労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱 (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043186

感想・レビュー・書評

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  •  英国の底辺、労働者階級から見たブレグジットと労働者階級の歴史について書かれている。移民問題に置き換えられているが、最近の日本で言う「子持ち様」論争のように、攻撃対象を間違えた故での分断が進んでいる印象。漠然と欧州の政治は日本よりマシと勝手に想像していたが、低層階級の人々は根深い階級意識に苦しめられてきたのか。ブレグジットについても肌感覚での実態が知れて興味深かった。

  • h10-図書館2018.5.29 期限6/12 読了6/3 返却6/4

  • Brexitのニュースも見なくなって久しいが、まだ古新聞とも言えないだろうと思い勉強のために読んでみた。
    まず、読みやすいしわかりやすい。さすがに”地べた”から書かれてるだけあって、平易で読み下しやすい文体、説明も卑近な例えが多く交えてあったりとありがたい。

    単なるポピュリズムという文脈で片付けられるような印象が強かったが、本書で見る目が変わった。
    ファクトチェックの必要はあるだろうが、著者自らのインタビューで”おっさん”達に生の声を聞くと、より切迫した経済事情が見えてきたようで、なるほどと思えた。
    ドキュメンタリー仕立ての番組でお母さん入れ替える番組構成、どこの国でもマスメディアの印象操作はロクなもんじゃない、と思った。
    (日本とは市民の政治関心の高さが違って、こういうテーマをテレビで扱うことが普通な時点で、メディア普段から頑張ってるともいえるか)

    ”見捨てられたおっさん”層の困窮も社会の閉塞感も日本と通ずると思うが、EU離脱を問うような国民の意思表示の場面がないためか、そもそもの闘志・危機意識の欠乏か、我々の困窮状況がそこまで深刻になりきっていないのか、日本では一向に大きな政治のうねりに至らない。いつまでクソ自民党に好き放題させてるのか、まともな対抗馬となる野党もいないが。

    本書の“おっさん達”は経済的に困窮した中で、わかりやすいマイノリティとしてのアピールもできない立場。こういう立場の人が周りにたくさんいるってこと、自分も一歩違えばおんなじ立場っていうこと、常日頃から自分ごととして考えておかないと、平気で「貧しさは自己責任」などとのたまうことができてしまう。
    そういった分断の積み重ねで格差が助長されていく歴史が生々しくて、これはほんとに他山の石として変えていかないと、日本も暴動起きてからでは遅い。

    単一民族国家としてあまりにも長くあり続けたこと、また地理的に移民が来ないことからか、”共通の敵”としてレイシズムに訴えるような勢力が弱いというのも、日本と英国の違いかな。

    英国の政治史をもっと学びたい。入門のきっかけとしてベストでした。

  • 白人労働者階級の日常生活を描いた「ぼくはホワイトでイエローでちょっとブルー」が読みやすいのに奥が深い傑作だったので同じ著者の新書を読んでみました。
    周りの白人労働者階級の人々を温かい目で見守りながら彼らがBrexitに賛成票を投じた理由に迫ります。
    政治史のまとめを読んでようやく流れが理解出来ました。最高です!

  • 軽妙な語り口で進んでいく。身近でない話題が身近に感じられて読み進めやすい。

  • 「ぼくはイエローで・・・」の著者の他の作品を読む。
    イギリスの労働者階級については「差別はないが区別はある」と大昔に語られ、ブレグジットを賛成し、移民排斥の急先鋒であり、フーリーガンでイングランドが勝つとイングランド旗(ユニオンジャックじゃない)を振り回して街中で大騒ぎする(実際に目撃した)という「ステレオタイプ」の知識しかない。

    本書を読んでの驚きは
    ・21世紀の英国には階級が厳然としてあり、階級闘争があるとは・・
    ・「ゆりかごから墓場まで」の本家が社会保障切り捨てを労働党まで推進しているとは・・
    ・政府がやたら緊縮・財政均衡に腐心している(日本の財務省と全く同じスタンス)こと、たとえ社会が分断しても。

    第3部の労働史100年は、一気に読ませる。戦後英国史を労働者の切り口で読んだのは初めて。
    この本では深く触れていない英国の経済・財政の側面からの100年史を別の書籍で探して、認識を深めたい。

    この作品はわたしの欠落している認識の穴埋めをしてくれた。
    いい著作でした。

  • 歴史的な流れを追いながらBrexitを解説してあり、少しだけ理解が進んだ。

  • ブレグジットについて、様々な報道がなされていた。離脱派は外部から見ると排外主義のように報道されていたが、本当にそうなのか。英國労働者階級が離脱票を投じた理由を、そこで生活している著者が歴史的、政治的そして経験的に考察している。

    ブレグジットの背景に英国の緊縮財政政策を挙げ、ジャスティン・ゲストの著書を参照し、白人労働者階級の疎外感を考察している。

  • 「ワイルドサイドを歩け」の愉快な「おっさんども」(おばさんも含まれる)が登場すると聞いて一も二もなく手に取ったが、いつもの著者のノリとはちょっと趣を違え、英国の政治史解説にかなりのページが割かれている。確かに必要な内容なのだが、ハマータウンのノリを丸々期待していたら少し違った。
    だがさすがは著者で、そんな内容にもかかわらず破格に読みやすい。そのことと、英国の市民の政治意識の高さが印象に残った。
    国政選挙の投票率が3割とか4割とか言っている時点で、我が国はお話にならないんだとつくづく痛感した。

    2021/8/18〜8/19読了

  • ブレイディみかこさんの作品が好きで何冊か読んでます。
    そんなに読んでいませんが、他の作品に比べると歴史関係が多く、あまりイギリスの歴史に詳しくないと読み進めるのが難しかったです。
    ただ、労働者会級の方々がなぜ離脱に投票したのか(定住する移民はいいが、出稼ぎのためにきて、低賃金で働いてある程度お金を貯めたらでていくのはどうかとか)を知ることができ、ブリジットへの理解が深まった気がします。
    また、緊縮前のイギリスと現在の日本は似ているかなと思いました。日本も現在は低所得者への優遇策をしているが、今後は緊縮に進む可能性があるだろうなと思いました。政府に左右されずに自分で生きる力を身につけていきたいと思いました。

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブレイディみかこの作品

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