ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334038793

感想・レビュー・書評

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  • 【山本七平賞特別賞(第25回)】気鋭のジャーナリストが、エネルギー転換、ユーロ危機、ロシア・中国という2つの東方世界への接近という3つのテーマから、ドイツの危うさの正体を突き止め、根強い「ドイツ見習え論」に警鐘を鳴らす。【「TRC MARC」の商品解説】

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    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40237160

  • 夢見るドイツ。思い当たる節が多数。

  • 2015年9月刊行の本だが、テーマであるドイツリスクがプーチンのウクライナ侵攻で顕在化しているので再読。

    ドイツのロマン主義というか観念論的というか、テーゼに酔って突き進むという国民性は確かにある。著者は「夢見る政治」と呼ぶが、それはアングロ・サクソンの経験主義・現実主義の対極にある。

    現在のプーチンのウクライナ侵攻に関わる部分は、できそうにもない「原発廃止」というテーゼに突き進み、電力不足からのロシアの天然ガスへの依存。親プーチンな人物も多く、十分な制裁ができないのは多分にドイツの事情である。

    ドイツは元来、親中国であり第一大戦後にドイツの軍事顧問団が蒋介石の国民党軍を指導し、さらに大量の武器を輸出(戦間期ドイツの復興の原資は中国の武器購入も大きかった)、そのため上海事変で日本軍がかなりの損害を受けた。

    明治政府がビスマルク時代のドイツの立憲君主制が日本に近い制度と考え、帝国憲法や軍隊(陸軍)や教育(大学制度)にドイツ式を採用したためドイツに親近感を覚える日本人は過去に多かっただろうし、第二次大戦では同盟関係にあったことから戦後生まれの自分にも親ドイツの感情が子供のことからある。メッシャーシュミットやパンサー戦車のプラモデルは人気だった。

    ところが、このわずかな時期をのぞき、特に現代はドイツは基本的に親ロシア、親中国と考えた方がよい。日本人のドイツびいきはとっくに時代遅れになっている。

    本書にも書かれているがナチスドイツのホロコーストという最大級の負い目を持つドイツ人は歴史認識問題などで日本人に対し常に道徳性な優越性を見せたいと思っており、日韓、日中の問題で日本を非難することが多い。

    それ以外にもドイツ人について多くの示唆が得られる良書。

  • 「ドイツリスク」三好範英著、光文社新書、2015.09.20
    244p ¥907 C0230 (2022.01.28読了)(2020.01.24購入)
    「世界最強の女帝メルケルの謎」佐藤伸行著、を興味深く読んだので、ついでにこの本も読んでしまうことにしました。「世界最強の女帝メルケルの謎」ほどは、切れ味がよくありません。ドイツ全体を論じようとしているので、比べるのは可哀そうかもしれません。
    「福島原発事故」「日本と中国」などについてのドイツの報道とイギリスの報道を比較しての論は、興味深く読めました。ドイツの報道は客観性に欠けているというのはよくわかりました。
    ドイツは、西欧よりは、東欧に向いていると言う記述は、初めて知りました。確かに位置的には、すぐ東は、東欧であり、東ドイツは、東欧に入っていたのですから、もっともなことです。
    ドイツは、ロシアや中国とも深くかかわってきているので、EU諸国でロシアや中国に対して制裁措置を講ずるような事態のときには、難しい立場に立たされそうです。

