退歩を学べ――ロボット博士の仏教的省察 (アーユスの森新書(004))

著者 :
  • 佼成出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784333025121

作品紹介・あらすじ

「退歩」とは禅に由来する語で、禅では「進歩」が「外的な対象に着目する姿勢」を言うのに対して、「退歩」は「心を問題にする姿勢」を意味します。
著者によれば、「進歩」だけでなく「退歩」が機能してこそ真に進歩するといい、「退歩」の具体的な実践方法として、仏教に基づくものの見方を図表や写真を用いて説明します。
東日本大震災以前から「進歩」一辺倒の歪みが露呈している現代日本ですが、「退歩」によって私たち一人一人が心豊かに生きていく先に、日本全体の真の「進歩」があると語ります。本書はアーユスの森新書の4冊目で、著者渾身の書き下ろしです。

感想・レビュー・書評

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  • ★図書館だよりNo.62 「一手指南」
     飛田 和輝 先生(機械工学科)紹介図書
     コラムを読む https://www.sist.ac.jp/media/20181010-153837-1238.pdf

    【所在・貸出状況を見る】
    https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/218253

  • 今の社会に漠然とした違和感を持っている人は多いと思いますが、本書は、それを解きほぐしてくれます。社会の流れを変えるのは難しいかもしれませんが、「退歩」と言う考えを理解して賛同できれば、少しは違和感がなくなると思います。そして、そんな人が多く現れれば、少しは社会の方向性が変わるかも?と淡い期待を抱いてしまいます。筆者には失礼ですが、まさに老人の声に耳を傾ける重要性を感じました。ただどんな老人でも良いのではなく、そこが難しい所ですが...。一読の価値のある良書です。

  • この本は昨年(2016)の大掃除をしていた時に、部屋の片隅で埃にまみれていたのを発見しました。調べてみれば、読んだのは丁度一年前で、2015年末に読んだままになっておりました。

    日本が経済成長を止めてしまってから何年も経過しています、経済成長を目指してこの数十年間、多くの方が努力をしてきましたが、この有様です。やり方を変えれば(正しいやり方をすれば)正しく成長すると書かれた本は何冊も読んでいますが、この本のような「退歩を学ぶ」ことも一つの考え方なのかもしれませんね。

    内容についてはレビューを書きながら復習したく思います。以下は気になったポイントです。

    ・仏教では、「進歩」というときは自分の外側、つまり物や資産に着目した姿勢をいい、それに対して「退歩」とは、内側、すなわち心を問題にする態度を言う(p19)

    ・カンニングOKのテストにおいて、答案と一緒にカンニングペーパーを回収した。答案を採点せずに、カンニングペーパーを採点した。これにより学生は勉強し、先生は正しい評価ができた、これを「カンニングが成仏した」という(p65)

    ・無記とは、善悪という価値観念を超えた観点からの呼び名のこと、これは良い、悪いという評価がない。すなわち価値を超えたという意味の言葉であり、善悪とは違う次元(上の次元)のことを言う(p80)

    ・仏教における三毒として、貪(貪欲、足るを知らない飽くなき欲望)、しん(怒り)、痴ほ(無知)をあげている、特に、怒らない修練は大切と言える(p109)

    ・創造的なアイデアが閃くには、念→忘→解、という順序が必要。念で懸命に長期間に考えている間に、その問題が深層心理の中へ浸透していく、すると深層心理の中ではその問題意識が熟成する。その時、なんらかの刺激があると、アイデアが湧き出る(p118)

    ・ライブドアは極端な「株式分割」を繰り返して、結果的に1株が3万株に分割された。東証の71%がライブドア株になるようにし、それに株式交換(1999年の商法改正で可能)を利用した多くの会社の合併・買収をした(p132)

    ・幸せの問題とは、変化分である。今日のわれわれは、終戦直後の何百倍も金持ちになっていながら、幸福感が感じられないのは、変化が非常にゆっくりだから(p150)

    ・日本中のテレビがデジタル化できれば、新しい電波割り当てが可能になるのが、デジタル化をしなければならない最大の理由である。画像がきれいとか、双方向通信というのは、付随的なサービスでしかない(p153)

    ・今日の文明の危機は、すべてが貪欲カーブになってしまおうとしているところにある(p162)

    2017年1月1日作成

  • 最近、電車に乗っていると一列の席に座っている全員がスマホに向かい合っていたりする(電車でしょっちゅうiPhoneやiPadに触っている自分も含めて)。
    日本人に限らない、デジタル機器やそれによる情報の洪水に溺れている現代人全員が本書を読んだら、もっと生きやすい世の中になりそうな気がする。

    今年最後になりそうな一冊が、素晴らしい名著で終われて本当に良かった!

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著者プロフィール

1927年(昭和2年)、三重県に生まれる。名古屋大学工学部電気学科卒業。工学博士。東京大学教授、東京工業大学教授を経て現在、東京工業大学名誉教授、日本ロボット学会名誉会長、中央学術研究所講師を務める。ロボットコンテスト(ロボコン)の創始者であるとともに、「不気味の谷」現象の発見者であり、約五十年にわたって仏教および禅の勉強を続け、仏教書の著作も多い。紫綬褒章および勲三等旭日中綬章を受章、NHK放送文化賞、ロボット活用社会貢献賞ほかを受賞する。おもな著書に『機械部品の幕の内弁当─ロボット博士の創造への扉』(オーム社)、『今を生きていく力「六波羅蜜」』(教育評論社)、『親子のための仏教入門─我慢が楽しくなる技術』(幻冬舎新書)、『退歩を学べ─ロボット博士の仏教的省察』『仏教新論』(ともに佼成出版社)等があり、共著に『ロボット工学と仏教─AI時代の科学の限界と可能性』(佼成出版社)がある。

「2023年 『般若 仏教の智慧の核心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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