字から、「Cherry」という名前のアルバムタイトル曲を持っていて、略称「エビ」と呼ばれているK-popグループ「AB6IX」を思い浮かべてしまいました。
    いえいえ、全く関係ないお話です。


    これは、なんともこねくりした女の子の人間関係を描いた物語です。
    でもこのお話の舞台は日本ではなく、お隣の国、韓国なのです。

    韓国が舞台の児童文学って、今まで歴史ものか、時代物しか読んだことがなかったので、現代の学園ものということでとっても期待して読み始めました。
    今の韓国の若者のようすがわかると思ったんです。

    いやぁ、びっくりしました。
    日本の学園ものには多いんですけど、この、女子の人間関係の大変さ!!
    私もいちおう中学、高校、短大は女子校だったのでわかる世界ではありますが、とってもしんどい世界ですよね。自分が安心してグループにいるために、その外に柵をしないといけないんです。自分を脅かすものが入ってこないように、自分がグループから取り残されないように。

    この作品は、グループには入れたけれども、それを維持するために涙ぐましい努力をする少女が主人公です。みんなに気を遣った発言をしたり、貢物(プレゼント)をしたり、使い走りをしたり……。
    そんな努力をしながらも、段々と孤立していき、それを、嫌われているのに自然体でいるウンユや気軽に話しかけてくれる課題グループのシフやヘガンという存在に救われていくのです。

    閉鎖的なグループにしがみついているときから、この展開は見えていましたけど、けっこう若者読者の心に留めておいてほしい表現も出てきました。
    友だちとは自立した木で、お互いに助け合う存在。
    友だちとは対等な関係であるべき。
    自分を見くびっていたら、他人からも尊重してもらえない。
    「だめならしょうがない」精神。
    「なんか文句ある?」精神。
    友だちなんて、疎遠になったり、思いもしない時期にまた会ったりするもの。

    まあ正直、ブログを公開したらダヒョンは強くなって、いろんなことがうまくいくようになったっていうのはうまく行きすぎだと思います。
    それに、内心を綴ったブログは、知っている人がそれを読んで不快に思うこともあると思うので、公開はより慎重にすべきです。まだ5人組は知らないけれど、今後は、炎上や嫌がらせに波及する可能性もあるかも知れない。女の子だとわかる内容、中学生だと知られるような内容、地域がわかるような内容なら、他にも危険がありますよね。
    これに対する注意をあとがきででも書き添えていてほしかったと、同い年の娘を持つブロガーの筆者は思ってしまいます。


    お隣の国ながら、あらぁ、こんな事があったのね、とお国事情も垣間見ることができました。
    これは知っていたことですが、韓国の新学期は3月から。だから、新学期が始まってから、ホワイトデーがあるんですよね。
    そして、高校に入ってからの受験勉強は本当にたいへん。下の階にいる高校3年生のために、夜は洗濯機を回せないぐらい周囲が気を遣わないといけないんです。
    韓国の中学生はけっこう外でおやつを食べるし、夜に外出するんですね。共働きが多いからでしょうか?
    学校にスマホ持参OKなんですね。デジタル教育に力を入れているから、禁止よりも使い方を知ってもらうって方針なのかも知れないですね。
    学校を休んだら病院の確認書を提出しないといけない。うわお、これならずる休みできないし、ちょっと寝ていたら良くなるっていうのも認めてもらえないですねー。
    中学生もメイクをして登校するんですね!?小学生もしていくことあるようですね。びっくりーしました。

    そう、ティントってわかります?メイク用品のところに書かれていたから想像はついたかも知れませんが、「にじんで」色がつく口紅のことを言います。この単語だけ解説がなかったから、韓国コスメに馴染みのない人にはわかりにくいんじゃないかと思いました。

    5人組のメンバー、アラムの家庭事情を、ダヒョンではなくてダヒョンの母親が知っていて、今まで黙っていたものを急に暴露してしまったり、課題グループの仲間がなぜかみんないいやつだったりと、不自然な点は見受けられました。

    悪い話ではないのですが、ちょっと世界が狭すぎる印象を受けました。まぁ、それが中学生ってものかも知れないですけど。
    すっごく女子の人間関係なので、もしかしたら、男の子には理解しにくいのかも知れないとも思いました。

    オススメするとしたら、小学校高学年からだと思います。

  • 韓国の中学生の物語。
    よその国のお話とは思えない、学校の授業も子どもたちの人間関係も。
    ちょっと違うのは、学校帰りに寄り道できるところかな。
    屋台のトッポッキやカップ飯など、いや~あったら絶対に寄りたくなるな…。

    クラス替えが心配なダヒョン。
    一番の仲良しとは同じクラスになれなかったが、同じグループの2人とはいっしょになれた。
    正義感が強く、ついつい正論を言ってしまうダヒョンは、空気を読もうと口をついて出そうな言葉を必死で飲み込む。
    友だちに気を遣う、何となく息苦しい毎日。
    そんな時グループ学習で新聞を作ることになり、思ってもみないメンバーと組むことになる。
    最初はいやいやだったのに、だんだん仲良しグループの友だちといるよりも楽しい気持ちになっていることに気づくダヒョン…。

