左手のコンチェルト: 新たな音楽のはじまり

著者 :
  • 佼成出版社
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本棚登録 : 38
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784333023202

作品紹介・あらすじ

脳溢血で半身不随の身体になってから六年、左手のピアニストとして復帰してからは三年半。これまでの軌跡を語った聞き書きの書。

感想・レビュー・書評

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  • 出版されてまもなく書店で見つけて購入して読んだ。ピアニスト舘野さんがステージで脳溢血のため倒れて右半身不随となったこと、その後の葛藤、そして再びピアノを演奏することになったこと、そうした間の事柄が、聞き書きの形で綴られている。読者は、再読の度に、読者の心の動きに応じて、異なった部分の舘野さんに注目できるように感じる。

    「はじめに」の庭のどくだみの箇所で立ち止まってしまった。実家の庭の元気な植木や植物たちを思い浮かべた。日々の暮らしの中で音楽が何の違和感もなく存在していたこと、だからこそ、両手で弾くピアノが片手になってもその意味では抵抗がなかったことも、想像できた。むしろ蓄積され身体の隅々まで響き渡る音楽が、「両手」なら可能であった演奏を「片手」では難しい・・無理?と思わせることに苛立ちを感じていたのではないかと想像する。

    葛藤の時期を過ぎ、左手で弾けること、そうした舘野さんを念頭にした新たなpieceを得て、ピアニスト舘野さんは、「また平静な心になり、音楽と向き合える喜びが一層大きくなって」日々の暮らしの中で自然にピアノに向かえたことが一読者として嬉しかった。

    舘野さんの今後は、演奏活動と同時に音楽教育に力を注ぐという。私たち読者みんなに、勇気と励ましとを投げかけてくれたように感じた。勇気ある日々に拍手を送りたい。

    • luminさん
      こんにちは。今日の朝日新聞夕刊に、舘野さんの記事があり、lapparitiondulivreさんの本棚にあった1冊を思い出しました。驚きまし...
      こんにちは。今日の朝日新聞夕刊に、舘野さんの記事があり、lapparitiondulivreさんの本棚にあった1冊を思い出しました。驚きました、そういう事情でしたのね・・・私も、読んでみます。
      2009/11/09
  • 読んでよかったと思えた本。舘野泉の魅力がいっぱい詰まっていた。

    彼のピアノ演奏については作曲家の間宮芳生による次の文章がよく語っている。「ケレン味やら、情緒主義と、舘野さんの演奏の本質とは、実はずいぶんちがう。舘野さんの演奏はいつも、なんの虚飾もなく、真っすぐに音楽と向かい合っている」「それに加えて、舘野さんのこのところの演奏から、以前聴かれなかった、訴えの激しさを聴くような気がしている。なによりそれは、音それぞれの表情濃さ、訴えかけの激しさになって現れてきた」


    脳溢血で倒れたのち、左手で演奏するようになったことでも注目されているが、その前も後も自然体で生きていることがわかり、かくありたいと思った。

    編者によってまとめられた本だが、編集後記のみで、表へ出ていない。それでいいと思える。

  • 読んでいるだけで、ピアノが聴きたくて聞きたくてたまらなくなってしまった。

  • 【最終レビュー】

    図書館貸出・ノンフィクション著書。

    先日、ヤフーニュース配信(6/15付)にて舘野さんの記事が紹介されていた内容でした。

    ※半身不随から復帰を遂げた「左手のピアニスト ~“何があっても絶望しない”生き方 ~」

    *ダ・ヴィンチニュースより

    https://ddnavi.com/news/381352/a/

    この新刊著書の内容に興味を持ち、いずれチェックを入れる予定ですが、まずは、舘野さんご自身の素性を知りたく

    手始めに図書館貸出リストからの

    この著書を。

    〈センスが深淵に極まっている〉

    まさしく、舘野さんのような方を指し示しているかのように。既読直後、率直に自分の中で感じてたことです。

    むしろ、今のこの置かれた状態をありったけに受け止め、それをいかに、心にどう持ちながら楽しむかという

    〈活き活きとしたアクティブな姿勢〉

    〈決して、目にはできない『内面の奥底から込み上げる「芯の強さ」』〉

    ひしひし感じながらも、着飾らず、自然体に優しく包み込むかのように伝わってくる

    『丁寧に言葉を選びながら、思いのままで』

    といった雰囲気。

    不思議と、爽快感すらも感じさせられました。

    +読書家の顔も、存分に持っていらっしゃること。

    〈クラシックだけではない、あらゆる芸術そのものに「自らの手で、キッカケを作り、実際、心身で触れること」の意味合い〉

    改めて、このことを切実に実感することができた著書。

    〈枠にとらわれず、自分のやりたいことが大切〉

    心強く感じながら、有り難く、自分の中で受け止めることができました。

    印象深く残った『様々なキーワードの数々』

    今の自分に重なるところもあり、タイミング的にも『一石二鳥』でした。

    ポツリポツリとネタバレに触れない範囲で挙げながら、レビューを終えます…

    *年輪・積み重ね

    *深い教養・真の知識

    *特別な領域は設けない!

