ボーイングVSエアバス 熾烈な開発競争 - 100年で旅客機はなぜこんなに進化したのか (交通新聞社新書103)
- 交通新聞社 (2016年12月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784330741161
作品紹介・あらすじ
ライト兄弟が有人動力飛行機の初飛行に成功したのは1903年12月17日。それから110年間ちょっとで旅客機は驚くほどの進化を見せており、日本国内でもYS-11以来の国産2号機MRJがデビュー間近となっている。
1章は黎明期、2章はアメリカ優位、3章は(アメリカ優位ながら)ヨーロッパが巻き返し準備、4章でヨーロッパ優位、5章で再びアメリカが巻き返し、6章は両社が切磋琢磨する、を紹介する。旅客機の進化の過程やメーカーの合従連衡から収斂へなど、「旅客機にちょっと興味がある」程度の一般読者にもわかりやすいよう、飛行機ファンである著者が時系列で話を展開していく。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
交通新聞といふ業界紙がありますが、実態は鉄道の記事ばかりで、仮に「鉄道新聞」と名乗つても何ら違和感はないのでした。従つて交通新聞社新書も大部分が鉄道関連で、たまに航空業界の本が紛れ込む、といつた状態。本書はその一冊であります。中中面白い。
ライト兄弟が初飛行をしたのが1903年。それからわづか110年余で、いかに現在の隆盛を迎へたかを俯瞰する一冊であります。科学技術は戦争によつて進歩したと申しますが、航空機の発達史に於いても同様で、特に第二次大戦で「空を制する者が勝利する」といはれ、大国が凌ぎを削りました。それに気付くのが遅れた大日本帝国は、巨大戦艦を造つて喜喜としてゐたのであります。
戦後は軍用機を転用して旅客機の開発が進められ、ダグラス、ロッキード、ボーイングなどが主力企業として伸してきました。その後ダグラスはボーイングに吸収され、ロッキードは旅客機から撤退します。
一方ヨーロッパでは英仏共同で超音速機(コンコルド)の開発に乗り出すも、結果的に失敗。しばらくの停滞期を経て、今度は英仏西独(後イギリスは離脱)で企業共同体としてのエアバス計画が立ち上がります。経済性に優れるA300(1972年初飛行)が成功、米国勢に一矢を報いました。折からのオイルショックで、燃料が高騰してゐた事も後押ししたさうです。
イギリスが再参加したエアバスは、更にFBY(フライ・バイ・ワイヤ)方式なる操縦方式を開発して、コクピットから操縦桿をなくすといふ画期的なA320(1987年初飛行)で勝負に出ます。これまた世界を席巻し、世はボーイングとエアバスの二強時代に突入するのでした......
旅客機の歴史をわたくしのやうな素人にも分かりやすく解説してくれてゐます。プロペラ機⇒ジャンボの流れとか、エンジンも4発機・3発機の時代から双発万能の時代への必然、今後のRJ機の展望などまで取りあげてゐます。しかし三菱航空機のMRJはいつたいどうなつてゐるのか。度重なる納期延期でやきもきさせ、コロナウイルスの関係で更に前途に暗雲が立ち込め、生みの苦しみを味はつてゐます。愛知県にも関係の深い飛行機なので頑張つて欲しい喃。
まあいい。本書の内容はメイニアにとつては周知の事実なのでせうが、わたくしは誠に興味深く感じました。乗り物好きにはお薦めの一冊と申せませう。 -
現在にいたる旅客の開発競争がよく理解できました。
なぜその機種が必要なのか?売れるのか?航空会社の経営方針や経済状況など様々な関係があるのですね。今後はボーイング、エアバス以外にも、ボンバルディア、エンブラエルなど小型機マーケットも気になるところです。