世間体国家・日本 その構造と呪縛 (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334045579

感想・レビュー・書評

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  • 日本人は良くも悪くも「世間体」を気にします。
    良い面は「人並み」であろうと努力する点です。
    悪い面は「同調圧力」です。

    「ムラ社会」が生み出した産物だろうと想像は
    つきますが、この本ではあらゆる面から「世間
    体」というものを考察します。

    残念なのは、学者ならではのクドクドとなって
    おり、自身が調べたり考えた内容を全て書かな
    いと気が済まない内容になっている点です。

    もうちょっとあっさりした内容で良かったので
    は?と思ってしまった一冊です。

  • 他国では社会の規範として宗教が強力な基盤となっている。翻って日本では人びとの宗教観は弱い。にも関わらず高い公共性や規律を保っているのはなぜか、そこにあるのが世間体である。
    人は「いかに生きるか」を常に求めざるを得ない、そのため宗教的なものから完全には逃れられない。しかし日本の世間体教とも言うべきものは、市場経済との関係で言えば「ふつう」の消費を強いられ、「ステイタス」を得ることに価値を置くことにつながる。自身の社会における位置付けを目に見える形で示すことで、自身の家計の財政状況や自分の能力を見栄として表しているのである。

    キリスト教をはじめとする宗教では、愛がなければ空虚で個としての確立も危うくなると考える。東洋の宗教思想は人と人との関係性を問うことに注力し、日本社会においては「和」という言葉が強調される。そして歴史的に礼節や身のこなしについては儒教の影響が強くなったため、社会や家庭においても宗教的な内面よりも儀礼や体面を重視するようになったと考えられる。しかし、内的な規範や価値観の面で空虚であると、世間体の影響が増し、個人を支配するようになる。もし「あるべき」と信じる自己像と世間体の間にギャップが生まれると、自己の価値さえも見失いかねない。

    こうした和を重んじる社会の中で「奇異に見られずにすみ、かつ他者よりも優位に立ちたい」と考える現代的世俗主義は、一歩そこから落ちこぼれると「落伍者」としての烙印を押されるのではという不安と表裏一体であり、ひたすら外面を取り繕うだけで内面は心許ないものとなる。

    上記のような「空虚な人」を生み出す素地が日本社会では強まっている傾向にあり、それが家庭や学校、企業内での諸問題を引き起こすことになる。自身の価値を低く見る自己蔑視を内包する人は他人を見下すことが常となり、他人を尊重する能力が低い。自分の心を自分で満たせないために、周囲の立場の弱い人を攻撃するという行動につながる。
    子を持つ親であれば、「勉強ができるから良い子、他の子と比べて自転車に乗るのが下手だ」といったことで一喜一憂するのも、その根幹は同じ。子どもが家庭外の社会との比較において優れているか劣っているかを価値基準として、子どもと接すること、つまり子どもが社会における規律構造やステイタスといった世間一般的に照らしてみて、立派か否かで子を判断すると、その子の行動規範が世間体重視となり、失敗への耐性が弱くなったり、自分の価値を見失いやすい人格形成につながったりする。
    学校教育においても、個々の子どもの能力を伸ばすというよりは、社会において一定水準の能力を身に付け、社会秩序を体現し、出すぎず、慎ましく、そつなく生きていけるよう、「日本人としての規律」を形成する場となっている。

    人は自分自身を受け入れている範囲でしか、他者を受け入れることができない。だからこそ、自己実現に向けて努力し、自己探求を続けていくこと、他者から見られたときにどうかではなく、「どう行きたいか」「本当に価値あることは何なのか」を考え続けることが必要である。

  • 【読みながらメモ】
    ・「世間」をきちんと分析しており、他の類書よりマトモそう。
    ・「人間と動物の差異」とか「市場主義は……」とか、本論に関係ない部分が、とても雑。第一章でこれなら先もずっとこのレベルなのだろうか。

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1149/K

  • 特に目新しい情報はなし、世間体を気にするようになった歴史的背景などが開設されているがあまり面白くなかった。キャッチーなタイトルの割に中身がない

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。北海学園大学経済学部教授を経て、日本大学文理学部教授。社会学理論、歴史社会学、知識社会学、日本文化論専攻。『マックス・ウェーバーにおける歴史科学の展開』(ミネルヴァ書房、2007年)(2008年度日本社会学史学会奨励賞受賞)、『マックス・ウェーバー 普遍史と歴史社会学』(梓出版社、2009年)、『方法論的個人主義の行方 自己言及社会』(勁草書房、2011年)、『和辻哲郎の社会学』(八千代出版、2016年)ほか

「2018年 『歴史にこだわる社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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