    *何度も『咀嚼→弾き込む』

    *手を使うこと

    *内面を描く

    *新しい『未知の…の場』に『投げ出す』

    *想像力の羽ばたき

    *『本物・うわべ』を『見極める!』

    *ほんとうによいものを…

    *深み・幅…優しさ・光・影

    ◇追記:仮レビューで記載した

    佐渡裕さんの既読著書アーカイブ。そのまま残します。

    ―最新既読著書レビュー:佐渡裕さん著『棒を振る人生~ノンフィクション』―

    15.9既読

    http://booklog.jp/users/sapphire913/archives/1/456982059X

  •  
    ── 舘野 泉《左手のコンチェルト ~ 新たな音楽のはじまり 200803‥ 佼成出版社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4333023203
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19361110
     舘野家の人々 ~ 左手のピアニスト ~
     
    (20151207)
     

  • フィンランドへの愛着、闘病生活、左手のみでの復活演奏会に至る経緯など、本人が語る実話として迫ってくる。
    ご本人の「左手のコンチェルト」の実演を聴いたが、病気との葛藤や復活への意欲など、感動を裏付ける内容。

  •  ピアニスト舘野泉のエッセイ。
     っても、書いたものではなく、語り下ろしたもの。なので、他のエッセイよりより客観的な感じ。

     で、生い立ちについてかなりつっこんで語っている。
     両親ともに音楽家で、兄弟も皆音楽家になった家族の中で、唐突にフィンランドに渡った彼を、むしろ暖かく見てるのがやはり普通の家庭とは違うなぁと思った。
     舘野泉の力があったから、日本における北欧音楽が認められたといっても過言ではない。が、それは、舘野泉以前、北欧音楽は認められていなかったということなのだ。

     温和な笑顔を見せ、温和な語り口であるけれど、舘野泉の中には絶対的な孤独があるのだと感じる。
     だからこそ、彼は北欧にひかれ、その地に住むことを選択した。そして、左手のピアニストとしてやっていくことを、ピアノからは絶対離れなれないと、決意させたのだろう。

     私の所属している音楽教室のテキストに、やたらグリーグとかカスキとかがでてくる。って、舘野泉が監修としてたずさわっていたので当然なのだろう。で、それらの作品に触れるごとに、舘野泉の穏やかさと厳しさを聞く。

     …他のエッセイより客観的と書いたが、言い換えれば一般的ともいえる。ゆえに、舘野泉を始めて読む方や、音楽とは無縁です、という方にもしっかり読めるエッセイだと思う。

  • 時代の喧噪から離れたところにある文章が、舘野泉の奏でる音楽をよく表している。口述筆記が基になっており、読みやすい。

  • 病気のため右手が使えなくなってしまったピアニスト舘野泉のドキュメンタリー。
    家族、ファンが彼を支え、多くの作曲家が彼に左手のための曲を作る。
    高齢でありながら、ハンデを乗り越えて真摯にピアノに向き合う姿は感動的

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著者プロフィール

ピアニスト。1936年東京生まれ。
領域に捉われず、分野にこだわらず、常に新鮮な視点で演奏芸術の可能性を広げ、不動の地位を築いた。2002年に脳溢血で倒れ右半身不随となるも、しなやかにその運命を受けとめ、「左手のピアニスト」として活動を再開。尽きることのない情熱を、一層音楽の探求に傾け、独自のジャンルを切り開いた。“舘野泉の左手”のために捧げられた作品は、10ヶ国の作曲家により、100曲を超える。2023年は数え年で88歳を迎え、「米寿記念演奏会」全国ツアーを行う。もはや「左手」のことわりなど必要ない、身体を超える境地に至った「真の巨匠」の風格は、揺るぎない信念とひたむきな姿がもたらす、最大の魅力である。

「2023年 『ハイクポホヤの光と風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

舘野泉の作品

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