昭和の鉄道 - 近代鉄道の基盤づくり (交通新聞社新書027)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784330208114

感想・レビュー・書評

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  • この巻では、明治初期の日本鉄道黎明期から昭和40年以降の転換期までの鉄道変動史です。

  • 平成も31年4月で終了することが決まり、昭和は愈々遠くなりさうな感じです。そんな昭和の鉄道史を振り返つてみませう。
    著者はJR海の初代社長にして、現在は同社の相談役の須田寛氏であります。この方は物凄い人なんですが、まあここでは経歴は省略。今年で86歳とのことですが、先日もTVに出演してゐるのを拝見し、まだまだお元気であることが分かり愉快になりました。

    『昭和の鉄道』は、文字通り昭和時代の日本鉄道史を概観する一冊。国鉄が解体されてJRグループが発足したのが昭和62年なので、まあ昭和の鉄道史はずばり国鉄(官鉄)の歴史とも申せませう。
    更に本書では「前史」として、明治期と大正期の鉄道史に、それぞれ一章を設けてゐますので、そのまま「日本鉄道史」の体裁を整へてゐます。

    章割は「昭和の鉄道Ⅰ」~「昭和の鉄道Ⅴ」に分けられ、それぞれの章で「国鉄旅客運輸の動向」「貨物運輸の動向」「民鉄の動向」について触れます。
    この種の本は、どうしても国鉄の旅客事情に偏りがちですが、さういふことのないやうにとの、著者の律儀な面が出てゐます。まるで学術論文みたい。

    国鉄~JRにかけて常にその中枢で活躍してきた著者だけに、「鉄道と乗客(大衆)」の距離感について敏感な記述が目立ちます。両者の距離が極めて近かつた戦前の黄金期、次第に乖離が見られる戦中輸送事情、車両不足が殺人的混雑に拍車をかけた戦後直後の、サービス以前の時代、そして復興とともに再び近くなる距離感、しかし国鉄末期の度重なる値上げやストによる「国鉄離れ」......単なるテツが書いた本とは違ふな、と思はせるところです。

    逆に、身内だからといふ訳ではありますまいが、事故・事件や不祥事についてはあまり触れられてゐません。特に下山事件をはじめとする国鉄三大事件などは、どこにも記述がありません。せめて年表くらゐには載せればいいのに。
    しかし全体としては、その長い歴史をまことにコムパクトに纏めた好著ではないかと思ひます。こんな感じで、『平成の鉄道』も執筆して頂きたい喃。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-732.html

  • 昭和を中心とする時代(=国鉄があった時代)までの鉄道会社のサービスを時代ごとに分析した一冊。

    本の冒頭でも書いているとおり、鉄道の技術史的な本は多いのですが、サービス・経営の変遷はあまり取り上げられない。それをまとめた本としては貴重。

    主に国鉄の経営を営業面から取り上げている本なのですが、「対策が後手後手に回りやすい組織」の例としても興味深かった。特に、「戦後は運賃決定が法律(=決定者が議員)だが独立採算」という状態で、さまざまな対策が後回しになり、それがスト権ストなどの形で噴出した」という流れは、ある意味いまの多くの企業の現状でもあり、興味深かった。
    ただ、状況変化に合わせた経営判断を適当なタイミングでできる経営者がいるか否かが、成功した私鉄との違いでもあったんだろうな、と。

    大正期に整備された幹線・準幹線以外が、平成のこの世では微妙に要らない子扱いなのを見つつ、「100年を見抜くことって難しいな」と。「成功であれ失敗であれ鉄路は残る」鉄道の興味深さを再確認した一冊でした。

  • 全体を俯瞰しサラっと読む鉄道史としてはよい。

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著者プロフィール

JR東海顧問

「2022年 『「京都観光」を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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