    【目次】
    はじめに 危うい大国ドイツ―夢見る政治が引き起こす混乱
    第1章 偏向したフクシマ原発事故報道
    第2章 隘路に陥ったエネルギー転換
    第3章 ユーロがパンドラの箱をあけた
    第4章 「プーチン理解者」の登場
    第5章 中国に共鳴するドイツの歴史観
    おわりに ロマン主義思想の投げかける長い影
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「EC統合 ヨーロッパの悪夢」宮崎正弘著、光文社、1990.03.30
    「ユーロランドの経済学」浜矩子著、PHP新書、2001.01.29
    「ユーロ その衝撃とゆくえ」田中素香著、岩波新書、2002.04.19
    「欧州連合 統治の論理とゆくえ」庄司克宏著、岩波新書、2007.10.19
    「ユーロ 危機の中の統一通貨」田中素香著、岩波新書、2010.11.19
    「ユーロ危機とギリシャ反乱」田中素香著、岩波新書、2016.01.20
    「ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く」坂口裕彦著、岩波新書、2016.10.21
    「世界最強の女帝メルケルの謎」佐藤伸行著、文春新書、2016.02.20
    「物語 ドイツの歴史」阿部謹也著、中公新書、1998.05.25
    「ドイツ史10講」坂井榮八郎著、岩波新書、2003.02.20
    「ヒトラーの抬頭」山口定著、朝日文庫、1991.07.01☆関連図書(既読)
    「わが闘争(上)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20
    「わが闘争(下)」ヒトラー著・平野一郎訳、角川文庫、1973.10.20
    「白バラは散らず」インゲ・ショル著・内垣啓一訳、未来社、1964.10.30
    「荒れ野の40年」ヴァイツゼッカー著・永井清彦訳、岩波ブックレット、1986.02.20
    「ナチス裁判」野村二郎著、講談社現代新書、1993.01.20
    「ドイツ人のこころ」高橋義人著、岩波新書、1993.01.20
    「脱原発を決めたドイツの挑戦」熊谷徹著、角川SSC新書、2012.07.25
    「ぼくのドイツ文学講義」池内紀著、岩波新書、1996.01.22
    「南京の真実」ジョン・ラーベ著,平野卿子訳、講談社、1997.10.09
    (「BOOK」データベースより)amazon
    エネルギー転換、ユーロ危機、ロシア・中国への接近―気鋭のジャーナリストがドイツの危うさの正体を突き止め、根強い「ドイツ見習え論」に警鐘を鳴らす。

  • ドイツの「ロマン主義」に警鐘を鳴らし、日本の「ドイツ見習え論」への懸念を論じており、「ドイツはよい国」と盲目的に信じ込んでいる人には有益な内容。ただし、新聞記者が書いたものなので学術的ではないし、多少表面的というか時事問題が中心でドイツの精神性や本質的な部分への掘り下げが弱いという難点はある。

  • 2015年の出版から3年経って読んだために、読む前は賞味期限ギリかと思ったがそうでもなかった。あまりに挙動不審で「なにこの国?」という謎がかなりとけた一冊。

    著者はドイツの政治をひとこと「ロマン主義」(日本でいうところの「お花畑」に近いが異なる)として、ドイツ一般の対日観や、ユーロに関する欧州での立ち振る舞いなどを批判する。この批判や日本への批判が的確で読んでいて気持ちがいい。

    5章「中国に共鳴するドイツの歴史観」で知ることができる内容はそれなりにドイツに関する本を読んできた自分にとってもあまりにドイツ的でドン引きする内容。まるで「歴史はリセットボタンでゼロスタートできる」とも読めるような受け入れがたい歴史観で世界をみるとこう見える、ということなのか。

    本書後の欧州で起きた大きな事件(移民問題と英国のEU離脱)などをみると、やはりドイツの政治はこれからも「世界情勢を読みきれない」という感じしかしなくて不気味に思う。

    https://twitter.com/prigt23/status/1044549196722843649

  • 山本七平賞受賞作品です。

  • 上辺だけをなぞったルポのような気がする。読んでもあまり印象に残らない。

  • 日本人のドイツに対する印象は、概ね良いと思う。私自身もそうだった。しかし来日したメルケル首相の歴史認識についての発言には少し戸惑いを感じた。完全に中韓擁護だったからだ。

    知っているようで知らないドイツの実際を知ることが出来る一冊。おすすめ。

  • 思ったより骨太な1冊でした。本当のドイツを知らずに親近感を抱く日本人。マスコミがいかに表層的で偏っているかを、再認識させられました。ドイツの中国への傾倒、肩入れは早くもあちこちで軋轢を生んでいるようですが。

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著者プロフィール

1959年生まれ。東京大学教養学部相関社会科学分科卒。1982年読売新聞入社。バンコク、プノンペン、ベルリンの各特派員を経て編集委員。米ハーバード大日米関係プログラム修了。著書に『ドイツリスク』(光文社、山本七平賞特別賞)、『本音化するヨーロッパ』(幻冬舎)など。

「2021年 『日米の絆 元駐米大使 加藤良三回顧録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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