二大政党制批判論 もうひとつのデモクラシーへ (光文社新書 424)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035273

作品紹介・あらすじ

47%の得票で74%の議席獲得。民主党圧勝は民意といえるか?時代遅れになりつつある二大政党制の欠陥を指摘し、政党政治とデモクラシーを、いま改めて考える。

感想・レビュー・書評

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  • 学ぶべきところはあるが、いまいち釈然としない。
    どーすりゃいいんだ。

    二大政党制=成熟したデモクラシー+ダイナミック
    政権交代下でのみデモクラシーは成立。

  • 朝日新聞デジタルに紹介された
    「匡樹のたんぶら」の記事
    ■一票は群れてこそ活きる 北海道大学准教授・吉田徹さん
    http://kyo-ju.tumblr.com/post/56768806995
    から この著書に辿りつきました。

  • 本書は、日本の90年代における政治改革が目指した「二大政党制」を批判し、新たなデモクラシー観を提示した政治批評です。
    2009年政権交代の直後に書かれたものではありますが、総選挙を終えた現在の政治状況を考察する上でも、何かしら新たな視点を提供してくれる内容になっています。

    本書は、大まかに分けて2つの論点を提示しています。

    第1に、筆者が「政治工学」と呼ぶ、人為的に政治改革を行うことで政治を「良くする」ことを試みる潮流が、日本政治においてどのように展開されてきたのか、そしてそれをどのように評価すべきかといった論点が提示されています。
    本書では主に、「民間政治臨調」などの超党派の枠組みがリードしてきた90年代における政治改革の取り組みが詳細に後づけられ、選挙制度を変革することで「クリーンな政治」や「二大政党制」を実現しようと試みたことに対しての批判が展開されていきます。特に、日本とは出自の異なるイギリス型の二大政党制が直接輸入され、選挙制度の実証分析や政党の意義に関わる歴史的分析が成されぬまま改革が断行されたことなどに批判が向けられています。

    第2に、現代における「政党」の存在意義とは何かが再考されていきます。
    直接民主主義に対する期待が高まる昨今、それらはあくまで間接民主主義の補完的な位置づけにあり、利益集約機能を担える唯一の現実的な組織としての「政党」を廃棄するべきではないと筆者は主張します。そして最終的には、本来の政党が担ってきたような部分社会と政治を繋ぐ役割が、政治参加による「協動」の喜びをもたらすものとして、政治不信の解消に寄与するものであると結論付けられていきます。

    これら2つの論点は、「日本の政治に欠けているのは、『強いリーダーシップ』や『政策本位の政治』などではなく、『政治は自分たちのためにあるもの』という感覚なのではないか」とする筆者の問題意識によって貫かれたものとして解釈できるように思います。

    以上が大まかな内容になりますが、取り上げなかった論点も含めて、本書は昨今の日本政治を評価する際に有用な視点を複数提供してくれます。
    分かりやすく書かれているので、今回の総選挙で政党政治に興味を持った人などにもお勧めできる一冊です。

  • 民主主義を実現するにはどうすればいいんだろ?

  • 理想論と言われる 二大政党制は本当に理想であるのか、いろいろな点から考察している。日本という国では、理念ではなく、結びつきが重要視されれるので、これが本当に良い制度かわからなくなった。

  • [ 内容 ]
    47%の得票で74%の議席獲得。
    民主党圧勝は民意といえるか?
    時代遅れになりつつある二大政党制の欠陥を指摘し、政党政治とデモクラシーを、いま改めて考える。

    [ 目次 ]
    第1章 政党はどのような存在なのか(「部分」としての政党 歴史の中の政党 ほか)
    第2章 政治改革論と「政治工学」の始まり(有識者会議の提言 「小選挙区」か「併用制」か ほか)
    第3章 二大政党制の誤謬(「デュヴェルジェの法則」と二大政党制 「単峰型社会」での政党政治 ほか)
    第4章 歴史の中の政党政治―なぜ社会に根付かないのか(3つの革命と政党 社会ネットワークの中の政党 ほか)
    第5章 もうひとつのデモクラシーへ(忘れられた「憲政=コンスティチューション」の政治 「闘技デモクラシー」の可能性 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  前回読み終えた「世論の曲解」に続き、政党や選挙に絡む本として読みました。

     以前、メディアで、二大政党制についての言及があり、時代は二大政党制というような感がありましたが、私は、正直二大政党制については疑問がありました。その疑問について、疑問が晴れるというよりも、やっぱりそうだ。二大政党制がいいのではないという確信に至った1冊です。

     55年体制が崩れるまでは、自民党の中で、派閥による政権交代がなされてきました。その中において、野党はその自民党政権を批判するための組織として機能するも、政権を担えるような形ではありませんでした。確かに派閥内での政権交代を行ってきたとはいえ、それでは、パラダイムチェンジ的な意味での対応は難しいのだと思います(大きな部分では同じなため)。

     どのように選挙そして政党政治を変えていくのかという政治改革論議や、諸外国の政党政治との比較の中で、二大政党制も一つのデモクラシーであること、というよりも実はかなり特殊な条件がそろわないとできないということがわかります。

     二大政党制ということは、少なくとも国民を二分するだけの断層(たとえば、大きな政府 VS 小さな政府 や、自由 VS 平等)というような形でなければなりません。

     私は、日本はそういった二分は難しい。それは日本だけでなく世界においても、生物多様性という言葉があるように、本当に多様であり、二大政党制では、正直本当にその多様さにこたえることができるのかといったら疑問です。また、この本の指摘にある通り、二大政党制だと、どちらも勝つために、一番有権者層の多い中道によることになり、あまり違いが判らなくなってしまうという可能性もあります(1対1で確実に勝つためには、ニッチではなく王道でなければならないため)。