    なんだか自分の中学時代を思い出した。
    時代や国が違っても、思春期の子供が持つ悩みはおなじだな。
    今いる場所にしがみつかなくていいんだよ。

    2021.3.11

  • 韓国のティーンズ向け小説ははじめて読んだ。
    中学校2年生のこの閉塞感!仲間はずれをおそれる自意識の肥大をありありと思い出す。ところ変われど、と言うが、欧米の翻訳小説にはあまり感じない親近感があった。

    ダヒョンたちが取り組む新聞づくりで度々出てくる「コミュニティ」という用語が曖昧で気になった。コミュニティ食堂というのは、いわゆる子ども食堂的なものかな?とか。ここはちょっと解説がほしかった部分。
    中学生たちが買い食いするB級グルメは珍しくて、一行注釈が嬉しい。過食気味な描写もあるのだけれど、健全な食欲が眩しくもあって、ここは楽しかった。

  • 仲間の結束を高めるために仮想敵が出来てしまって、そのルールに苦められたとき、どうやって、その居心地の悪さから抜け出すのか。わたしはわたし。自分で判断するしかない。クラスメイト一人ひとりに家族の事情があって、学校でうまく振る舞えない時期があることに気付き思いやることは簡単ではないと思いますが、大人の助言で良い方向に向かうこともあるんだなと思いました。

  • もう、そんな友達と5人組なんて、つるまなくてもいいよ。ジラジラしながら読んでいた。最終的に自分らしい形での友達とのつきあい方を見つけ、その人なりの事情も想像できるようになった主人公。
    1冊の中で成長していく姿は読み手も嬉しくなる。

  • 2021年 6冊目

    図書館で新刊として展示されていたので借りてみました。

    韓国の中学生の思春期的な友達関係とか恋愛や進路やらの日常を描いている物語でした。
    オヤツにトッポギを食べたり、友達とインスタントラーメン屋で放課後お喋りをしたり、ちょいちょい韓国の日常が垣間見れるのは面白かった。

    翻訳本はその国の文化に触れられるから面白い。子供の頃、欧米の翻訳の童話を読んでは初めて名前を聞く食べ物を想像した事を思い出した。

    外国のお話には『パンケーキ』が良く出てきて、クリームやバターがたっぷりかかっててすごく美味しそうだと思っていたのに、実は家でよく食べてるホットケーキと同じだと知った時になんかすごく残念だった事を覚えてます。

    翻訳本にはそんな楽しみもあります。

  • 初めての韓国YA。
    英米のものを読むよりも、この中学生という時期の人間関係の難しさやじめっとした感じに親近感があった。こういう子いたわ〜率が上がるというか。
    しかしどちらも、今まさに学生だよって子たちにもっと読んでほしいな〜!!

    私は「私はどうしてこう人間関係を築くのが下手なんだろう…」と落ち込みながらも、ひとりならひとりでいるか!と思っていたタイプなので、ウンユが一番近いタイプかな。
    グループよりは、ひとりの大好きな友達を失いたくなくて気を使いすぎたことはあるなあと懐かしく思い出した。

    自分を嫌いな人に時間を割かない、というのは大事だけど大人になっても難しいことではあると思う。
    でもだれと仲良くなるかは自分で選べることだから、ダヒョンが最後に吹っ切れてよかったな。

    周りを巻き込んで嫌な思いにする子、アラムみたいに理由があったり、そもそもそれを楽しんでいたりもするのでわざわざご機嫌を取ってあげる必要はないけれど、それを理由に仲間外れにしたりいじめたりするのも同じ穴の狢なので…
    距離を置きつつ、困っているのを助けようとしたダヒョンはとてもえらい。なかなか難しいことだと思う。

  • 新しい学年が始まる。
    ダヒョンは仲良し5人組の中の2人と同じクラスになるが、席はグループで嫌っている女の子の隣になってしまった。
    勉強の班分けでもその子と同じになり、グループの皆の顔色を見ながら交流を深めていくが…。

    〇思春期の大変さと楽しさが詰まっていた。国が変われど…ですね。韓国の学生の日常も覗けて面白かった。美味しいものに溢れている。ダヒョンのお母さんの煮干しだしうどんが食べたくてしょうが無い。
    〇ガチの受験とかはすごい大変そう。韓国の中の江南って、何か特別?日本にとっての東京とまた違うっぽい。
    〇いわゆる道を違えてしまった友人とも、訣別だけで終わらせないのが良かった。

  •  韓国文化が大流行の今、みなさんと同年代の韓国の少女たちが、どんな学校生活を送っているか気になりませんか?
    中学2年生のダヒョンは、仲良し5人組の輪から外れないように小さな言動にも気をつかう毎日。そんな時、課題提出のために組まれたグループ内で、クラスメイトの自由な発言に触れ、ダヒョンは不思議な解放感を味わいます。
     韓国のB級グルメもたくさん登場しますよ。

  • 女の子あるあるのお話。
    無理してグループに合わせてしまう気持ちはよくわかる。
    けれども、使いっぱしりのように扱われたり、そこまでしてグループでいたい? と思った。
    友人だと思っていても、陰で悪口を言われていたり、辛いなと思った。
    主人公が最後には前向きに生きていけてよかった。

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