箱根の山に挑んだ鉄路 - 『天下の険』を越えた技 (交通新聞社新書032)

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  • 交通新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784330231112

作品紹介・あらすじ

日本を代表する大温泉地であり、また、明治以降早くから高級別荘地として開け、首都・東京の奥座敷として発展してきた「箱根」。その麓に位置する箱根湯本と山間の強羅間8・9kmを結ぶ標高差445mの鉄道が箱根登山鉄道だ。本書は、その誕生の経緯、そして粘着方式の鉄道では日本第1位、世界でも第2位の急勾配を克服した技術に焦点を当てながら、箱根の知られざる一面に迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  鉄道には二種類ある。
     山を越えるか、山を登るかだ。
    (その二種類ザックリ過ぎる...)

     日本で唯一山を登る鉄道は、箱根登山鉄道だ。
     箱根湯本、強羅間8.9kmで標高445mを登る。
     この急こう配の鉄道路線はいかにして計画されたのか。

     明治の日本、東海道に列車を通すのに箱根が難所となった。
     箱根を酒匂川で大きく迂回する御殿場線がかつて東海道線として機能した。
     しかし、小田原まで列車が来ることがなくなってしまう。
     さらには江戸時代の宿場として栄えた箱根宿・小田原宿、湯治場として栄えた箱根七湯が廃れてしまう。
     馬車鉄道、そして初期の電化鉄道へ。

     2019年の台風19号の影響で休業中の箱根登山鉄道。
     箱根の天嶮に挑み続ける姿を見せてほしい。

  • この書籍では、天下の剣ともいわれている「箱根」を攻略している「鉄道」について書かれています。

  • 箱根とか小涌谷とかの地名を聞いて、どんな連想をするか。芦ノ湖でせうか。温泉でせうか。いづれにせよ、観光のイメエヂぢやないでせうか。
    しかし、流通業の人なら「研修」を連想するかも知れません。朝早くから、夜まで(夕方ではなく文字通り「夜」)講義漬けで、しかも宿題が出るので、僅かな自由時間も自由にならず、就寝直前まで勉強しなければならない。とても一杯呑む気分ぢやないのです。ああ、これは個人的な体験ですね。賛同は得られぬことでせう。

    もう一つ与太話。いや出典は確かですがね。井上ひさしさんが幼時の頃、疎開先に柳家金語楼がゐたさうです。何か芸をしてほしくて、毎日金語楼の家に行くのですが、金語楼は芸を見せる代りに、馬尻の水を浴びせたさうです。
    しかし一度だけ反応してくれたことがあり、金語楼は汽車の車掌の声マネをして、箱を立てて「ハコダテー、ハコダテー」。次いで箱を寝かせて「ハコネー、ハコネー」と発声し、直ぐ家の中に戻つたとか。(『大アンケートによる日本映画ベスト150』より)

    で、漸く本題の『箱根の山に挑んだ鉄路』。昔日より東海道の難所として立ちはだかつた箱根の山。東海道線も当初は山越えを諦め、現在の御殿場線経由で東西を結んでゐました。
    しかし箱根は有名な温泉地であり、明治以降は東京の奥座敷として富裕層に注目されてきました。ここに観光用の登山鉄道を敷設しやうと考へても不思議ではありません。
    本書は、「世界第二位の登山鉄道」箱根登山鉄道と、箱根観光にその社運を賭けてきた小田急電鉄を中心に、交通の面で箱根が如何なる変遷を辿つたかを示す一冊であります。