     やはり、多様性ということから、多様な民意を反映させるということから考えると多党制がよりましだと私は思います。

     政党は、世界史レベルで確認すると、社会の断層において、その両側のそれぞれが組織化されることで形成されてきました。
      貴族 VS 資本家(中産階級)
      資本家 VS 労働者
      経済活動 VS 環境

     この断層を考えた場合、今の日本の政党がそういった意味での断層で構成されているのかというと疑問がわきます。実際に、自民党・民主党・みんなの党のキーパーソンは、自民党出身です。正直そういった意味では何が断層なのかわかりづらい。むしろ権力闘争の面で、その組織を飛び出して形成されているというほうが妥当するのではないでしょうか?この本を読むと改めて、日本の国政を中心とした政党の在り方について疑問を抱きます。
     
     私自身、今の地方政治との関係でみると、ある意味断層を見出すとしたら、中央重視型(中央統率型) VS 地方重視型(地方アメーバ型)なんだと思います。だからこそ、大阪での大阪維新の会や、名古屋の減税日本という地域政党が誕生するんだと思います。そして神奈川もやはりどの中央政党に対しても、是々非々でつきあう地域政党が求められているんだと改めて思いました。

     

  • 二大政党制のメリット・デメリットがそれなりに整理できる。日本はイギリス型も二大政党制を目印に改革を行ってきたようだが、どうもそれは的外れであるらしい。
    それには日本の民主化の流れの中で、政党が社会に根付かなかったことが問題のようだ。この辺の議論は面白かった。

    ただし、「じゃあどうすんの?」ってことで提示されている方策は、どれも最後にちょちょいと書いたような逃げの議論に終わり、残念。

  • 有権者を置き去りにする「二大政党制」の誤りを衝く【赤松正雄の読書録ブログ】

     「選挙で負けたから、共産党の傍に座ってるの?」―昨年の総選挙の結果、衆議院本会議場の議席が大きく様変わりし、私の隣の席は志位和夫共産党委員長。たまたまそうなっただけなのだが、テレビ中継を見ていた知人には、この組み合わせが妙に印象に残ったらしく、こう問いかけてきたものだ。共産党と公明党は過去から今日まで激しく戦ってきこそすれ、一致する点は殆どない。ただ一点、共通するのは二大政党制への流れを好ましく思わないところであろう。

     吉田徹『二大政党制批判論』は、比較政治学の基本に徹して本質をずばり抉った鋭い著作だが、「現代日本の政党の中では、公明党と共産党が、このような下位文化(サブカルチャー)を相対的に作っている」との記述をはじめ、すこぶる興味深い内容だ。「47%の得票で74%の議席獲得―民主党圧勝は民意といえるか」―なんとなく世界の潮流であるかのごとき錯覚を多くの人々が持っている二大政党制を、縦横無尽に切り刻む姿勢は小気味いいばかり。佐々木毅氏や山口二郎氏ら並みいる先輩政治学者らが競って作り上げてきたかに見える政治改革路線に、真っ向から異論を唱えているのも面白い。

     「二大政党化」と「二極化」の進展が社会の両端と底辺に位置する有権者たちを置き去りにする可能性を持っているとし、警鐘を鳴らす。「(新たに政権に就いた政党は)前政権との違いを出すためにも、急進的で対立的な政策を打ち出す誘惑にかられる可能性がある。しかし、それは明らかに国民を分断して求心力を高めようとする戦略であり、政策的なブレを大きくするため、政権交代がむしろ社会に大きな負荷をかけるという逆説を生む」との指摘はずばり今の民主党主導の政治に当てはまるであろう。

     最終章にある「政党の本来のあり方を、再び模索する必要があり」、そのためにはまず現在の「民意を集約する」という大義名分のもとに導入された「小選挙区制の選挙区を漸減させ、比例の割合を増やすといった、新たな制度改革が考えられよう」との主張は、全く同感である。参院選の行われる本年、与野党ともに必読の書と思われる。

  •  この本の前半(第三章まで)は二大政党制がすぐれた制度ではないことを論証しています。政治理論あるいは選挙制度理論を懇切丁寧に解説しており、政治学初心者の私にもなんなく理解できました。
     90年代から日本経済の低迷が続いていますが、それと並行して政治の低迷(混乱)も90年代から今まで続いていることを示唆しています。
     第五章では今後のデモクラシーのあり方についていくつかの理論が照会されていますが、抽象的すぎて素人には理解できなかったこと、また結論が「外国の物まねではなく、日本に即した政治制度を健闘する必要がある」という普通の内容だったことが残念。(当たり前のことをあえて主張しないといけないところが、日本の現状であることがさらに残念)。

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著者プロフィール

1975年東京生まれ。東京大学総合文化研究科(国際社会科学)博士課程修了(学術博士)。
慶應義塾大学法学部卒,日本貿易振興会(ジェトロ),日本学術振興会特別研究員等を経て,現在は北海道大学法学研究科/公共政策大学院准教授(ヨーロッパ政治史)。
主要業績:「フランス:避けがたい国家?」小川有美・岩崎正洋編『アクセス地域研究Ⅱ』日本経済評論社,2004年;「フランス政党政治の『ヨーロッパ化』」『国際関係論研究』第20号,2004年;「『選択操作的リーダーシップ』の系譜」日本比較政治学会年報『リーダーシップの比較政治学』第10号,2008年;「フランス・ミッテラン社会党政権の成立:政策革新の再配置」高橋進・安井宏樹編『政権交代と民主主義』東京大学出版会,2008年;伊藤光利編『政治的エグゼクティヴの比較研究』早稲田大学出版部,2008年など。

「2008年 『ミッテラン社会党の転換』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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