    第一章では、現在の箱根登山鉄道(箱根湯本~強羅間)の乗車リポート。8.9キロメートルで標高差445メートルを登る、世界でも有数の登山鉄道であります。ああ、また乗りたくなつてきました。
    第二章は、箱根路の歴史を辿ります。律令国家時代まで遡り、箱根のルーツを探る。元は「筥荷(ハコニ)」などと表記されたらしく、古代朝鮮語の「パコニ(=筥または函の意)」に由来するとか。この辺は朝鮮半島からの帰化人が多かつたのですね。
    第三章では、箱根にいかにして鉄道が敷設されてきたか、或はこなかつたかを、企業間の仁義なき争ひも交へながら紹介してゐます。
    第四章は、東京からの観光客を運び続けた小田急ロマンスカーの歴史を振り返ります。首都圏の子供たちの憧れだつた(現在も?)ロマンスカーは、愛知県育ちのわたくしが想像する以上の存在感があつたのです。たぶん。
    そのロマンスカーも、NSEの頃までは高速運転を意識してゐたやうですが、線路容量の問題などから、結局スピードが出せる環境になく、その能力を持て余してゐるみたいですね。

    「箱根」について丸ごと語つた一冊と申せませう。著者も述べるやうに本書は、以前登場した『ゼロ戦から夢の超特急』と関連があります。『ゼロ戦から夢の超特急』を読んで気に入つたなら、是非この本も手に取ると良いでせう。
    デハ、ご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-615.html

  • 今年も数々のドラマを生んだ箱根駅伝がまだ記憶に新しいですが、そんな箱根に走る箱根登山鉄道について書かれた一冊です。箱根駅伝でも“坂道”は重要なポイントになってきますが、この鉄道も「山を登る鉄道」として、世界では第二位、日本では第一位の急勾配を克服した技術を誇っています。なぜこれほどまで急な場所に鉄道が必要だったのか。その誕生秘話や、「山を登る鉄道」ならではの技術、車両、運転手の技術などが書かれています。“鉄道は曲線や勾配で制限速度が決まっている”など鉄道の豆知識もわかりやすい言葉でかかれているので鉄道に詳しくない方でも楽しみながら読んでいただけると思います♪

  • こういう、地味なノンフィクションは、どんな分野のものも結構面白い。ちゃんと覚えてはいないけど、確かこれ、ものすごい雪の日に強羅駅で買ったんだったと思う。

  • 鉄の世界を垣間見たような気がする。
    「交通新聞社新書」なるレーベルの本を初めて買った。
    まず、巻末の既刊図書の広告に目が釘付けになった。
    鉄道の時計というミクロなテーマで一冊本が書けるとは!

    さて、本書では、箱根ににどうやって鉄道を通したのか、車体にはどんな技術が使われているのかが詳細に述べられていた。

    技術的な部分での解説は十分理解できているか心もとないけれど・・・
    今夏、初めて箱根を訪れ、「アプト式」なる言葉をそこで見た。
    それがどのような技術がわかって、まあ、よかったな、と思う。

    箱根の交通網、訪れてみて、便利とは思われなかったが・・・
    元箱根方面と登山鉄道沿線が鉄道で結ばれていたら、と思うことは多々あった。
    大正年間には、小田原電気鉄道の箱根横断路線構想(芦ノ湖をぐるっと回る路線や、御殿場、三島へそれぞれ抜ける路線がある!)があったという。
    小田原電鉄の本社火災、関東大震災、電車転覆事故が重なって、幻の大計画となってしまったらしいが・・・。
    本当に残念だ。

    最後の一章は、小田急ロマンスカーの車体の開発史に充てられている。
    バブル崩壊以後、観光ではなく日常の乗り物となっていく時代のニーズと、乗るときめき、見るときめきを合致させようという道程だということのようだ。
    わたしなど、ロマンスカーに憧れを抱いていたから・・・まさに小田急の広告戦略にはまっていたということだろうな。

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著者プロフィール

日本大学生産工学部機械工学科で鉄道車両を学び、卒業研究として1年間、国鉄鉄道技術研究所に通う。卒業後、毎日新聞社入社。メディア関連を担当する編集委員などを歴任し、現在は日本記者クラブ会員としてフリーランスで執筆活動中。著書に『ゼロ戦から夢の超特急』『箱根の山に挑んだ鉄路』『蒸気機関車の動態保存』『ここが凄い! 日本の鉄道』(以上、交通新聞社新書)。

「2019年 『鉄道を支える匠の技』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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